白月〜橋野 康二〜
ハクション!
「橋野さんもしかしてー、風邪ですか?」
「俺の噂をしてたんだきっと」
「何を言ってるのですか?早く片付けましょう」
「榎本先輩はキツいなぁー」
榎本さんと閉店作業をしている
ウチのコンビニは22時が閉店時間だし
客もこの時間になると
いなくなる
レジ閉め、商品の確認が榎本さん担当で
床、窓、トイレ清掃全般が
俺の担当
数が多い気がする
(あっ、お客さんかな)
窓を拭いていると
榎本さんと同じくらいの
子が外で立っていて
こちらを見ている。
買い物かな
「榎本さん外にお客さんかな立ってますがどうしますか?」
「来店する気配なかったらもう、閉めましょう」
「わかりましたー」
窓を拭く作業を再開した
(オッシャー!窓ピカピカ完璧)
俺は今までにないくらいに窓が綺麗なった事に満足気にしていると
コンコン
(さっきの人)
自動扉を開ける
榎本さんは事務所で作業していた
また、レジもやり直しだし帰ってもらうか
「お客さん買い物でしょうか?大変申し訳ありませんが今日の営業は終了してまして
またのご来店をお待ちしております」
「わかりました、また今度来ます」
その子はそう言って軽く会釈すると
去っていった
「橋野さん何かありました?」
榎本さんが事務所から顔を出す
「いや、さっきのお客さんが来たけど
帰ってもらいました。不味かったですか?
また、今度来ますって言ってましたけど」
「クレームもなかったんなら良いと思いますよ。一応店長に報告しときますね」
「了解ー」
にしても最近の子は夜に出歩くのか
けしからん。
いけね、親父臭い事を思ってしまった。
帰り道
「榎本さん満月だよー綺麗じゃない?」
満月が夜道を照らし出す。
※ちなみに敬語はバイトの時だけにするようにと
榎本さんから言われている
時たまポロポロとタメ口が出てしまうが
理由は年上が年下に敬語を使っているのが
周りから変な目で見られているんじゃないかと
気になって仕方ないとの事だ
俺はどっちでもいいけど
先輩なのは変わりないし。
「そうですね。綺麗ですね。」
榎本さんは何か言いたげな表情だ
「どうかした?何かあればお兄さんに言ってみなさいっ」
「あのー、橋野さん。好きじゃない人から告白される時って嫌じゃないですけどなんて言うか断ったんですけど。まだ、相手に気がある気がして、困るというか、こういった場合どうしたらいいのでしょうか?すみませんメチャクチャで」
うわー、青春だなー
いいな泣
「嫌ならキッパリ断った上で。私には彼氏がいるんですーとか好きな人がいるんですーって言ってみたら?でも、本当に好きな人がいるならいいけどウソつくならバレないようにね」
「そうですか、それは大丈夫です!」
「それなら大丈夫かな。後は何かある?」
「橋野さんはどんな学生だったんですか?」
「今はさー、チャランポランなんだけど学生時代は真面目にどうモテるか毎日考えてたんだなー」
「呆れた。えー、具体的には?」
「教室の隅でインテリ気取って小説読んだり、俺は小説読んでたらむちゃくちゃ眠くなるから本当は苦手だけど頑張ったよねーあれはマジで!」
「で、後は?」
「後はー、実は俺動けますって思わせる為にサッカーしときゃモテるじゃねって友達と会議してサッカーしたりギャップ萌えねらい」
「へー、成果はあったんですか?」
「それがね。学校1の美人と付き合えたんだよ。最高だったけど一週間で別れた
その後は別の子にも告ったけど惨敗。本当モテね〜って泣きそうだったよははは」
「プッ、私の悩みなんてどっかに行っちゃいそうですよ」
俺は年下の子に相談されて
話した事が為なったかは分からない
けど、俺は一体誰に将来や今の悩みを
打ち明ければいいのだろう。
もう、ずっとパーソナルな部分は
見せれないままだ。
満月の明かりだって俺の心には届かない。
読んで頂きありがとうございます♪
また、読んで頂けると幸いです!




