67話:呪われた客
あれこれのアレでタイトルを大きく変更しました!
今後はこちらのタイトルでよろしくお願いします!
それは、夏の到来を予感させる陽気を感じる午後のことだった。
店の扉がカランカランという涼やかな鐘の音と共に開いた。
「いらっしゃーい」
ショーウインドウの近くの棚にいたサンドラが声を掛けたのは、2人組の男女だった。
一人は仕立ての良い服を着た、しかめっ面の青年。ステッキにシルクハットと姿だけを見れば紳士然としているが、その所作はあまり洗練されておらず、アレクには無理に着飾っているように見えた。
もう一人は、白いワンピースを着た美しい銀髪の女性だった。儚そうな雰囲気を出しており、その表情は憂いに沈んでいる。
口を開いたのは、青年の方だった。
「……ほんとにここか?」
店内を見渡して、青年が訝しげに隣の女性へと問いかけた。女性はカウンターの奥から出てきたアレクを見て、無言で頷いた。
「いらっしゃいませ。当店はマテリアという、特殊な宝石を扱っている店なのですが……何かお手伝いできるでしょうか?」
アレクが笑顔を浮かべそう声を掛けるも、男性は胡散臭そうな視線をアレクに浴びせる。
「特殊な宝石? お前、回復魔術士じゃないのか? それとも薬師とかか?」
「へ? いや、僕は宝石師なので、そういったものではないですけど」
質問の意図が分からず、アレクが首を傾げた。
「……帰るぞガーネット。とんだ無駄足だ」
その様子を見た青年が踵を返した。しかし、銀髪の女性――ガーネットが青年の裾を掴み、首を横にフルフルと振っている。それは、嫌だとワガママを言う子供のような仕草だった。
「ダメだ。S級だかなんだか知らないが、冒険者の紹介なんてやっぱりアテにならない。行くぞ」
青年がそう言ったのを聞いて、アレクはピンと来た。S級冒険者の紹介で来たということは――きっとディアナさんが前に言っていた人に違いない。
「えっと、もしかしてディアナさんからここを紹介されたのですか?」
アレクの言葉に、ガーネットが反応しブンブンと首を何度も上げ下げし、首肯する。
「ふん、石ころなんかで何とかなるなら苦労しない。ガーネット、もう忘れろ」
だが、帰るのをガーネットが頑なに拒否するのを見て、青年が溜息をついた。
「とりあえず……お話だけでも」
アレクがそう言って、二人をカウンター席へと案内する。既にベルはお湯を沸かして、お茶を入れる準備をしていた。
「時間の無駄だと思うが……ガーネットの気が済んだらすぐに帰るからな!」
青年がぶつくさ文句言いながらも、ドカリと椅子に座った。ガーネットは興味深そうに周囲のマテリアやカウンターの上に移動したサンドラを見つめていた。
カウンターの内に入っていったアレクに、紅茶カップの用意をしていたベルが近付いてくる。
「マスター、あの女性ですが」
「ん?」
囁くようなベルの次の言葉を聞いて、アレクは目を見開いたのだった。
「〝沈黙の魔女〟に呪われています」
その言葉の意味に気付いたアレクは、溜息をついた。これは……厄介なことになりそうだ。
「ディアナはまた、とんでもないお客さんを紹介してくれたね……」
ベルの言葉を聞いていたサンドラの言葉に、アレクは自分の予感が的中したことに素直に喜べずにいたが、ガーネット達にこう言う他なかった。
「僕に何が出来るか分かりませんが……何でお困りか聞かせてください」
厄介そうなお客さんです。沈黙の魔女に呪われているの意味とは?
そしてマテリアでどう解決するのか、乞うご期待!
前書きに書きましたが、タイトルを大幅に変更しました! 今後はこちらのタイトルで覚えていただけばと思います!!
新タイトル:
魔石屋アレキサンドライトへようこそ ~規格外の特級宝石師とモフモフ宝石獣の異世界繁盛記~




