34話:空に森がかかる
王都南部――リングアロー大森林近郊。
「なんか良いのかなあ、のんびり旅になんか出て……」
アレクはこの道中、何度目になるか分からない大きな溜息をついた。
「良いんじゃないのー。アレクは何も悪くないし、あいつの自業自得でしょ」
サンドラが馬車の床の上で毛繕いしながら、のんびりと答えた。それをジッと見つめるベルはいつものメイド服で、側にはアレクの仕事道具が入った大きな鞄が置いてあった。
「そう簡単には割り切れないよ。少しの間だけど一緒に旅をしていたんだから」
「マスターが気に病む必要はないと判断します。既にあの出来事は――なかった事になっていますから」
「それが……余計にね」
ジェミニの襲撃から既に1週間以上経っていた。その後は怖いぐらいに平和だった。
アレクが聞いた話では、ジェミニは完全にいない者として処理されたそうだ。まるで――最初からそうするつもりだったとばかりに処理が進んで、セレスも疑問を抱いて独自に調べたそうだ。
しかし、その調査もすぐに直属の上司から警告を受けて中止せざるを得なかった。
ちなみに、ジェミニを殺したディアナについても一切お咎め無しだそうだ。本来、王族殺しは大罪であり、如何なる理由があろうと死刑なのだが……。
ディアナは密かに、国外逃亡、もしくは王宮を襲撃する準備をしていたと冗談半分で言っていたが、アレクは要求されたマテリアや念入りなメンテナンスからして、結構本気だったような気がしていた。
だが、結果としてジェミニが死んでも、何も変わらず、何も動かなかった。
アレクは後日訪れてきたマリンと共に、王都のすぐ外にある丘の上に小さな墓を建てた。アレクが密かに回収していたジェミニの剣を差して、それを墓標代わりとした。
その剣に付いている【筋魔両刀】のマテリアは完全に割れており、陽光を歪に反射している。
『私、聖女失格だわ』
そう呟いて去っていったマリンの背中をアレクは今でもふとした時に思い出すのだ。
それから数日後、エスメラルダから、〝里に帰るので準備出来次第すぐ来るように〟という旨の手紙が届き、アレクは準備をし、こうしてエルフの里へとのんびり旅をしていた。
旅費はなんとセレス経由でセラフィ――つまり王家から出された。理由は謎だが、お土産と土産話を楽しみにしているという言付けもあった。
「つまり僕は、国の代表として訪れるようなもんだよ?……流石に荷が重いや」
「アレクは大丈夫だよ。これまでも大丈夫だったし、これからも大丈夫。あたしもいるし、ベルもいるから」
サンドラがそう言ってアレクの肩に登ると、その頬に顔をすり寄せた。
それにアレクは思わず微笑んでしまう。
「ふふふ……くすぐったいよサンドラ」
「――理解」
そう呟いたベルがアレクの反対側に座ると、彼の頬に自分の頬を寄せた。
「あ、ちょ、ベル! 近いって」
「こうするのが好ましいと判断しました」
「いや、そんな真顔でやられても!」
アレク達が騒いでいると、御者が声を上げた。
「アレクさん――見えましたぜ」
「っ!! 本当に!?」
アレク達がその言葉で御者台へと駆け寄った。
前方には街道が伸びており、その先は――森があった。右を見ても左を見ても、緑が延々続いている。
そして森の木々の間からは――天を衝く巨大な塔が乱立していた。それらの塔の間には巨大な橋のような回廊が無数に掛かっており、その塔にも、そしてその回廊にも木々が生えている。
まるで――空にも森が生えているかのようにアレクは一瞬錯覚した。
「凄い……空に森がかかってる」
「あれが、リングアロー大森林の中で特にエルフの聖地として禁足地とされている――【群塔森林】だよ」
アレクは気を引き締めた。いくら王族に招待されているとはいえ、決して油断して良い場所ではない。
「ここで、降ります。これ以上近付くと、この馬車が攻撃を受ける可能性がありますので」
「――良い旅路を」
アレク達が馬車を降りた。
ベルが大きな鞄を持ち上げ、アレクは日用品や着替えの入った鞄を背負った。
「さあ、行こうか」
新章です! エルフの里でアレコレどったんばったん大騒ぎするとかしないとかです
霊樹とは? 対立している獣人族とは? モフモフケモキャラは出るのか!?
お楽しみに!
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