45話:罠を掛ける
アレク達が通路から出ると、壁は再び何ごともなかったかのように閉じられた。
「旦那、大丈夫か?」
トリフェンが心配そうな声を出すので、アレクは笑顔を作り、頷いた。
「ありがとう。大丈夫だよ」
「……私は見なかったことにする。この塔に関しては深入りしない方がきっといい」
エスメラルダがジッと霊樹の方を見つめて、そう呟いたのだった。
「……帰ろっか」
サンドラの言葉と共に、エスメラルダとベルが先導し、アレク達が来た道を戻っていく。
しかし、アレクには解決すべき問題があった。
今回の遠征で色々とヒントを得た・王都に戻ってからは忙しくなりそうな予感がしていたアレクは、今のうちに用事は全部済ませておこうと考えていた。
「エルフの里にエスメラルダ様を送り届けたら……トリフェン、ちょっと頼みがあるんだ」
「あん? 頼み?」
アレクが殿を務めるトリフェンにそう声を掛けると、トリフェンが不思議そうな顔をした。
「うん。ちょっと――罠を掛けようと思って」
そう言って、アレクは悪い笑みを浮かべたのだった。
☆☆☆
リングアロー大森林、北部。
森の中、少し開けた場所に野営地が出来ていた。
「遅いな」
「……いくら土地勘があるとはいえ、あんな犬共に任せて良かったのでしょうか」
「奴らが失敗しようが死のうが、惜しくはない。それに相手はガキだ。犬でも出来る仕事だろうさ」
そう会話していたのは、複数人の男達だった。大陸西部に広がる砂原地帯に住んでいるとされる部族の衣装を身に纏っており、顔をそれぞれ布で隠している。
腰には三日月型の曲剣を差しており、背中には盾を背負っている。一部の男は小さな弓と矢を装備していて、丁寧に鏃へと黒い液体を塗っている。
そんな男達が、微かな物音に気付き、それぞれがすぐに武器を抜いて臨戦態勢に入る。
「俺だ」
そう言って、茂みから現れたのは、トリフェンとトパゾだった。
「――ふん、犬でも、人並みに仕事は出来るようだ」
リーダーらしき男が、その2人の獣人に捕縛されぐったりとした少年を担いでいるのを見て嘲笑った。
「ちっ……おい、残りの報酬を寄こせ。それと交換だ」
「他の奴らはどうした? 小動物とメイドがいたはずだ」
「殺したよ。必要なのはこいつだけだろ?」
「……ふん、所詮は獣か。まあいい。約束通り報酬は渡そう。おい、あれを渡してやれ」
リーダーがそう言うと、1人の男が金貨が入っているらしき革袋をトリフェンの足下へと投げた。トパゾがその中身を確認する。
「確かに、30万ゴルド入ってるっすよ兄――っ!!」
ヒュン、という風切り音に共に、矢がトパゾの腕に刺さった。
「ぎゃっ! 痛いっす!」
「て、てめえら!!」
「口封じをするのは当たり前だろ? 金も払わずに済むしな」
そう言って男達が、口角を上げ、武器を抜いた。
「ちっ! やっぱり最初から俺らは消すつもりだったか!」
「我ら、アサシンの流儀よ。我らの事を知る者は少なければ少ないほどいい」
矢がトリフェン達へと殺到する。
「ちっ……旦那の言う通りだったな」
トリフェンがそう言って木の陰に隠れ、担いでいた少年――アレクを下ろした。
「だから言ったでしょ? じゃあトリフェン、予定通りによろしくね」
そう言って、アレクが自分の身体に巻いているだけの縄を解くと、後方へと合図を送った。
「任せろ。あのメイドがいて、この武器があるならあんなやつらに――負けねえ」
そう言って、トリフェンが山刀を抜いた。その柄には2つのマテリアが輝いていた。
「行くぞトパゾ」
「うっす! 今度こそ良いところ見せますよ!」
2人の獣人が牙を剥きだしに――笑った。
暗殺者達VSトリフェン達
アレクとしては背後から襲われるよりも、自分から動いた方が良いと判断したようですね。
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