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44話:その幻影は母に似て


「ゆ、幽霊!? しかもあたしがいる!?」


 サンドラの声に、まるで反応するように、その女性とサンドラの幻影がゆっくりと通路の奥へと消えていく。


「あれは!?」


 アレクがエスメラルダに聞くも、彼女は首を横にふるふると振った。

 

「分からない。あんなところが開くなんて……」


 あっけにとられるエスメラルダをよそに、トリフェン達が騒ぐ。


「おいおい、どうするんだよあれ……絶対ヤバいやつだろ!」

「幽霊は無理っす!!」


 ジッと通路の先を見つめるアレクに、ベルが耳打ちする。


「あれは――()()()()()()()。実体はありません」

「うん。そんな気がしてた。あの通路は安全?」

「はい。スキャンしましたが、罠や魔物の類いは検知しませんでした。行きますか?」

「うん。なぜか、僕の事を呼んでいる気がする」


 そう言って、アレクが歩み出した。


「いやいや……やめとけってアレクの旦那……」

「そうっすよ! 呪い殺されますよ!」

「私も行かない方が良いと思うわ……」


 トリフェン達とエスメラルダの言葉に、アレクが頷いた。


「ベルは先行して。エスメラルダ達は万が一の事を考えて、外で待機して欲しいんだ」


 そのアレクの言葉に、エスメラルダが難しい顔をするも、了承した。トリフェン達は頼まれても中には入らないといった顔をしているので、確認するまでもないだろう。


「サンドラはどうする?」

「あたしも行く。だって、映像だか幽霊だか分かんないけど……同族を見るの初めてだから、気になる」

「だよね。じゃあ行こうか」

 

 ベルを先頭に、アレクとその肩に乗ったサンドラが進んでいく。


 灯りが、アレクの歩く頭上のみに点灯していく。前には、あの半透明の幻影が歩いている。


「明らかにこの通路は、古の未知の技術が使われています」

「だろうね。でも、なぜだろう。不思議と嫌な感じはしない」


 そして通路の先には――円形状の小さな部屋があった。


「ここは――」


 部屋の奥には、表にあった霊樹とは比較にならないほど巨大なコンソールが置いてあり、その先から生えている枝のようなケーブルには回路が刻まれており、青い光が行き交っている。


 そして、あの半透明の幻影がコンソールを操作していた。しかしその実体のない指は操作パネルに触れても何も起きない


「ここはおそらく……制御室でしょう。表のあれは、操作盤に過ぎません」


 そう言って、ベルが頭上を見上げた。


 そこには、天井の全てを埋めるほど巨大なマテリアが浮いていたからだ。


「あれが――本体か」

「はい。マスターが修復したのは、おそらく無数にあるマテリアの一つに過ぎません」

「凄いや……これ、どれほど古いか想像もつかないけど……1つも傷が付いていない」

「そんなの……不可能だよ。マテリアは使えば摩耗するはずなのに」


 サンドラの声を聞きつつ。アレクは推測する


「おそらく、この塔が【生態分解】によって吸い上げたマナを修復に当てているんだよ。外の奴にまでは回せなかったんだろうね」

「その可能性が大。マナが流れ込んでいるのが確認できます」

「……そういうやり方もあるんだね。複数のマテリアを組み合わせるってことか」


 アレクは、使えそうだな、と思った。これまではマテリア同士は干渉せず独立した物として使っていたが……効果を組み合わせる事で、その効果を更に良くする事が出来るかもしれない。

 

 なんて思考していると、サンドラが声を上げた。


「アレク! 見て!」


 操作をし終えた、半透明の女性が振り向いた。

 

 その女性は、色は定かではないが、長い豊かな髪をなびかせており、その顔は、どこかアレクに似ていた。


「母さんに……似てる」

「うん。でもちょっと違う」

「マスター……声が聞こえます」


 ベルがそう言うと、アレクとサンドラが耳を澄ませた。すると、どこからかノイズ混じりの音声が聞こえてくる。


「……ザザザ……テ…………ミング計……は順調の……ザザザ……うね……マ……濃度も一……準を満た……たよ……だ……あとは、量……型フォ…………トキ………パー達に委……しょ………こ……星にマテ……ア……光あれ……」


 そして、その半透明な幻影はアレク達の身体を通り抜け、通路を戻っていった。


「……今のは?」

「再生音声と思われますが……データが破損しすぎていますね。一応録音はしましたが――マスター! 短剣が!」


 ベルが珍しく慌てた声を出すと、アレクが腰に差していた短剣がひとりでに宙へと浮いた。


「マテリアが!」


 アレクの短剣の柄に埋め込まれていた無色透明のマテリアが光を放った。


「なに!?」


 サンドラの額の宝石も共鳴するように輝き――そして光が収まった。


 マテリアが光を失い、再びアレクの短剣へと戻っていく。


「マスター。計測不能の現象が起きました」

「母さんのマテリアが反応した?」

「分かりません…」


 ベルの困惑する姿を見て、アレクはこれ以上ここにいるのは危険と判断した。


「行こう。これ以上、ここには何もない気がする」

「うん……あたしもそう思う」

「了解」


 こうしてアレク達はその制御室を去っていったのだった。


 この時の出来事が、後のアレクの人生に強く影響する事になる。


一話ぶりの登場のアレクさんの短剣。

そして、マテリアを組み合わせるという技術のヒントをゲットしたアレクさん。更なるマテリアパワーをひっさげてそろそろ王都に戻りますが……その前にやることをやるみたいですよ


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「先日救っていただいたドラゴンです」と押しかけ女房してきた美少女と、それに困っている、隠居した元Sランクオッサン冒険者による辺境スローライフ



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― 新着の感想 ―
テラフォーミ…ジョージ…ジョージ…
[一言] なかなかいい展開です 次回が更に楽しみになりました 頑張ってください・ω・ノ
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