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第8話:天才魔術師の大規模リフォーム

「まずはこの店兼家を空間魔法で一時的に解放している異次元に放り込みましょう」

「待て、魔力は足りるのか?」

「よ・ゆ・う」


 なお私物などは一時的に避難させています。

 異次元内の事象、物質は全部観測できるからね。女の子には見られたくない物もあるだろう。男に無いとは言わんが。


 無理やり、しかし丁寧に地面から引き抜かれた店は、まるで玩具(おもちゃ)がそうなる(よう)に、異次元に放り込まれる。

 その後空間内で部品をバラし、木材と金属類を確保。

 家のあった土地を丁寧に均し、地質をしっかりと調べねばならない。


「凄い音だな」

「まぁ周辺住民にも少なくないお金を握らせてるからね。すぐ終わらせれば苦情も来ないさ」

「そうかぁ……?」


 そういうものである。

 役所にも届けは出てるし、訝しげな顔をされはしたもののなんの問題もなく受理された。当然だな。


「あとは岩で型を作りまして〜」

「相変わらずお前の魔法は無茶苦茶だ、目眩がする」

「5階建てぐらいかな!1番上がギルドマスター室で、地下には訓練場、2階には簡易的な宿を設置して3階には会議室をいくつか設置。4階には情報室とか従業員室を作って……マリヤ達の部屋は前よりも広くしよーっと」

「楽しそうだな」

「こういうのは初めてだからね」


 実際結構楽しい。総魔力量がそこらの魔王よりも多い僕にのみ与えられた特権である。


 一階には今まで通りの雰囲気の酒場を設置し、受付を設置。

 後々には人を雇っても良いが、今はゴーレムでいいだろう。愛想は無いが人間よりも有能だ。僕はあんまり好きじゃないけど。


「しかし驚いたな」

「……何が?」

「ギルド立ち上げについてだよ。まさかそこまで大事にするつもりだとは思わなかった」

「ガルオスがクラン立ち上げを勧めてきただろ?延長だよ」


 ギルドとクランの違いは大きい。

 クランは探索者協会内のシステムであり、ギルドはこの国以外でも広く認められている商業組合という意味合いを持つ。

 つまりは探索者協会の枠組みの中で管理されるクランではなく、敢えてギルドを創設するというのは探索者()()()の最大手である協会に正面切って喧嘩を売ることに他ならないのだ。

 もちろん、そういう考えに至るのが僕だけな訳が無い。探索者ギルドは()()以外にもあるにはある。


 例えば2番手探索者ギルドの『冒険者組合』。うちの国では流行ってないが、探索者協会と仲の悪い国ではメジャーなギルドだそうだ。


 しかし僕が狙うのは2番手じゃない、トップだ。

 少なくともこの国において、最高峰のギルドに成長させる。そうする事によって彼らとの喧嘩に堂々と勝ったとそう言えるだろう。


「よし、完成した。余った素材は家具にして有効活用すればいいや。防御面は……魔法結界と物理結界張ればいいだろ」

「……中に入ってもいいか?ステイラ」

「いいともさ。マリヤさんとタルヤも入ってどうぞ。私室は4階だよ…………どうしたの?」


 先程から黙りこくっている彼女等の方を横目で見ると、荷物を落として固まっていた。

 信じられない光景を見て茫然自失としている様だ。しかしまぁ驚いただけだろう。気にせずともすぐに中に来るはずだ。

 僕がそう思って1歩踏み出したところで、タルヤがぽつりと呟いた。


「神様……?」


 うん、思った以上に驚いてたね。神ってなんやねん。

 凄い事をしているのは十分承知だが、これぐらいならできる人間も居なくは無いだろう。神様はさすがに言い過ぎだ。

 いや、人間だと怪しいが……魔王とか迷宮主(ダンジョン・ボス)とかその辺は出来なくも無い筈だ。

 理族(エルフ)の長老とかなら間違いなく出来る。アイツら生まれつき魔力管理超上手いから。

 あとは鉱族(ドワーフ)。あいつら魔法使わなくても出来るから。一人じゃ流石に無理だろうけど、10人くらい集まれば僕より多少時間はかかれど、一日で僕の物より完成度高い物作れるから。

