キーホルダー〜佐伯 侑士〜
プラネタリウムを見終わって榎本さんと別れ
その後ろ姿を見えなくなるまで見送った。
後ろから抱きしめて
また、気持ちを伝えたいって思った
だけど、前に榎本さんから友達ならと言われた手前
足が動かなかった。
あー、もう、、、、はあ
帰り気持ちが落ち着かなくて
暫くホームのベンチに座っていた
すると
「はあ」
俺とは違うため息が聞こえる
その方向に視線を向けると
隣の椅子に大人の女性、しかもかなり美人
視線が不意にあってしまう
「すみません、その、ため息が聞こえたもんで」
「ご、ごめんね」
とその女性は恥ずかしそうに鞄で顔を隠す
鞄にぶら下がっていたネコを象ったキーホルダーがユラユラと揺れている
俺と一緒のだ。
「あ、あの」
「うん?」
「いや、その鞄に付いてるキーホルダーですが俺のと一緒だなって思って」
「あっ、これねプレゼントしてくれたの、歳は少し離れてるけど友達がね」
女性は嬉しそうにしてキーホルダーを手に俺に見せてくれた
自然と距離が近くなり、緊張してしまい
汗が出るのが分かった。
【電車が到着します】
次に話す言葉を遮るかのように
アナウンスが流れる
女性は、徐に立ち上がり鞄を肩に掛けると
「じゃあね」と手を振って電車の方に歩き出す
と同時にキーホルダーが鞄から落ちた
「あっ」と思ったのも束の間
扉が閉まってしまい
電車は行ってしまった
歳が離れてる友達、、、
確か桜井さんが誰かに渡すんだってもう一つ買ってたよな
聞いてみようか
俺は、キーホルダーを拾いポケットにしまった。
自宅に到着
「おかえり侑にい」
「ただいま。お父さん今日帰って来るんじゃなかったけ?」
侑樹が食事の準備をしていた
「なんか、急な仕事でまた先になるんだってさ」
単身赴任中のお父さんが帰って来るのがまた先になった
少し、寂しい気持ちもするけど
きっとお父さんも同じ気持ちだ
食卓にカツ丼が出される
「おっ、今日はカツ丼じゃん。イェーイ」
「何がイェーイだよ、早く準備っ」
「ほーい」
食事中でも榎本さんの事を考えてた。
「侑にい考え事?」
「ちょっと榎本さんの事でさー。お兄ちゃん情けなくて。」
「情けないってなにさ」
「もう一回告白するか迷って、前に友達ならって言われているしそれで動けなかったそれで」
「僕も同じ状況だったら言えたかな。侑にいと同じかも」
「一度フラれてるし。俺もうダメかもなー」
「大丈夫じゃないか、多分」
「適当だなー。あーあ、朝起きたらあの超イケメンの俳優にならないかな」
「何言ってんだこの人」
侑樹は呆れる
俺は、そんな事を言いながらも食事を済ます
後片付けは俺がやって
侑樹は部屋に戻って勉強
ホームで会ったお姉さんの事忘れない内に
桜井さんに電話してみるか
『あ、佐伯君どうしたの珍しいね』
『急にごめんね。夜なのに』
『ううん、全然』
俺は、桜井さんにお姉さんの事を話した
やはり、桜井さんの知り合いだったみたいだ
明日、学校でキーホルダーを桜井さんに渡すという事になった
『それじゃね。桜井さん』
『あのさ佐伯君、、、なんでもない』
『気になるな』
『ほんっとなんでもないの。佐伯君おやすみなさい』
『お、おやすみ』
なんだろ
スマホをテーブルに置き椅子に座ると
ふと
桜井さんが前に俺に
膝枕をしていた事を思い出す
どう考えても好きじゃない男にするようなもんじゃないよな
、、、、ってあれ?
翌日
ホームルームを終え桜井さんの教室に向かう
その足取りが少し重いというか
膝枕の件を思い出してから桜井さんの事を変に意識してしまう
あ、居た
教室に入ると桜井さんは榎本さんとキャキャと話してる
やべえ、出直すか
よし、気付かないうちに戻ろう
「佐伯くーんこっちだよ!」
桜井さんが手を振って声を掛けてきた
電話の時と雰囲気違うな
俺は、桜井さん達の元に
「おはよう」
「おはよう榎本さん」
早くキーホルダーを渡して去ろう。
「さ、桜井さん、こ、こ、れキーホルダー」
「ありがとう。これで、お姉ちゃんも安心するよ」
「良かったよ。それじゃもう行くね次移動教室だから」
「佐伯君、昨日は楽しかったよ」
くー、榎本さんと語り合いたい
にしても今日もかわいいなあ
そんな気持ちを押し殺す
「お、おれも楽しかったよ。じゃあ」
俺は教室を後にする
桜井さんの事やっぱり意識してしまって辿々しくなってしまった。
教室に戻り理科室に行く準備をする
ともかく今後桜井さんとどう接していいのか
考えていても答えは見つからないままだったが
俺は教室を後にした。
理科室に行くには1年生の教室がある廊下を抜けその奥にある
そこで
「久留美がさー、必死になって侑樹君の事アプローチしてんのに桜井ってウザー」
1年の女子生徒2人が桜井さんの事を廊下で話していたのを聞いてしまった
友達がそう言われて黙っていられなかった。
「おい」
「なによ」
「何がウザいだよ」
「あんたに関係ないよねー」
「桜井さんは俺の友達なんだけど」
「だから何?てかさ、コイツキモいよね?咲耶ー」
「キモ」
黙っていた咲耶って子が間がなく言う
言い合いになっても俺が悪いみたいになりそうだ
俺は冷静を取り繕う
「キモくて良いけど、もう俺の友達の事を悪く言わないでくれ頼む」
「どうしょうか絵里ー?」
2人共笑う
次の言葉を発する前
息を切らして誰かが走って来るのが見えた
「はあ、はあ、私の友達がすみません、、、、絵里、咲耶、謝って!」
「ちょ、久留美コイツが突っかかって来たのに何で謝らないといけない訳?」
「いいから謝って!」
「、、、ご、ごめんなさい」
「咲耶も!」
「、、、ごめんなさい」
言葉に圧倒されたのか2人とも謝り頭を下げる
「い、いいから分かったよ頭を上げて」
「本当にごめんなさい私達はこれですみませんでした。咲耶、絵里行くよ」
3人は教室に戻っていく
その様子を見ていると
咲耶って子が突然振り返り
「バーカ」と小馬鹿にした感じで
口パクで言った後
オマケに舌を出してきた
何だよコイツ。
この件で俺は見事に授業に遅れ
先生に叱られた。
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