妄想だって〜白川 久留美〜
「てか、あの橋野っておじさんどう思う?」
「久留美がからかったら良いリアクションとるしサイコーじゃん?久留美はどう思う」
「あー、聞いてなかった。何だっけ?」
絵里と咲耶の話を聞いてなかった
「橋野のおじさんの事だよ!聞いてないとかキツ〜」
「そっちね!橋野のおじさんサイコーだったよマジで」
多分そう言う事を絵里が言ってたんだろうと予想して返す。
ある程度適当に返しても2人は気にしない。
「げっ、ヤバ雨じゃん最悪〜。そこのカフェで雨宿りしょうよ」
咲耶の提案で私たちは、カフェで雨宿りする事になった。
少し、夜の顔が出始めた時刻で
雨に打たれ駅に駆け込む人を店内で眺める
「外、ヤバいね」
「だね」
「絵里〜久留美〜どこ〜?」
咲耶が私たちを探してる
本当、天然だな咲耶は。
「咲耶っここだよー」
絵里が咲耶の方に体を向けて手を上げて振る
私は、また窓の外を眺める
その時だ
侑くんが傘を差しながら歩いて行くのを窓越しに見かけた
駅の方に向かって行く
私は、侑くんに会いたいと
メールを送った。
侑くんは、立ち止まる
多分、私のメールを見ているのだろう
暫くして、返信が来た
内容は、今は、忙しいと
それじゃ、それが終わったら会えるじゃないかと
微かな希望をメールに乗せて送った。
また、返信を待つ。
咲耶と絵里は、そんな私を他所にお喋りに夢中だ。
返信が届く
お兄さんと約束があるから無理だという内容だったけど
私は、もしかして桜井先輩と会うのって
勝手な妄想をしてしまう。
胸が締め付けられるような感覚になる
2人が笑顔で笑い合う姿が不意に浮かび
泣きそうになる。
私は、忙しいのにごめんねって送った
それ以降は、返信はなかった。
「いらしゃいませ。お一人ですか?」
「はい」
「空いてる席にどうぞ」
「ありがとうございます。えーと、どこにするかー」
何となくその声の方に目を向けると
橋野のおじさんが店内をキョロキョロして
こっちの席に向かって歩いてくる
もう既に、絵里と咲耶は気付いていて
橋野のおじさんじゃんとか
こっち来るよーとか
まるで、実況中継のように
「うわ、マジかお前らいるのかよ」
私達を見て怪訝そうな顔する
「良いじゃん、橋野のおじさん1人で寂しいでしょ?久留美の隣に座りなよー笑」
絵里が冗談混じりで言う
咲耶は、笑ってる
私は、どうもそんな気分になれなくて
俯く。
「ふん。俺は、あっちに行くから邪魔するなよ」
だけど、不思議と橋野のおじさんがいると安心した
大人なのに子供ぽい所や
お兄さんのような
きっと、さっきの侑くんの事で大分とやられてたのだろうか
とにかく、安心した。
「良いじゃん、、、座ってよ」
私は、思わず橋野のおじさんの手を掴む
「おおう、なんだよ急に、キモいぞ」
橋野のおじさんは、そう言っても私の隣に座ってくれた
その後、4人で話した
くだらない事や、学校の事、まあ、色々と。
咲耶と絵里とは、帰る方向が違い
私達は、同じホームだった
「橋野のおじさん今日は、ありがとう」
「何の事?俺は最悪だったけどー」
橋野のおじさんは、ポケットに手を入れて
少し上を向いて話す
そして少し、間があった後で
クスッと笑う
「まあ、何だか分からんが、お前が元気になって良かったよ」
多分、最初から私が落ち込んでる事に橋野のおじさんは気付いていたんだ
「橋野のおじさん、お前じゃなくて久留美だから」
「悪い、悪い、それじゃ、久留美。うん、まあなんだ、辛い事もあるだろうけど、、気楽に、、、なんて笑」
そう言って、私の頭にポンっと手を置く
「えっ?、あ、、うん」
「俺は、この電車だからそれじゃな。気をつけて帰れよー」
そう言って行ってしまった。
雨は、ホームの屋根を強く打ち付ける
私の胸に橋野のおじさんの言葉が響く
侑くんは、この雨を見ているのだろうか
そして、少しでも私を想ってくれているのだろうか
これだって、私の勝手な妄想だ。
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