6話:お買い上げありがとうございます
翌日。
「アレク!!」
爆発するような勢いで、店の扉が開いた。
「ちょっと! もっと丁寧に扉を開けなさい!」
サンドラがそう注意するも、来客はそれを無視して、カウンターでマテリアの手入れをしていたアレクの下へと駆け寄った。
「あ、セレスさん。どうでした?」
それはセレスだった。今日は鎧を着ていないが、あの剣だけは腰に差している。身体に包帯が巻かれているのが襟口から見え、なぜかやけに重そうな鞄を持っていた。
「どうしたもこうしたもないぞ!! なんだこれは!!」
セレスが鬼気迫る表情でそう言ってくるので、アレクの脳裏に不安がよぎる。
あれ、もしかして……マテリア、全然使えなかった?
「どういうことだ! ありえない……ありえないぞこれは!」
「ありえない……とは」
「……実は昨日の式典の途中で襲撃があってな」
「ええ!? 大丈夫ですか!?」
「ああ、王女も私も無事だ。いやそれよりも、聞いてくれ。暗殺者はよりにもよって、【黒毒】を矢と短剣に塗っていてな。これは特殊な毒で即効性もあり、解毒薬もないんだ。聖女クラスの聖魔術でないと治らないほど厄介な毒なんだが……私はそれが塗られた矢を背中に5本受けた」
「うわ……痛そうですね」
「だが、毒の症状が一切出なかった」
セレスが信じられないという表情を浮かべる。
「あー。【毒耐性】のマテリアを付けてたおかげね。感謝しなさいよ」
サンドラがそう言って、満足そうに頷いた。
「そうなんだよ。あの【黒毒】を、ただの石が無効化してくれたんだ!」
「ただの石じゃない! マテリア!」
サンドラは口を尖らせるのを見て、セレスが頭を下げた。
「すまなかった。マテリアだったな。いや、それだけじゃないぞ! 剣を一閃するだけで暗殺者が盾ごと真っ二つになったし、なんなら背後の教会までぶった斬ってたぞ! 王女が空も斬ったとか言いだして、凄い騒ぎになってしまっている」
「ああ、【筋力強化】も付けていましたもんね。でも、そこまでの力を引き出せるのはセレスさんの潜在能力のおかげですよ」
アレクがその話を聞いても驚かないところを見て、セレスはやはりか、と確信した。
彼もこのマテリアも――本物だ、と。
「――アレク。これを作ったという君の力も、マテリアの力も……凄すぎる。なぜ君はこんな路地裏の小さな店をやっているんだ!? こんな力ならばどこでも引っ張りだこだぞ!」
「いや……色々ありまして……」
アレクの沈んだ顔を見て、セレスが何かを察したのか、首を横に振った。
「いや、すまない。詮索するつもりはないんだ。まずは、このマテリアだが……言い値で買い取らせてもらう」
「……!! ほんとですか!?」
「ああ。いくらでもいい。好きな金額を言ってくれ」
「えっと……うわどうしよう……まさかそんなすぐに売れると思ってなくて……」
突然の申し出に、アレクがあたふたしていると、サンドラが口を開いた。
「初回割引で、【毒耐性】は5万ゴルド、【筋力強化】は10万ゴルド。言っとくけど1ゴルドもまけないからね」
10万ゴルドといえば、この王都で平民の家族が1ヶ月暮らせるほどの大金だ。
「サンドラ、それ高す――」
「買った」
セレスは鞄から金貨の入った革袋を取り出すと、カウンターの上へと置いた。
「ええ!」
「まいどあり~。やったねアレク!」
革袋の中の金貨を見て、はしゃぐサンドラをよそに、アレクがそんな大金貰っていいのかどうか迷っていた。
「いやでも……」
「構わん。むしろその2倍以上は想定していた」
「げー。もっと吹っかけておけば良かった」
「ダメだよサンドラ。1度契約が成立したあとに金額を釣り上げるのは良くない」
「分かってるって」
そのやり取りを、セレスが微笑ましそうに見つめていた。
「ふふふ……君らは仲が良いな。正直、最初にサンドラを見た時は魔物か!? とびっくりしたが」
「魔物じゃない! 宝石獣!」
「なるほど宝石獣か……まあとにかくこれからも贔屓にさせてもらうから、よろしく頼むよ、アレク、それにサンドラもな」
そう言ってセレスが改めて頭を下げたのだった。
「こちらこそよろしくお願いします! あ、そうだ、マテリアの効果自体は永続なのですが、効果を発揮するたびに少しずつ摩耗していくんですよ。だから、定期的に持ってきてください。僕がメンテナンスしますので」
「ああ、なるほど。どれぐらいの頻度で必要なんだ?」
「よっぽど酷使しない限りは1か月はもつんですけど……もしそれ以上となると、簡易の道具をサービスで付けますからそれを使ってご自身でメンテナンスすれば、問題ありません」
「なるほど。そのやり方も教えてもらうが、やはりプロに任せるのが一番だな。定期的に来させてもらおう」
セレスはマテリアの手入れ道具をアレクに貰ってメンテナンス方法を教えてもらうと、上機嫌で帰っていったのだった。
こうしてセレスはアレクのお店の顧客第1号となったのだった。
紙幣ではなく金貨で払った理由としては、紙幣はまだ流通量が少なく、金貨の方が商売する上では重宝されるからです。アレクの事を思ってのことでしょうが、気が利く女性ですね
更新はよ、続き気になる、おらもっと書けやごらぁ!
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