 彼らの場合を量より質なので比べっこしたってしょうがないのだ。

 後は……分かんない。


「これぐらいなら出来る人沢山いるよ。それよりほら、中に入ろうよ」

「は、はい」


 僕は取り敢えずそう説得して、ドアを開けて中に入った。ドアは使い回し、金属パーツは使い回しだ。

 魔法で少しばかり鉄を生み出したりもした。流石に魔力消費が馬鹿にならないからちょっと疲れたけども。


「内装はいままでの酒場の雰囲気を壊さない程度に微改装、調度品類は完全に使い回しだね。キッチンは今までの物を壊さずにそのまま使ってるから問題なく使えるはずだよ」

「水とか火はどうするんだ?」

「それはこれから設置するの」


 魔石。

 最もメジャーな遺物のひとつで、その仕組みがある程度解明出来ている数少ない遺物(それ)でもある。

 魔力を込めれば壊れる迄設定した通りに魔法を使わせる事が出来る便利な物であり、設定するのは難しいが、慣れれば簡単だ。

 人工的な物、ダンジョン産の物、どちらも非常に高値が付く。

 自作出来ればその問題も解決するが、まぁ値段で考えるのならば基本的にその都度油や水を買った方が安い程には希少だ。

 魔石のサイズや純度によっても価値は変わるし、価値が高ければより複雑に出来たり、耐久力が高かったり、一時的に保有できる魔力は多い。

 その魔石が得意な魔法属性なんかも存在するので奥が深い。

 上から下まで本当にピンキリだ。

 ちなみに比較的安値の所謂"クズ魔石"は基本的に使い物にならない事が多い。

 そう甘い世界では無いのだ。


 と、感心する3人を引連れてキッチンへと向かう。このギルドハウスの数少ない水場だし、最も多く魔石を消費するので、さっさと終わらせるのが吉だ。


「ここには火の魔石を嵌める、それでこっちには水の魔石。魔力を通したら水が出たり、ここに火がつくようになってる」


 燃料は火魔石に仕込んだ油の精製でカバーする。火魔法だけだと当然ながら燃えない。

 水魔法は生成位置を調整しなければいけないだろうが……まぁいいだろ。問題が出たらその都度調整すればいい。


「さて、次は食材の保管だな。これについてはいい方法に心当たりがあるんだ、これを見てよ」


 僕が壁にある凹みに手を押し当てると、壁が横にスライドして広めの空間が目の前に広がった。


「これは……どういう事だ?」

「ドアの一部分を魔法でゴーレム化してみた。魔力が切れるまではここに手を当てたら自動で開くよ」

「……ゴーレムって人型だけじゃないんですか?」

「いい質問だタルヤ。ゴーレムは今、人型の物が多いけれども期限を辿ればその殆どが命令に従って動かせるようにした固体なんだ」

「それってもしかして、煙とか水とかもゴーレム化出来るんですか!?」


 ふむ。さてはタルヤ、頭いいな?

 僕はタルヤの評価を心の中で上方修正した。好奇心があるのはいい事だ。頭でっかちな学者連中よりよっぽど可愛げがある。

 そんな嫌な思い出はさて置いて、僕は彼女に説明した。


「理論上は可能だ。けど、水は水同士の結合が弱すぎて使い物にならないんだ」

「結……合?」


 不思議そうな顔でこちらを見つめるタルヤ。うーん、この手の説明は得意じゃないんだよな。


「例えば粘土があるとする。それらを捏ねて一緒にすることは出来るだろう。だけどそれらと木を混ぜ合わせる事は出来ない。見た目上混ざってても、より小さな視点で見ればそれらの物質は結合していないんだ」

「なる……ほど?」

「もっとわかりやすく言うとだね、ほら水と油って混じらないだろ?それと同じことなんだ。違う物質同士が繋がらないように、煙や水もお互いの結合が弱い。だから命令を組んでもすぐに絡まって解けちゃうんだ」

「???」

「まあまた今度教えてあげるよ、どうせ僕もここに住むんだ」


 僕は首を回してその部屋の中に入った。


「で、結局ここは何の空間なんですか?」

「ここは食品を凍らせたり冷やしたりして長期保存しておく為の部屋。冷蔵室とでも呼ぼうか」

「え!?そんなことが出来るんですか?」

「僕お手製の火の魔石をここに嵌めると、室温を奪うことで冷やすことが出来る」


 僕が冷蔵室の柱にかぽりと赤い宝石を嵌めこんで魔力を流し込むと、瞬間的に部屋の温度が下がった。

 うん、保存するなら十分すぎる温度だ。


「これで良し、後は地下のお風呂と住人専用のお風呂、灯りその他諸々の魔石をそれぞれの場所に嵌めれば完成かな」

「でも……そんなに魔石をあちこちに使ってもどうやって魔力を流し込むんですか?私たちは魔法なんてできませんよ?」

「待ってましたその言葉!僕開発の魔力タンクがあるんだ。僕の魔力の1割も貯められないけど、このギルドハウス内の魔力を賄うだけなら1か月は持つはずだよ」

「一か月以上留守にしたら……?」

「大丈夫さ、ほら」


 僕は基本的にいつも閉じている異次元空間の中から、10個ほどの魔力タンクを取り出した。


「1年は持つさ」

「やっぱり、お前は、滅茶苦茶だッ!」


 泣きそうな表情でテリオマが地団太を踏んだ。

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