30話:2人の王女
王宮内――迎賓館。
「あ、アレク! 迷惑掛けたわね」
豪奢な部屋の中で寛いでいたエスメラルダがそう言って手を挙げた。
部屋の中へと入るとセレスが頭を下げた。
「エスメラルダ様。アレク達を連れて参りました」
「ご苦労さん! まあ座んなさいよ」
手招きするエスメラルダに言われるままに彼女が座るソファの前にアレクが座った。ベルとセレスはその後ろに立ったままだ。サンドラはいつもの様に肩の上にいて、キョロキョロと物珍しそうに部屋の中を見渡していた。
「改めて……ごめんなさいねアレク。私のせいで酷い目に合わせてしまって。まさか街中があんなにマナ濃度薄いとは思わなかったの」
そう言って、エスメラルダが頭を下げた。エルフが、しかも王族であるハイエルフが他種族に頭を下げる事は滅多にない事だということをアレクは知っていた。
「あ、いえ! すぐに拘束も解かれたので!」
「でも、迷惑を掛けたわ。セラフィちゃんに凄く怒られたのよ……王族の勝手な行動で割を食うのはいつだって無辜の市民だって」
「いえ……それよりも、僕にどういう用事があったのですか? レガードさんの紹介と確か言っていましたけど」
「そうなのよ。実は里が大変でさ。で、たまたま客人として里に来ていたレガードが、王都のアレクという宝石師なら解決出来ると言ってたのよ。だからいてもたってもいられずに、来たわけ。で、ここでたまたまセレスから、アレクの話を聞いて、すぐに会いに行ったわけよ」
「なるほど……」
とにかく、彼女は即断即決で行動力の塊であることは分かった。王族ならもう少し慎重に動いて欲しいと思ったアレクだった。
「とにかく、1度、里に来て欲しいのよ。口で説明しても分からないでしょうし」
「それは……レガードさんの紹介なら勿論協力したいのですが、里に行くとなると長期間お店を閉めなくてはなりません。それには、準備が要りますし、お客さんへその旨を伝えないといけません」
1週間ぐらいならまだしも、エルフの里となると、かなりの長旅になる。レンタルの返却や、まだ人数は少ないものの、マテリア購入者の為の定期メンテナンスの事を考えると、すぐに飛び出すわけにはいかなかった。
「あんまり悠長な事は言っていられないのが本音なのだけど」
不服そうにするエスメラルダを見て、アレクが口を開こうとすると――
「――ダメですよエスメラルダ。ワガママを言ってはいけません。」
そう言って、1人の少女が静かに部屋に入ってきた。薄い金色の髪の下には人形のように整った顔があり、ゆったりとした服を着ていた。何よりその瞳は宝石のように透き通った緑色で、アレクはその瞳から目を離せなかった。
セレスとはまた違った方向性で――美しい人だ、とアレクは素直に思った。
「こんにちは、セレス様。それに――アレク様。初めましてですね……私はセラフィ・アゲート。この王国の第2王女で……貴方の事は良く聞いていますわ」
そう言って、セラフィはアレクへと微笑んだのだった。
5話ぐらいに出た王女の登場です。キーパーソンになりますね。
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