春流〜榎本 楓〜
朝、いつもの様に制服を着て
髪を整え、化粧をし、朝食(昨日の残りの味噌汁と冷や飯)を食べ
お母さんに「行ってきます」と言って
家出て行く
春流からメッセージが来てないか
仕切りに確認する
橋野さんからは余りしつこく連絡はやめた方が良いんじゃないかって
言われてあの1通しか送信してない。
「榎本さんおはよう」
駅のホームで佐伯君と会った。
「おはよう」
ただ、それだけ言って沈黙。
「あの、佐伯君。改めて言うけどあの時はありがとうね」
春流の事に付き合ってくれた事に改めて感謝を告げた
沈黙に耐え切れなくなったし言葉を繋げる為でもあるが
「全然全然、友達が困っていたら助けるのが普通だし」
顔を赤らめていた。
「ありがとう」
電車が到着しぞろぞろと人が降りて行き
私達もそれに乗り込むと人がなだれ込むように乗車し
自分の意思とは関係なしに奥に奥に押し込められる
私は窓際に押し込められる。
「だ、大丈夫?」
すると、佐伯君が乗客から私を守るように
覆い被さって守ってくれた
それも私の体に触れないように窓を必死に手で押さえて
「佐伯君の方は大丈夫なのっ?」
「平気、平気。友達だからさ守ってるんだよ。はははっ」
って笑って。もう、もう、普通で良いのに
普通で、、、良いのに
それは降りる駅まで続いた。
30分近くも。
「佐伯君ありがとう」
「全然、それじゃ行こうか」
「うん」
佐伯君の手の平が真っ赤になる程
私の事なんかを思ってくれて
真摯に私は佐伯君に向き合わないと
いけないと思った。
「佐伯君っ」
少し先を歩く佐伯君に声をかける。
「榎本さんどうかした?」
佐伯君は振り向く
「その、、、私、、ううん、、なんでもないっ」
「なんだよそれ笑」
「佐伯君行こっか」
まだ、先は良いかな
「お、うん」
改札を通ると
春流がスマホを触り私を待っているようだった
私の存在に気付くとスマホをしまい
「楓、佐伯君おはよう」
春流はそう言うと私に歩いて向かってくる
その表情は今にも泣き出しそうな
もう、ポロポロと目から涙が溢れていた。
「楓ーーーーーっ!、ごめんね、ごめんね」
春流は私を抱き締めると大泣きした。
私も止めど無く涙が溢れて来る。
「春流ーーーーーっ!、私もごめんね、ごめんね」
後、なにを言った覚えてないけど
泣き崩れて2人して座り込んだ。
周囲の人はざわついて
「なんだ」とか「恥ずかしくないの」とか聞こえたけど
どうでも良かった
春流と仲直り出来たならもう。
教室に着くと春流は直ぐに他のクラスメイトに囲まれて
楽しいそうにしていた
私はそれを見ていつもの春流だって
眺めていた。
昼休み
机を付けて久しぶりに話した
いつもなら、聞き流していた韓国アイドルの話しも
全てが尊く感じた。
「でさでさ、最近ね、よく家の庭先に来てた猫ちゃんが子猫を産んだんだ。それがねーむちゃくちゃ可愛くてぎゅーってしたくなるくらい。今度、ウチ来てよ」
「うん、良いよ!」
春流の話しに私は頷き、答えた。
そうだ、橋野さんにまたメッセージを送ろう
私達はもう大丈夫だって。
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