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63話:王者の風格とは(王子サイド)


 王宮内――【緑柱宮】


 応接間にて、グラスに入れた琥珀色の酒を揺らしながら寛いでいたユーファの下に、一人の騎士が慌ててやってくる。


「お、王子!」

「……お前さあ、ここが何処が分かってんの? どんな状況だろうと平然としてろよ。小物じゃあるまいし」


 ユーファは侮蔑したような視線を騎士に浴びせた。彼はいつでも〝余裕さ〟というものを大切にしていた。それこそが、この国の人間の上に立つ者が持つべきものだと、常々考えていたからだ。


「す、すみません! ですが……」

「ですが……なんだ」

「【白の天秤】のウヴァロ様が……王子に聞きたいことがあると、訪問される予定があるそうで」


 ウヴァロの名前を聞いた瞬間に、ユーファが顔をしかめた。聞きたいことがある、というやんわりとした言い方だが、それはつまり尋問ということなのだろう。


「あの糞ジジイが……俺に聞きたいこと?」

「はい……なんでもここに出入りしているアルマンディ商会のアルマンが捕縛された件についてだそうで」

「ちっ……あの無能が。捕まったのか」


 ユーファが舌打ちするも、まだ平然としていた。いくらアルマンが喚こうが、ウヴァロが動こうが、自分の優位は崩れない。

 法の番人である【白の天秤】には、確かに王族にすらも力を行使できる権限がある。おそらく王ですらも彼らに正当な理由なく命令を出すことは出来ない。


 当然、王子であるユーファも同様だが、それら全てが建前でしかないことを彼は知っていた。王家に対し、あいつらが牙を向けるわけがない。


 だからこそ、まだ余裕を保っていられるのだが、一つだけ気に食わない事があった。


「なぜ、こんな重大なことが事後報告なんだ?」

「あ、いやそれは……」

「アイツはどこに行った?」


 ユーファがそう聞くと、騎士が目を逸らした。王子が、この館に出入り出来る者で、アイツと呼ぶのは一人だけである。それは、ユーファに仕えるメイドの1人であり、元暗部の人間ともあって彼が最も信頼しかつ重用していた人物だ。


「わ、私は存じ上げておりません」


 騎士がそう言って、後ずさる。その様子を見て、ユーファが立ち上がった。


「おい。もっかい聞くぞ。アイツはどこにいる。すぐに呼べ!!」


 ユーファが珍しく乱暴にグラスをテーブルに置くと、立ち上がった。


「あ、いえ……ですから」


 言い淀む騎士を見て、ユーファはようやく事態が思った以上に深刻である事に気付いた。


「お前、何か知っているな。さっさと話さないと、その首、斬るぞ」

「い、いや! 私は何も!」


 剣を抜くユーファを見て、騎士が顔を真っ青にする。


 そんな時に、応接間に少女の声が響いた。


「あらあら……お兄様。随分と――()()()()()()()()()


 応接間に入ってきた第2王女のセラフィが、微笑を讃えながら怯える騎士の横に立った。


「黙れセラフィ」

「どうしました? 声を荒げるなんてお兄様らしくもない。まるで、()()()()()()()()()()()剣士のようですわ」


 そのセラフィの物言いに、ユーファが目を釣り上げた。


「あー、そういえばお兄様に仕えていたとあるメイドが、直接私に休暇が欲しいと申し出てきましてね。ずっと働きづめで疲れたとか……なので休暇とついでに()()()()を与えましたわ」

「お前……まさか……!」


 セラフィの物言いに、ユーファが勘付く。

 アイツが……自分に内密でそんなことをするわけがない。ということはつまり……。


「セラフィ……貴様ああ!!」


 ユーファが憤怒の表情で迫り、セラフィへと剣を振り上げた。しかし、彼女は余裕を崩さない。


 それが王者の姿と言わんばかりに。


「あら、部下が1人いなくなった程度で取り乱すなんて……お兄様も人間らしいところがあったのですね。ですがそれは――悪手ですわよ?」


 その言葉と同時に、純白の鎧を着込んだ数人の騎士達が応接間に入ってきた。その先頭には豊かな髭を蓄えた壮年の男性――ウヴァロの姿があった。


「――いくら王子とはいえ、王家の者に刃を向けるのは……大罪ですぞ。少々――事情を聞かせてもらえますかな?」


 ウヴァロの低い声が響き、ユーファの運命は決したのだった。


王子ピンチ。

次話でまたアレクさんパートに戻ります。


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― 新着の感想 ―
[一言] >王子ピンチ → (」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー!
[一言] 余裕ぶってた割には呆気なくオタついたね。王子様。 結局、双子の弟と大して変わりなかったということかな。
[一言] この国の王子は屑しかいないのか。 のしても、先に逝った方がまだまともな気もするが。 嫌だね、こう破滅願望強い屑は。
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