星の雨〜榎本 楓〜
「今晩は、雨だね」
横になってる、お母さんが天気予報を見て言う
お母さんは、最近言葉が多くなって来て
二人だけの家に会話が増えた。
「あのね、お母さん」
「うん?どうしたの楓」
「一緒に寝たくて。良い?」
「構わないよ、はい」
お母さんは上布団をめくると手招きして呼ぶ
私は、布団の中に入るとお母さんに擦り寄った
まるで、甘える猫のように
理由なんて特にないけど
急に甘えたくなった。
「そう言えば、春流ちゃんとはどう仲良くしてる?」
「してるよ。相変わらず、お喋りだけど笑」
「そっか、いつも仲良く友達は大切にね」
「うん、お母さんギュッてしていい?」
「お母さんもギュッー!」
ギュッとお母さんを抱きしめた。
私は人に甘えるって事が苦手で
普段、抑えてるものが溢れ出した
そして、2人して笑った。
本当久しぶりに笑った。
「あー、何だろ、お母さん久しぶりに笑ったよ
ありがとうね。楓」
「ううん、お母さんに甘えたかったの、もうこんな歳なのに恥ずかしい」
「私の子供なんだから甘えたい時に甘えなさいよ」
お母さんは私の頭を撫でる。
「、、、うん、甘える」
「楓に言いたい事があるの」
「なに?」
「楓は就職して早く自立したいって言ってたけど、本当は進学して大学に行きたいって思ってるでしょ?」
「なんで?」
「楓の部屋掃除してたら、大学のパンフレットあったから。家の事情で諦めて欲しくないの勉強だって頑張ってるの見てるから」
「で、でも、現実的に無理だし」
「大丈夫よ。親は子の為ならいくらでも頑張れるわよ
仕事も増やすから。楓は来年の受験に向けて気にしないで勉強頑張ってね」
本当は、大学に行きたい。
これは、ずっと心に秘めていた事だった
お母さんに言えば苦労させてしまうと
言わずに諦めようとしていた。
「お母さんに無理させたくないし」
私は、涙が溢れた
私の心情を察したのかお母さんは
「気を使わなくてもいいよ。楓にはうんと自分の人生を歩んで欲しいのだから泣かないで」
そう言うとお母さんは私の涙を拭う
「、、、お母さん。ごめんね」
「泣く楓にギュッー!」
お母さんの温かい胸に抱かれて
私達はまた笑い合った。
翌日は、雨が上がって少し冷えた風が窓に吹き付ける
お母さんは、仕事に行った
私は家事を終わらせて勉強してから
河川敷を歩いた。
犬の散歩をしてる人、ランニングしてる人
鳩にパンをあげてる人
私はきっと、側から見れば当たり前だが散歩してる人だ。
スマホが鳴り
画面を開くと佐伯君から着信
『もしもし、佐伯君?』
『えっと、うん、あ、あの榎本さんは今何してる?』
少し、おどおどした感じの口調だ
佐伯君らしい。
『河川敷で散歩かな、勉強の息抜き』
『そ、そうなんだ。うんと、うーん』
『何?』
『き、今日さ、、その、空いてるかなって』
『空いてるよ』
『良いの?』
『友達だし良いと思うよ』
すると、電話越しから小声で「ヤッター!」って聞こえた。
ちょっと、笑いそうになった。
待ち合わせの駅前は、休日と言う事もあって
賑やかだ。
先に佐伯君が待っていた。
「ごめん、待たせたかな?」
「、、、、ううん全然、俺も今さっき来たとこだから。でさ、榎本さんと一緒に行きたい所があって」
そういうと鞄から何かを取り出す
それは、CMで流れていたプラネタリウムのチケット
確か今日が開館日だったかな。
「ここに行きたいの?」
「うん、この日に榎本さんと一緒に見たいなって思って誘ったけど、、、むちゃくちゃ緊張した笑えるよね」
「ありがとうね。誘ってくれて嬉しいよ」
「良かった!喜んでくれて。嫌だったらどうしようって思ったよ」
ふっと佐伯君は、胸を撫で下ろし
私に手を差し出す。
「えっ?」
「ごめん、調子に乗った」
そう言うと佐伯君は苦笑いをして手を引っ込める。
プラネタリウムを2人で見る
星については余り知識もない
木星や火星なんかは分かるけど
「うわー!あの星むちゃくちゃ青くて綺麗。あれが今も宇宙にあるなんて、感動」
と佐伯君は小声で呟く
青い星はシリウスという星だとガイドボイスが流れる
確かに綺麗
横で女の子みたいにキラキラとした瞳で見上げる佐伯君に
安心出来た。
プラネタリウムを見終わって
外に出ると夕方になっていた
「榎本さん今日は、ありがとう楽しかったよ。またさ、嫌じゃなかったらこうして遊ぼう、、、、その、、友達としてさ」
「うん。佐伯君今日は、ありがとう。それじゃまた、学校で」
佐伯君は、「友達としてさ」という言葉を言う時
寂しそうな顔をする
私は佐伯君の気持ちを知っていながら
こうして、はぐらかすような態度をとってしまう
今、手を差し出されたら
きっと、手を繋ぐ
お母さんに甘えた様に
この人なら甘える事が出来るかも知れない。
そんな事思いながら私は、見送る佐伯君を背にして歩き始める。
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