49話:砂漠のオアシスのような
王都――【魔石屋アレキサンドライト】
「んー、やっぱり我が家は落ち着くわね」
サンドラが特等席である、カウンターの端で丸まって日なたぼっこしながらのんびりとそう口にした。
「うん。仕事も溜まっているし、しばらくは忙しくなりそうだ」
「トリフェン達は既にアジトを確保し、今は獣人族のツテを使って裏社会の調査をさせています。基本的にマスターとの接触は一切させないつもりです」
ベルがテキパキと掃除をしながら報告するのを聞きつつ、アレクはマテリアを作成していく。そのマテリアの方向性を決めるべく、慎重に魔力を込めていき。
それにより魔力が魔石に蓄積されていき、徐々に姿を変えていく。
すると出来たのは淡い赤色のマテリアだった。しかし【強化系】のように球状ではなく、五角形の形をしている。
「んー? アレク、それなに?」
「ああ、これはね、試験的に作ってみたやつで――」
アレクが説明しようとした時、店の扉が開いた。
開けるのは明日からで、今日は閉店の看板を掛けていたはずだ。
「申し訳ございません。開店は明日からです」
「アレクって奴はどこだ!?」
ベルの声を無視して、店に飛び込んできたのは――アレクと同じぐらいの年齢の少年だった。
褐色の肌に、鮮やかな蒼色の瞳。少し癖のある髪の毛の下には、まだ幼さの残った、どこか高貴な雰囲気を纏った顔があった。
その蒼色の瞳に、まるで砂漠の中で出会った幻のオアシス……そんな印象をアレクは抱いた。
「えっと……僕がアレクだけど」
「お前か! お前、凄い装備を売っているんだろ! 俺に売ってくれ!」
少年がアレクのいるカウンターへと駆け寄ってくる。その蒼い瞳に、アレクは焦りがあるのが見えた。
「……誰に聞いたの?」
「おやっさん! おやっさん達が話していたんだ! 採掘に最適な装備を作る奴が王都にいるって!」
採掘。おやっさん。
その言葉から、少年が採掘士ギルド関係の子だと推測できる。
「……【水晶林】の採掘士ギルドで聞いたのかな?」
採掘士向けのマテリアを考えている、ぐらいの事しか言ってないアレクだったが、どうやら話がかなり大きくなっているようだ。
「そうだ! 俺はアメシス! 明後日から【キーリヤ砂火山】に行くんだけど……ガキだって馬鹿にされないようにすげえ装備を持っていきたいんだ!」
そう言って、アメシスが採掘士の証である採掘ギルドのギルドカードを取り出した。確かに、そこには採掘士ギルド水晶林支部の紋章と、アメシスの名前が書かれてあった。
「今日は閉店しています。マスターに用があるのなら明日出直してください」
ベルがそう言って、少年――アメシスをつまみ出そうとする。
「明日じゃダメなんだよ! キーリヤは遠いから明日の朝出発するんだ!」
首を掴まれ、ジタバタするアメシスにベルが非情な声を掛ける。
「では、諦めてください」
「……いいよ、ベル。話だけ聞く」
「……だそうです。大人しく座っていなさい」
そう言ってベルがアメシスを椅子に下ろすと、お湯を沸かしにいった。
「……お前のメイド、乱暴だな! 俺の家にいたメイドは……いや、なんでもない」
足を組んで生意気そうな声を出すアメシスを見てアレクとサンドラが目を合わせた。
「とにかく、俺はキーリヤで一山当てないとまずいんだよ! 頼むよ!」
そう訴えるアメシスを見て、アレクは溜息をついた。
どうやら帰ってきて早々、普通ではないお客さんの相手をする事になりそうだ。
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