51話:冷えて固まった形見
王都――【魔石屋アレキサンドライト】
「キーリヤ砂火山と言えば……確か、海と砂漠と火山が混在している場所だよね」
アレクが、いつか読んだ書物の知識を思い出す。荒れた海に面した火山であり、その周囲には砂漠が広がっている。火山へと続く陸路も海路も危険であり、今は多少安全なルートが確立されているものの、昔は辿り着けずに果てた採掘士も多いと聞く。
だが、それでも採掘士達がその火山へと出向くのには理由があった。
「その通りですマスター。各種宝石の原石、希少な鉱石の鉱脈に、キーリヤ砂火山でしか採れないと言われるラヴァライト。そのどれかを採掘出来れば一財産になるほどの価値があります」
「俺は……金がいるんだ。金があれば自由になれる! だから……」
アメシスの言葉に、アレクが頷いた。何やら事情がありそうだが、そこまで踏み込むべきかが分からない。店が繁盛するほどにそういうことを一々気にしていられなくなることを、既にアレクは痛感していた。
「ギルドで何を聞いたか分からないけど、採掘に最適な装備はまだ試作中なんだ」
アレクの言葉に、アメシスが分かりやすく落ち込む。
「ほんとかよ……俺、どうすれば……てっきりここにあると思って全部置いてきちまった」
「ツルハシも?」
アメシスが力なく首肯する。
「馬鹿じゃないの。採掘士がツルハシも持たずに何処へ行くのよ」
サンドラの言う通り、ツルハシは採掘士にとって必須の道具である。しかし、アレクが見る限り、アメシスは何も持っていなかった。
「ここに……なんか凄いツルハシがあると思って……それで……」
「本当にあるかどうかも分からないのに置いてくるなんて、迂闊すぎるわよ」
サンドラの言葉にアメシスがうなだれた。その様子を見て、アレクが口を開く。
「サンドラ、あんまり責めないであげて。ツルハシについては多分ルベウスさんに頼めばすぐに作ってくれるから……それに、採掘用のマテリアを付けてみるよ。時間がないから即席マテリアウェポンって感じになるけど」
「ほんとか!? そのマテリアなんたらが何か分からないけど!」
ガバリと起きて、アメシスが目を輝かせた。
「うん。でも出来るのは多分ギリギリ明日の早朝になるから、その時にまた取りに来て」
「分かった! あ、そうだ、金についてだが……現金はないから、これで頼む!」
そう言ってアメシスが腰のポーチから、古びた革袋を取り出した。
その中には黒い歪な形をした、所々に赤い粒が混じっている鉱石が1つだけ入っていた。それを見たサンドラが驚きの声を上げる。
「これ……ラヴァライトの原石だよアレク!」
「それ……俺の両親の形見なんだよ。売ればそれなりの金になるのは分かってたけど、売りたくなくて」
「じゃあどうして」
そう問うアレクの目をアメシスはその綺麗な蒼い瞳を向けた。
「決別だよ。それがずっと俺の事を縛っていた事にようやく気付いたんだ。ラヴァライトなら、俺がキーリヤに行って山ほど採掘するつもりだから、もうそいつはいらない……いらないんだ」
「そっか……うん、これならお釣りが出るぐらいだよ」
ラヴァライトの原石は、かなりの希少価値があり、売ればそれなりの値段にはなる。
「凄い装備、期待してるぜアレク! じゃあ、俺は他の道具を調達してくる! 今回の採掘依頼を仕切ってるアルマンディ商会が確か無料で貸し出ししてくれるって話だしな!」
そう言ってアメシスが立ち上がると、風のように去っていった。
「……どうするのアレク」
「早速このマテリアが使えるかもしれない」
そう言って、アレクは先ほど作り出した赤いマテリアを手に取った。
それは【分解】、とアレクが名付けたマテリアだった。エルフの里で見た【生態分解】をヒントに造り上げたのだが……その効果を試すのにもルベウスの協力が必要だ。
「ちょっとルベウスさんのところに行ってくる。ベル、留守番よろしくね」
「了解しました」
サンドラを肩に乗せ、アレクはいくつかマテリアを持ってルベウスの店へと向かったのだった。
アレク君も色々悩んでいるようですが、なんやかんや人が良いですね
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