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76話:それはベルでない何か

大変お待たせしました


「アレクの旦那!」


 王都の外れにある荒れた倉庫の中にアレクが入ると、中でトリフェンが待っていた。どうやらここは、彼等の数あるアジトのうちの一つらしい。


「何があったの!?」


 アレクの焦ったような言葉に、トリフェンが首を横に振った。


「分からねえ。だが、姐さんがそう簡単にやられるとは思えねえから、きっと何か裏がある」

「もしくは……ベルすらも負けてしまうほどの相手か」

「……正直考えられねえ」

「だよね……」


 それからトリフェンが得た情報をアレクへと説明していく。


「背の高い……女性?」

「ああ。そいつが姐さんを担いでいたらしい」

「……ディアナじゃないの?」


 サンドラはそう言うが、トリフェンは否定した。


「いや……流石に裏社会の人間でもあのバケモンみたいな女を誰かと間違えないさ」


 女性……。なぜかアレクは、〝魔女〟という言葉が頭の中に浮かんだ。


「トリフェン、どこで最後に目撃されたの?」

「……そう来ると思ってここを選んだんだ。この倉庫街の更に奥に、ゴミ捨て山と呼ばれる場所がある。名前の通り、王都中のゴミやら屑やらが集まってくる場所だ。もちろん、そんなところだ、誰も近付かない。だから裏社会の連中はよくそこを処刑場として使っているんだ。死体もゴミの山に埋めちまえば……見付からない」

「……嫌な場所」

「行ってみよう」

「……トパゾは情報を更に集める為に今王都中を走り回っているが、まだ時間がかかりそうだ。としたら……俺達で行くしかないな」

「うん。いざとなったら……頼むよトリフェン」

「ああ……」


 トリフェンが山刀を抜いて頷いた。アレクも魔石を嵌めた短剣を構えた。


「行こう」


 アレクとサンドラ、そしてトリフェンがゴミ捨て山へと向かった。



☆☆☆



「ううう……臭い」

「こう臭いと……鼻がきかねえ……獣人には不利な場所だ」


 サンドラとトリフェンが顔をしかめる。確かにそこはアレクでも耐えがたいほどの悪臭が漂っている場所だった。左右に、ゴミの壁が立ちはだかっており、いたるところにすり鉢状の穴が空いていて底は暗く見えない。


 落ちれば……戻ってこれないほどの深さだろう。


「この辺りのはずだが……足跡も痕跡もないな。臭いもわからねえ」

「この先には?」

「確か、ちょっとした広場があったはずだが」

「行ってみよう」


 トリフェンが先を行き、アレクは背後を警戒する。トパゾの帰りを待っても良かったが、なんとなく早く行動しないと――手遅れになってしまいそうな気がした。


 左右の壁が途切れた。


 その先には確かにちょっとした広場があり、周囲はゴミが高く積み上げられている。


「アレク! あれ!」

「っ!」


 サンドラが指差す先――広場の中央には、一人の銀髪の少女が佇んでいた。


「ベル! なんだ無事じゃない! もう……心配したんだから!」


 サンドラがそんなことを言いながらアレクの肩から跳んで、地面に着地すると、ベルの方へと駆けていく。


「サンドラ、駄目だ!」


 アレクが鋭い声を出したと同時に――ベルの目が怪しく光り、その左手から魔弾が放たれた。


「ちっ!」


 地面を蹴ったトリフェンがサンドラを掴むと、横へと投げた。しかし、ベルの放った魔弾を躱しきれず、脇腹が削られる。


「くっ!」

「サンドラ、トリフェン!」


 アレクが短剣の【筋力強化】のマテリアによって得た力で普段より素早い動きで投げ飛ばされ、転がったサンドラを抱き上げた。


「ご、ごめん……アレク……あたし」

「怪我はない!?」

「うん……でも……なんで」


 サンドラが悲しい顔をして、佇むベルを見つめた。ベルは微動だにしていない。その顔に張り付いた無表情は、アレクの知っているベルの無表情とは違う。


 確かにベルは無表情だが、その言動や目の奥で感情を少しずつ露わにしていた。


 今、目の前にいるのは初めて出合った時のベルと同じだ。


 冷たい、ただの人形。


「トリフェン、怪我を見せて、治療するよ」


 アレクは魔石を【回復魔術】へと換えて、トリフェンの傷へと治癒魔術をかけていく。


「くそ……なんでだよ姐さん……」


 ベルはしかし、アレク達が隙を晒して回復をしているにもかかわらず、全くこちらを攻撃してくる気配はない。


「なんで攻撃してこねえんだ?」


 傷が一時的にだが治ったトリフェンが立ち上がった。


「一定範囲内に近付いたら、攻撃するように命令されているのかもしれない」


 アレクはそういえばディアナにそんなことも命令できるという話を聞いた事があった。


「そうだとしても……誰がそんなことを」

「分からない……でもトリフェン、見て。ベルの額に……」


 アレクの視線の先。ベルの額には――見たことのない黒い宝石が埋め込まれていた。


「あれは……なんだ」

「マテリア……だと思う」

「アレクの旦那がやった……わけねえよな」

「アレク……あれ、魔女のマテリアと一緒だよ。あたし……怖い。あれは光を放つんじゃない……光を……吸いこんでる。だから黒いんだ」


 サンドラがアレクの肩の上で身体を震わせた。


「トリフェン。あれがきっと原因だよ」

「だろうな」

「……あれを壊そう」

「無茶言うなよ……相手はあの姐さんだぞ」

「分かってる。でも……やるしかない。僕達で」


 でないと……関係ない人が、傷付いてしまう。


 きっとベルはそんなことは望んでいない。


「僕も援護する。魔石は色々持ってきたから、それを使ってなんとか接近する。近付けば僕の力でマテリアを取り除けるかもしれない」

「……俺が囮になるってか」

「ごめん……無茶を言っているのは分かってる」

「かはは……なあにこの命、元よりアレクの旦那の物だ。使い潰してくれ」


 そう言ってトリフェンが獰猛に笑うと、山刀を構えた。


「姐さんとは本気で戦ってみたかった。マテリアで強化された俺は、出会った時より――強いぜ?」

「やろう、トリフェン。僕達で……ベルを取り戻そう!」

「ああ!」


 こうして、アレク達対ベルの戦いが始まった

 

VSベル


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