安心した。 〜榎本 楓〜
「橋野さんお疲れ様です」
「榎本さんお疲れ様ですってあれいつもより遅いですね」
「春流のお見舞い行ってて」
「えっ、春流ちゃんどうかした?」
「今日学校体調悪いって休んで」
「あの春流ちゃんも体調崩す時があるだね」
「そりゃありますよ。元気でしたけど」
「春流ちゃんは元気でなきゃね
良かったですね」
「安心しましたよ。さぁ、そろそろ仕事始めましょうか」
「了解でーす」
夕陽も暮れてすっかり外は紫色の空に染まった
この時間はちらほらと会社員や部活帰りの学生が主にやってくる
私は、レジ周りを綺麗に拭き
橋野さんはすごく眠そうにしてる
「橋野さん」
「何でしょうか」
「何だか眠そうですね」
「ちょっとね」
「夜更かしはダメですよ。体調崩しますし」
「お母さんみたいですね。まぁ、気を付けます」
「な、な、お母さんじゃないですっ」
「分かってますよ。そんな真に受けなくても。あっ、お客さんだいらっしゃいませ!」
恥ずかしくて少し顔が赤くなる。
部活帰りの学生が喋りながら入店
制服からして私の通う学校の学生だ
鞄のワッペンが赤色で1年生だという事が分かった。(2年が青で3年が緑)
「武田、お前のシュートエグいから全然取れへんかったし」
「当たり前、俺エースでストライカーだから!」
「自分で言うなや!武田そんで、なんかあったんか?いつもと雰囲気ちゃうかったし」
「ムカつく奴がいたから〜」
「何やねんそのザックリとした答え。でっ誰々?」
「教えねーよ。それよりお菓子〜、お菓子〜」
「うわー、その感じダルっ!」
聞こうと思わなかったけど、他にもお客さんも居なかったし耳に入ってしまった
武田って子がレジに商品を持ってくる
「お願いしまーす」
「ありがとうございます」
「350円です」
「うぁ、ミスった。300円しか入ってなかった!谷川金貸して」
「300円ってなんでやねん!ほら」
「助かるわありがとう!すみません店員さんお願いします。後、レジ袋なしで」
「はい、ありがとうございます。350円丁度お預かりします。ありがとうございました」
「ありがとうございます!」
商品を受け取るとまた2人とも喋りながら店を出ていった。
「クゥー、青春しやがって。ムカつく奴って誰だろう?」
「橋野さんそんな事言ってないでお客さん来ましたよ」
「すんません。いらっしゃいませー」
ったく
この後いつものように時間は進んでいき
あっという間に閉店時間になった
橋野さんが自動扉にロックを掛ける
私はレジ締めをしながら
来週の土曜春流の知り合いに会う事を
橋野さんが忘れてないか確認した
「橋野さん、春流の知り合い会ってもらうの来週の土曜ですからね」
「OK OK!うわー楽しみでしょうがないわー」
「楽しみなのはいいですけど、どこにします?」
「えっ?そっちで手配してくれる感じじゃないの?」
「そこは橋野さんが決めた方がいいと思います」
「そーうだな、映画館はベタか、どこがいいかな」
橋野さんは結果的に遊園地と言う事で
落ち着いた。これもベタだと思うけど。
多分、春流と私が一緒という事でそうしたんだと思うけど、私達は会ってもらったら
直ぐに退散する予定なんだけど
橋野さんなりに気を遣ったんだろう
「橋野さん」
「うーんなに?」
「侑樹くんって覚えてます?」
「えーと、いつか会った180センチ近い身長でイケメンの侑士の弟だっけ?」
「まぁ、そうです」
「その、侑樹くんがどうしたの?」
「今日会ったんですが、ちょっと気のせいかもしれないですが暗かったなって思って」
「うーん、口数少ない印象あるしそう見えただけかもね」
「だと、良いんですが」
侑樹くんの事、少し気掛かりだけど
私の考え過ぎかも知れないし
この事は胸に留めて置くことにした。
帰り道
橋野さんと2人で帰っていると
前から誰かが走ってくる姿が見えた
黒のランニングジューズに黒のウィンドブレイカー上下いかにもそれらしい格好
街灯の灯りで見えたのはあの武田って子だった。
「おっ、あの青春男子じゃんかー」
橋野さんがそう言ってる間に
武田って子が走り抜けていった
夕方見かけた時とまるで別人の様に
真剣な表情だった。
「ですね」
「あー、俺には無理だわ、夜にランニングなんて多分三日坊主で終わりだ」
「私もです」
橋野さんと武田って子の話題をしながら
家路を辿った。
お読み頂きありがとうございます♪
また、投稿するのでお読み頂けたら幸いです!




