52話:商人ギルドの目を逃れて
その作業は、夜が明けると共にようやく終わりを迎えた。
「ルベウスさん、すみません無理を言って」
アレクが、眠そうなルベウスへと頭を下げた。サンドラは既にアレクの腕の中でスヤスヤと眠っている。
「かはは……良いってことよ。しかし、久々に徹夜すると堪えるな……もう俺も若くないか」
大きく伸びをするルベウスは疲れ切った様子だが、その表情は満足げだった。
「突貫作業だったが、良い物は作れたんじゃないか? ツルハシは初めて打ったが次はもう少し早く作れそうだ」
そう言って、出来上がったツルハシをルベウスがアレクへと手渡した。そのツルハシの頭部は黒い金属製で、赤い粒が所々に混じっていた。
「はい。これの量産型を採掘士ギルドにレンタルもしくは販売するのも良いかもしれませんね」
「……ギルドが絡むなら、商人ギルドに話を通した方が良いかもな」
「商人ギルド……ですか」
アレクは勿論その存在を知っていたが、正直言うと、あまり関わりたくないというのが正直なところだった。なぜならあまり良い噂を聞かないからだ。
毎月納める運営費が高額で、加入しないと営業妨害をされる、不当な価格で取引を迫られる……などなどだ。
アレクは出来る限り目立たず、細々とやっていれば、目を付けられる事もないだろうと思っていたが――
その考えをルベウスは甘いと一刀両断した。
「マテリアが有名になればなるほど、いつか必ず向こうから加入を迫られるだろうよ。今は騎士や冒険者の相手の商売しかしていないからまだ良いが、ピッケルや日用品と言った道具類に手を出すとなると、そうはいかねえ」
「……ですよね。ちょっと考えておきます」
「しかし、キーリヤか。火山活動が激しいとかで、今は確か採掘禁止時期だったと思っていたんだがなあ」
そう言って、ルベウスが煙草を吸い始めた。その顔には恍惚の表情が浮かんでいる。アレクは当然まだ未成年なので煙草を吸った事はないが、美味そうに吸うルベウスを見て、いつかは試してみようと密かに考えていた。
「採掘禁止時期ですか……となると話が妙ですね」
「俺も詳しくは知らんが……。まあ今は落ち着いたのかもな」
「ふむ……。では、改めてありがとうございました。代金は後ほど」
「おう。俺は寝るぜ」
アレクがツルハシを布で包み、抱えると、ルベウスの店の外へと出る。
「もう朝か……」
空は白けはじめており、まばらにかかる雲が陽光で微かに光っている。
アレクが自分の店へと足早に進むと、店の前でベルが待っていた。
「あれ、ベルどうしたの」
「お帰りなさいマスター。報告すべき事がいくつかありまして」
ベルの顔には何の表情も張り付いていないが、その声から、何となく緊急的な用件である事を察したアレクが頷いた。
「中で聞くよ」
鍵を開け中に入ると、アレクはツルハシをカウンターの上へと置いた。
「それで?」
「王宮を出入りする者を監視させていたのですが、その中に商人ギルドのギルド長であり、アルマンディ商会の会長でもあるアルマン氏がいました。先に結論を言いますと――アメシス様は騙されている可能性があります」
商人ギルドは存在しますが、加入が絶対ではありません。ただし、競合が多い武器屋やアイテム屋は加入しないと中々商売が難しいようですね。
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