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73話:エラー


 魔石屋アレキサンドライト、店内。


「うーん」

「どうされたのですかマスター」

「うん? いやなんでもない」

「もー、アレクったら最近ずっとそんな感じじゃない」


 心ここにあらずと言った様子のアレクを見て、サンドラが毛繕いしながら呆れたような声を出した。


「うーん」


 アレクはあの夜からずっと、あの謎の少年のことを考えていた。瞳がマテリアというわけのわからない存在。何より、彼の言っていた不吉な予言。


 〝人形を信用しない方がいい。人の形を弄ぶのは……魔女の領域なのだから〟


 アレクはちらりと、テキパキ働くベルを盗み見るがやはりおかしな様子はない。


「考え過ぎかな……?」


 だが、魔女という単語がやはり引っかかる。魔女のマテリアという言葉を最近聞いたばかりだ。何か関連性があるのだろうか。


 しかし結局何回考えても、魔女のマテリアについてはセラフィが文献を見付けるまでは分からないし、あのアベルという少年が何者かは見当も付かない。


「うーん」


 そうして出口のない思考の迷路をアレクが彷徨っていると……


「マスター。トリフェン達と会って来ますので、外出しますね」


 そう言ってベルがエプロンを脱ぐと、外出する用意をはじめた。ベルはときおりこうして外出し、トリフェン達に指示をだしたり報告を受けたりしに行っていた。だから、別に何もおかしくないのだが……


 アレクは妙に疑心暗鬼になっている自分がいい加減嫌になってきていた。


 無理やり笑顔を作ると、ベルに明るい声で返事した。


「う、うん! いってらっしゃい! トリフェン達によろしく伝えておいて」

「かしこまりました。それでは」


 ベルが出ていってしばらくしたのちに、サンドラがあくびをしながらアレクへと視線を向けた。


「それでー? ベルの何が気になるの?」

「へ!? な、何が!?」

「はあ……アレクって客には商人らしくできる癖に、身内には弱いんだから……。バレバレだよ? チラチラベルの方を見てはため息をついているの」

「……ごめん」

「それで? あたしが聞いたげるから言ってみなさい」

「あー。実はさ、こないだ……」


 そう言って、アレクはあの奇妙な少年について話し始めたのだった。



☆☆☆


 王都。噴水広場。


「ふう」


 ベンチに座ったベルが空を見上げた。天気も良く、その噴水広場には沢山の人々で賑わっている。


「おや、ベルちゃんじゃない。今日はお買い物?」


 ベルにそう声を掛けたのは、一人の優しそうな老婦人だった。それはベルがよく買い物にいくマーケットで果物屋を営んでいる老婦人で、ベルはサンドラの好物である姫リンゴやオレンジをそこで購入していたのだ。


「メルティさん、こんにちは。いえ、少し散歩を」

「天気が良いものねえ。これあげる。じゃあね」


 老婦人から押し付けられた真っ赤な姫リンゴを手に、ベルは苦笑した。


「お礼を言う前に去ってしまいました」


 ベルは姫リンゴをポケットに仕舞うと、少しだけ笑顔を浮かべた。


「さて……そろそろ戻りましょうか」


 そもそも今日はトリフェン達と会う約束はしていなかった。だけど、数日前から妙にアレクの様子がおかしかった。どう見ても、それは自分のせいであるように思えたのだ。


 だから、ベルは外出するフリをした。だけど、彼女は気付いていない。そのやり方が決して彼女らしくなく、とても人間臭い行動だということを。


 昔の彼女なら、すぐにアレクを問いただしていただろう。


「エラー……でしょうか」


 なんて呟いていると――


「あん? おーおー、誰かと思ったらドレッドノ……じゃなかった。なんだっけ……あーそうそう、ベルじゃねえか。おいおい、随分と人間に擬態するのが上手くなったな。ため息なんてついちゃって」


 そう絡んでくる赤い影が現れた。


「貴方は――」

「なんだ? 悩みごとか? あたしがきっちりばっちり聞いてやるぜ。なんせ――()()()()()だからな」


 そう言って、どかりとベルの横に座ったのは――赤き人形遣いディアナだった。


ベルさん編、はっじまっるよ~



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