距離〜佐伯 侑士〜
もうじき、お母さんの命日
弟とお父さんで墓参りをする
お母さんが大好きだった
お酒(日本酒)を持っていく
いつか、俺と弟が大人になったら
一緒に飲みたいなって
それが楽しみだったらしい
だから、墓参りの時は俺たちは水、お父さんは持ってきた酒を飲む。
「侑士、侑樹行くぞ」
2人「はーい」
車で2時間近く
市街地を抜け次第に人も疎らになっていく
曲がりくねった山道
気分が悪くなる
墓地の案内看板が見えてくると
車はスピードを落とし
駐車する。
そこから俺達は
さらに、15分程歩く。
「来たよ。絵里。侑士も侑樹も少し大きくなって君に少し似てきたかな。また、酒持ってきたから後で一緒に飲もうな」
お父さんがお母さんに話しかけた後
お墓の掃除をして
樒を供え
線香を立て
手を合わせる
「よし、飲むぞ」
そう、お父さんは言うと
日本酒の蓋を栓抜きで開けお猪口を2つ用意し
それぞれに注ぐ
1つを供える。お母さん用だ。
俺達はペットボトルに入った
水を紙コップに注ぐ
静かにそれを飲み干すと
「絵里。本当は生きている君と酒を一緒に飲みたい。君に会って、君と話して、、、、君を抱きしめたい、愛してる」
「そっとしてやろう」
「そうだね」
俺は侑樹と先に車に戻る事にした
座席に座るとあの日の事を思い出した
俺はあの時榎本さんにどう振る舞えば良かったんだろ?
ブサイクな笑顔と馴れない言葉
どう足掻いても
想像しても全くで
榎本さんは
きっと、しつこい、うざい奴って
思っているかもしれない
それでも、やっぱり好きで
たまらない
格子状の想いを押さえつけば
押さえる程、窮屈で苦しくて
そこからはみ出る想いが
より一層苦しくさせて
上手く纏まらない言葉達が
頭の中で渦巻いては
締め付けて行く
お父さんがお母さんを想う気持ちは
まだ、高校生の俺には分かるはずもないけど
榎本さんの全てを好きでいたい
その先で分かる
はずだから。
読んで頂きありがとうございます♪
久しぶりに投稿出来ました!
また、投稿します^ ^