31話:彼は宝石
「悪い噂でないと良いですが……」
アレクはセラフィ王女に対してそう返すしかなかった。
セラフィはエスメラルダの隣に座ると、優雅に微笑んだ。
「勿論、良い噂ですわ。私の直下の騎士団である【蒼の獅子】の騎士達がここに来て急成長したのも全て貴方のおかげだと思っております」
「……僕は、ただ仕事をしただけですよ」
「でしょうね。ふふふ……素敵です」
嬉しそうに微笑むセラフィを見て、アレクはもうどうしたら良いか、正直分からなかった。
ただですら、良く分からない状況だ。無理もない。
「エスメラルダ。アレク様にも時間は必要です。準備が整い次第、里に向かわれるという事でよろしいのでは?」
「……分かったわよ。でもなるべく早くね! こっちも死活問題なんだから」
そんな2人の王女のやり取りを見て、アレクが控えめに声を出した。
「えっと……ちなみに里ではどういう問題が起こっているのです? それによっても僕の準備も変わりますし」
「……霊樹が死にそうなの。それに伴って民がみんな私と同じ症状を起こしかけていてね。それを解決するには……最高の宝石師でないと無理だとレガードは言ったわ」
「霊樹が死にそう……ですか」
それに、どう自分が関わってくるかピンとこないアレクだったが、おそらくマテリアに何かしら関連しているのだろう事は分かった。
「だから、悠長な事は言ってられないの。あんまり長い事は――待てないわ」
「……分かりました。出来る限り早く向かいます」
「ありがとうね。お礼は必ずするから」
「気にしないでください。レガードさんは僕の恩人です。彼の紹介なら無償で動きますよ」
アレクがニコリと笑ってそう言うが、エスメラルダが首を横にふるふると振った。
「ダメよ。商人相手にそういうことすると後々めんどくさいのはもう経験済みよ。ちゃんと働いてくれた分の対価は払うわよ。休業した分の補償もね」
「それは……ありがたいですが……」
「甘んじて受けてください、アレク様。私がそうせよとエスメラルダに言ったのですから」
にこやかに笑うセラフィにそう言われてしまうと、何も言えないアレクだった。
「では……早急に準備致します」
「お願いするわよ! そういえばセラフィ、良いの? こんなところで油を売ってて。お兄さんが久々に帰ってきているのでしょ?」
アレクはその話を聞いて訝しんだ。セラフィ王女の兄と言えば……第1王子のユーファ王子の事だろう。だが、かの王子は王都でも有名人であり、その噂が絶える日はないと言われるほどだ。
そんな王子が久々に帰還したという話は妙だし、どこかに遠征に行ったという話は聞いた事がない。
「……あんな男は兄でも何でもありませんわ。冒険者ごっこをしているだけの……ロクデナシです。父に与えられた大事な宝石をなくしたとか言って、帰ってきたそうです。情けないですわ」
話が読めないアレクだったが、深入りしない方が良い事ぐらいは分かっていた。
「ええっと……僕は店に帰って色々な準備がありますので……」
そう控えめにアレクは言ったが、セラフィもエスメラルダも、とんでもないとばかりの表情を浮かべた。
「――これから食事をして、色々とお話をお聞かせください、アレク様。私――宝石には目がなくて」
そう言って、微笑むセラフィにアレクは頷く他なかった。
その後、アレクとサンドラは2人の王女の話し相手を散々させられたのであった。
宝石(意味深)
勇者ジェミニは身内にもぼろくそのようですね。そしてジェミニの立場については何となく分かってくる感じになってます。登場人物それぞれの名前にはそれなりの意味があります。となると……
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