擬似 〜東山 瑞波〜
東山 瑞波24歳は今日、姉の子翔太5歳をあやす。
私は結婚してないしする気もない
なぜって・・・私は子を産めないからだ
この運命を本当に呪った。私がなんでって
21の頃だった体の不調が続いてどうしても
治らなくて姉に薦めで産婦人科に行き検査をし後日病院にいくと先生から
「子を産めない体です」とキッパリ言われた
だけど諦めずに他の産婦人科に通ってどうにか子を産めるように
必死だった。
だけど、結局はダメだった。全く見込みがないって
またキッパリ別の先生に言われ
その瞬間、目の前が真っ白になり
何も考えられなくなった。
当時付き合っていた彼氏にその事を伝えると
明らかに落胆した表情で
もう、次の言葉は
『別れよう』
今まで優しかった彼がこの言葉を言うなんて
信じられなかった。
その瞬間、私は溢れる涙を止める事が出来なくて
砂の城が波にさらわれるように今までの楽しかった思い出も消えていった
擬似の母親って言うのかな
姉が実家に帰ってくる時にだけ
まるで私が母親になったかのように
翔太をあやす。
その時にだけに行く
何処にでもありそうな小さな公園
ボールを転がしたり蹴ったり
かくれんぼしたり
母親になれない自分自身を陰に隠すように
遊んだ。
「瑞波姉ちゃん、いくよー」翔太が勢いよくボールを蹴り出す。
「あっ」
思ったよりボールの勢いが強くてゴロゴロと
ベンチの方に転がって行く
「すみません」
男性が拾ってくれた。私と歳は近いのかな
「いえ、どうぞ」
「ありがとうございます」
拾ってくれた男性に礼を言うと翔太の所に戻った。
その後、男性がなにを言ったか分からないが
なにかを言っていて私はどうしたのだろうと暫く男性の方に目をやると
男性はその場を立ち去っていった。
「瑞波姉ちゃん疲れたー」
翔太は疲れて座り込んだ
「翔太帰ろうか?」
「うん、帰る」
翔太をおぶって家に帰る。
「ただいま〜」
姉の元に翔太は駆け寄る
その瞬間私は母親じゃないと実感させられるのだ
「瑞波、翔太暑かったでしょ、お茶入れるね」
私のお姉ちゃんがお茶を入れてくれた。
「ありがとうお姉ちゃん」
「ママありがとうっ」
お風呂に一緒に入り
出た後暫くすると翔太はリビングで寝てしまった。
隣の部屋に布団を敷き翔太を寝かせ
「かわいいな」と呟き頭を撫でる。
私も・・・
その後の言葉は願っても叶わない願い
もう、何万回だって願った願い
だから。
読んくださりありがとうございました
また、投稿するのでよろしくお願いします!