嘘と本当〜佐伯 侑樹〜
「なんだ?」
僕は、ダメだと分かっていながら
敷地内に入り
茂みに身を潜める
『あなた!春流がおかしいくなったのよ、それもあなたのせいよ』
『お前がキチンと教育してないからだ!俺は何も悪くない』
窓の隙間から聞こえてくる。両親?
これは、ただ事じゃない
僕は、どうしたらいい。
その場から動けずにいると
『ただいま!』
『春流!あなたおかしくなったんじゃないわよね?』
『そんな訳ないよ』
『そうだよなぁ、春流はおかしくなってないじゃないかこんなに笑顔なんだぞ!お前の思い過ごしだいい加減にしてくれ!俺は仕事だから出るぞ!』
『いってらっしゃい、お仕事頑張ってね』
『何よもうっ。私も行くわ。夕飯は適当に食べちゃって
『うん、お母さん行ってらっしゃい。ははは』
両親が出て行き
沈黙。
こんな状況で笑えるものなのか?
ドンっ
何かの音がした。
桜井さん?
僕は玄関の扉を開ける
「桜井さん?入りますよ」
返事がない
やっぱり桜井さん倒れた?
廊下の先の半開きになっていた扉を開けると
桜井さんがリビングの床に座り込んでいた。
「桜井さん!」
「、、、、ゆ、、侑樹くん?」
僕は桜井さんに駆け寄り肩を抱く
「へっへへ、大丈夫、大丈夫、躓いただけだから」
そんなわけ無い息が上がってる
震えてる
そう言うと桜井さんは唇を噛む
それは涙を堪えているようだった
「、、、」
「私は泣きたくない。今まで周りの人に助けてもらったしここで泣いちゃったら申し訳ないよ」
そう言った。
「そうですか、、、けど、今は、、、いいと思います、見てなかったって事にしますから」
そう言ったけど桜井さんは首を横に振った
「嫌、泣きたくない」
ブーン
桜井さんのスマホが鳴る
【お姉ちゃん】と表示されていた。
僕は床に転がっていたそのスマホを桜井さんに渡す。
「あの、鳴ってます。お姉さんからです」
「お姉ちゃんから⁉︎ごめんね出るね」
「あ、どうぞ」
桜井さんは嬉しいそうに受け取ると
電話に出る。
さっきまで事が嘘みたいに
明るく話し出す。
そんなにお姉さんが大好きなんだな
「侑樹くんありがとう来てくれて」
電話を終えた桜井さんが僕に話し掛ける。
「いえ、桜井さんが大丈夫そうなら帰りますね」
「待って」
桜井さんは僕の袖を引っ張る
「、、、」
「、、、僕は、、僕は、、」
好きだと言いたかった。
抱き締めたかった。
それは、今じゃないと思った
桜井さんの少し震えた
掴む指がその気持ちを遮るから。
「帰りますね。また、学校で」
「、、、うん、、、じゃあね」
僕は玄関で靴を履いて
扉のノブを回す
「あのさ、侑樹くん」
「はい」
「もし、またこんな事があったら助けてくれる?」
桜井さんは笑顔で言った
あの場を和ます為に笑った笑顔か
本当に笑ったのか
僕は分からないけど
好きな人が困っているなら
「助けますよ、それでは」
僕は慣れない笑顔を作って答えた。
帰る頃には辺りはもう暗くなっていた。
お読み頂きありがとうございます^ - ^
また、投稿しますので
よろしくお願いします




