排水溝〜橋野 康二〜
ガタン、ゴトン
電車に揺られ窓に打ち付け
枝分かれして行く雨粒を眺める
雨宿りで寄ったカフェで偶然にギャル三姉妹に遭遇
トホホな日だった。
でも久留美が少し元気になって
良かった。
まあ、あいつもまだまだ子供だって事か。
次は〜
車掌アナウンスが車内に流れる
家の最寄駅に到着
あれ、次のバイト出勤いつだっけ?
帰る前にバイト先に次のシフトを確認しに寄るか
バイト先に向かう夜道を照らす街灯が雨のせいか不気味に見える
「店長、お疲れ様ですー」
「おー、橋野くんお疲れ様。どうしたの?休みだよね?」
「いやー、情け無い事に自分の出勤日を忘れちゃいまして笑」
「おっちょこちょいだな〜、橋野くんは笑」
「ありゃ笑」
そう言って、店の奥に行きシフトを確認する
明日かー
よし帰ろ。
「それじゃ、店長お疲れ様でしたー」
「お疲れさんー」
俺は、そう言って振り返り自動扉に向かい歩き出す
と同時くらいに自動扉が開く
ドン
「痛たっ、あっ、ごめんなさい!お怪我ありませんでしたか⁉︎」
俺は、不意に入って来たお客さんと体がぶつかった。
「私こそ、すみません」
「おおお!大丈夫ですか⁉︎お客様っ」
店長が慌てて女性に駆け寄る
「橋野くん!お客さんを奥に救急箱あるかお願い怪我してるから」
女性は、膝を擦りむいたようだ
「あ、はい!」
俺は、店長の指示の通りに女性を奥の事務所に
「ここ座って下さい」
「ありがとうございます、いけませんね、私よそ見してて」
女性は、自分に呆れるように言う
「すみません。それしか、、、膝見せてもらえますか」
「、、、はい」
女性は、グレーのスエット膝あたりに仄かに血が滲んでいた
スエットを捲ってもらい
俺は、消毒液をかけ
乾かすと絆創膏を貼る。
「応急処置ですけどすみません」
と顔を上げると、女性はさっと顔を逸らす
完全に嫌われてるな
この人は、もうこの店にも来ないだろうし
俺も会うこともない
怪我の具合も悪そうにないし
少し引っ掛かるのはこの人がこの後警察に行く事かもしれないと言う事
俺は、それはそれで仕方ないと思う
受け入れよ。
、、、後、最低かも知れないが
俺は、この女性の美しさに魅了されそうになっていた
こんな、形で出会いたくなかった
あー神様、仏様、時間を巻き戻してって
祈ったりした。
「そ、それじゃ、わ、私はこれで」
そう言うと女性は顔を赤くして、小走りで店を出てしまった
俺は、何も言う事が出来なかった
「橋野くん、さっきのお客さん大丈夫だった?」
「あ、はい、大丈夫そうでした」
「この後、訴えられたりしないよね」
「大丈夫でしょ、、多分」
雨は、止む気配はなく降り続く
俺の、ふざけた祈りは
誰にも気付かれずに
排水溝に流れて行く。
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