50話:王子の暗い炎(王子サイド)
王宮内――【緑柱宮】
ユーファ第1王子の自室。
「ユーファ王子」
ゆったりとしたソファに座り、琥珀酒を飲んでいるユーファ王子に、1人のメイドが耳打ちする。
「【蠍の尾】からの定期連絡が途絶えました。おそらく全滅したかと」
「ほお……撃退されたって事か?」
「そこまでは。ターゲットの今回の遠征に、護衛は付いておりませんでした。本人の力だけで撃退できたとは思えません。おそらくは護衛を現地で雇ったか、エルフの協力を得たか……」
そのメイドの報告に、ユーファは嬉しそうな笑みを浮かべた。
「おいおい……相手はマテリアを生み出し、そして使いこなす奴だぞ? どんな暗愚な護衛だろうと精鋭となり、立ち塞がるだろうさ」
「……どういたしましょう?」
「お前や俺の関与がバレた可能性は?」
「まずないでしょう。【蠍の尾】は、絶対に主の情報を漏らしません。報酬もアゲート金貨ではなく、共通金貨で払っています。まず私まで辿る事はできないでしょう」
そう断言するメイドを見て、ユーファは嘲るような声を出す。
「……絶対はないぞ? 相手はマテリア遣いだ。用心しておけ」
そう言うものの、間違いなくこちらの正体には気付いていないだろうとユーファは踏んでいた。
なればこそ、このゲームは楽しめるのだ。
盤面の駒は……盤外の繰手に気付いてはならないのだ。そして王たる者は常に、繰手であるべき……そうユーファは考えていた。
「はっ……早急に始末します」
「間に人を3人ぐらい通しておけ。あとはそうだなあ……アルマンを呼べ」
ユーファは自分の考えにニヤリと笑った。強硬手段だけでは面白くない。
「アルマンディ商会の、アルマン様ですか?」
「そうだ。所詮は、ただの商人だ。揺さぶりをかければ……あっさり降参するさ」
「かしこまりました。1つだけ、よろしいですか?」
「なんだ?」
メイドが少しが間を置いて、口を開いた。
「王が秘匿するほどの力。始末するのは……少々惜しいのでは? ユーファ王子ならば上手く使いこなせましょう」
「興味ないね。あれば便利だろうし、マテリアは確実にこの王国の軍事力経済力を底上げするだろう」
「では……なぜ」
メイドの言葉にユーファは酒杯を傾け、飲み干すと――こう答えた。
「なぜかって? 決まっているさ。俺はこの国が……大っ嫌いだからさ」
ユーファの目の中では……暗い炎が燃えたぎっていた。
破滅的な願望を持つ人間が1番厄介ですね。道理も常識も通じません
更新はよ、続き気になる、おらもっと書けやごらぁ!
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