雨
わかりづらい、
ぐぢゃぐちゃ、
でも、
それが、
リアルの、
部屋を出た途端全ての音が戻ってきた。
強い風の音に激しい雨の音。
冷たい雨が少し痛いくて心地いい。
たまには濡れるのも悪くない、多分。
足音なんて聞こえない。
それなのに、わかってしまう、きっと、、
でも絶対に振り返らない。
雨音だけになると、また足音は遠ざかる。
いらないのに。こんなの。
固く握りしめていた手に押し付けられた、
真っ黒な傘。
どこも濡れることはない、知らない、
大きすぎる傘。
押し付けられたときに感じた温もりとか、
ほのかにした匂いとか、
雨のせいで濡れたまつげとか、
重いくせに止まれない足とか、
持っていた傘の本数とか、
本当に欲しかったものとか、
未来とか、
幸せとか、
そんな全ては雨音で聞こえない、
視界が悪くて見えない。
それなのに、
どんどん輪郭をはっきりとさせていく、
冷たいあめが打ち付ける痛み。
この傘はきっと、
傘立てに立てられることになるんだろう。
もう2度と、開かれることはないまま。
やめて、
思い出したくないのに、
それが目につくたびに、
いつになったら、