折り畳み傘〜佐伯 侑樹〜
僕は塾の帰り
大粒の雨が降り出す
折り畳み傘を広げて駅に向かって歩道を歩く
車道を走る車が水飛沫をあげる音を聞くと
街が忙しなく感じる。
2年後には大学受験
その時に備えて勉強
正直うんざりしてる
僕の唯一の救いが桜井さんだ。
『今何してますか?』
桜井さんにメールをした
暫くすると、久留美からメールが届く
少し、煩わしさを感じながらメールを開く
『侑くん!今、何してる?』
僕が桜井さんに送った内容とほぼ一緒だ。
面倒くさい。
『今はー、忙しい』
話を終わらしたい気持ちを込めて久留美に送信する。
『今はなんでしょ? だったら、それが終わったら会おうよー、ダメ?』
久留美に会う時間など僕には無い。仮に会える時間があるなら
別の事に使う。プライベートでは余り会いたいとは思わない。
『その後は、先約があって、兄と出かける』
絵文字も気持ちもない嘘のメールを久留美に送る。
『分かった泣
ごめんね。バイバイ』
久留美のメールを見ると直ぐにスマホをポケットにしまう。
時々思う、なぜこんな僕に好意を寄せるのだと
久留美は、目立つしそれに普通なら僕に好意を寄せなくとも他の男子が久留美に好意を寄せるくらいに可愛いし愛嬌もある。
そんな久留美に対して僕は
こんなにも冷たくあしらってしまう
とても、最悪な男だ。
駅に到着し駅のホームで電車を待つ
何度も見慣れた風景
暫くすると到着のメロディーが流れ電車がライトを照らしながら走ってくる
そして、電車がホームに入る時に誰かが黄色の線の外に出てたのだろう
大きな警笛を鳴らし警告をする
僕が見る限り、数人しかそれに反応はしていなかった
他は、スマホを見て無感情に暇を弄んでいた。
自分達には関係ない。
だから、大丈夫だ。
僕も大丈夫だ。
言い聞かせてるようで
全く、そうじゃない
次には、別の事を考えてる。
僕は、桜井さんからの返信が無いかスマホを確認するが
連絡はなかった
ただ、数10分前に受信した
久留美の返信が画面に浮いていた。
「ただいま」
「おかえりー。侑樹、雨スゲーだろ風呂入れよ」
「わかった入るよ」
侑にいがリビングから顔を出す
「侑にいは、今帰ったの?」
「少し前な。いやーしかし、やられたよ、この雨凶悪過ぎ笑」
「凶悪?」
「まあ、ヤバいって事!それより風呂入れよ」
「うん」
風呂から上がると
侑にいは、テレビゲームをしていた
最近、発売された
ロールプレイングゲームだ
侑にいがお父さんに必死になって
ねだって買ってもらっていた
その光景が面白すぎて笑った
「いやいや、バイトしろよ。小学生かよ」って心で突っ込んだ
侑にいは、ゲームを買ってもらって嬉々としながら
プレイしてる侑にいは
まさに小学生のようだ。
そんな、侑にいの後ろで僕は
スマホで天気予報のアプリを開く
明日からは、秋がやってくるらしい
桜井さんからの返信は、未だになかった。
周りを気にせずに降り続ける雨は、僕を肯定も否定もせずに降り続け
外を雨の海に変えていくように感じた。
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