40話:ウルフブラザーズ(追跡者サイド)
アレク達の後方――700m付近。
「トリフェン兄貴……やっぱり止めましょうぜ。ここ、長耳共の聖地ですよ……呪われちまいます」
そう情けない声を出したのは、獣人――二足歩行する狼のような姿――の男だった。全身を茶色の体毛で覆われており、革製の鎧を身につけ、腰には刃が分厚く短い山刀を差している。足の間ではふさふさの尻尾が縮こまっていた。
「馬鹿野郎! 前金貰ったんだから、今さら退けるか! 呪いなんてあるわけがねえ」
そう言ってその獣人の男の頭をはたいたのは、同じ装備を纏っている、銀色の体毛の獣人――トリフェンだった。その顔には斜めに傷が入っており、威圧感を放っている。
「良いか、トパゾ。もう群れから離れちまった俺達が生きていくには金を稼ぐしかねえ。相手がいけ好かねえ人間でも金をくれるなら、客なんだよ。気に食わないがな。獣人を見下したような目で見やがって」
「……そっすね。やっぱりトパゾ&トリフェンブラザーズで一旗揚げるしかないっすよ!」
「なんでお前の名前が先なんだよ」
「痛っ! 殴る事はないじゃないっすか!」
そんな2人組が、追跡しているとは思えない暢気さで歩いていると――
「――臭うな」
「はい」
2人が一転、目を鋭くして山刀を抜き、前傾姿勢になる。それは獣人特有の構えであり、人間を遙かに凌駕する身体能力と膂力によって素早くかつ重い一撃を繰り出す事ができるという。
「――目標発見。戦闘開始」
2人の視線の先に――無機質な声と共に現れたのは、周囲の景色からやけに浮いているメイド姿の少女だった。
「あん? おいおい、ターゲットの連れじゃねえか」
「兄貴! チャンスですよ! 掠って、おびき寄せましょうや!」
「殺すなよ。無駄な殺生は好かねえ」
「うっす!」
そう言って、2人がクルリと山刀の刃を上向きにした。
だが、結果としてその行為は無駄だった。
「――生け捕りにします」
メイド――ベルの戦闘が始まる。
☆☆☆
「目標捕捉――ファイア」
ベルは左手のマテリア【マナバレット】を起動。【エレメンタルマナドライブ】で雷属性に変化させたマナを弾丸状にして射出。
「っ!! 避けろトパゾ!」
トリフェンが地面を蹴って迫る雷弾を間一髪避けるも――
「ギャアアアア!! 痺れるうううう!!」
まともに受けたトパゾが地面を転がり回った。
その隙に、ベルが接近。
「やらせねえよ!!」
跳躍したトリフェンが木の枝の裏側を蹴って真下に加速。山刀をベルの頭へと振り払う。
「――駆動強化」
ベルの目が赤く光ると同時に、右足が跳ね上がり、迫る山刀を迎撃。
「嘘だろ!?」
ベルの蹴りで手から弾かれた山刀が回転しながら飛んでいき、木の幹に刺さる。
トリフェンは空中で器用に体勢を変え、四つ足で着地。
「本気で行くぞ!――【ゼーヴォルフ】!!」
トリフェンが吼えると同時に、右手の爪に水へと変化されたマナを纏い、突進。
5本の水爪を纏った右手の一撃がベルに迫る。
「――無駄です」
ベルがスッと横にズレ、攻撃を回避。トリフェンの右手から放たれた水爪が轟音と共にベルの立っていた位置の後方までの大地を生えている木々ごと削っていく。
上から見れば、森にまるで、巨大な爪で引っかかれたような爪痕が残っていた。
「終わりです」
しかしそれを容易く避けたベルは、攻撃を放ち隙だらけになったトリフェンへと神速の手刀を振り下ろした。
「おいおい……強すぎだろ――お前!」
それだけを吼えると、手刀によって地面に叩き付けられたトリフェンが気絶。
「――制圧完了」
メイド服の埃を払う仕草をしつつ、ベルはそう呟いたのだった。
戦闘開始からわずか――52秒の出来事だった。
ベルさん、めちゃくちゃ手加減してますね。
次話でまたアレクさん視点に戻ります。
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