2話:小さなはじまり
そこはアレクが野宿しようとしていた場所からほど近いところにある、路地裏の小さな店舗だった。
だが看板も外されており、店の中もガランとしていた。
「お爺さん、お店を畳んでしまったの?」
「色々あっての。商品も知り合いの商会に買い取ってもらったんじゃ。君が拾ってくれたのはそのお金じゃな」
「なるほど」
「儂は、長年ここで商売をやってきたが、もういい加減疲れてきての。最後に、のんびり世界でも旅しようかと」
「でも外は危ないですよ? 魔物もいますし……」
「ほほ……こう見えて若い頃は世界中を旅していたんじゃ。魔物ぐらいどうってことないわい」
老人がそう言って笑うと、古びた鍵を取り出した。
「これを君に譲ろう」
「え?」
「この店の鍵じゃ。奥は倉庫、2階は住居になっておる。好きに使っていい」
「いや、でも……なんで見ず知らずの僕に?」
アレクが不思議そうに聞き返す。
「さて……なんでじゃろうなあ。気紛れじゃ」
そう言って、老人がウインクする。そしてなぜか懐かしむような目でアレクの短剣を見つめた。
「僕はありがたい話なんですけど……やっぱりなんか話がうますぎて」
「じゃあ、こういうのはどうじゃ。これは君への仕事の依頼だ。儂が帰ってくるまでの間、この店を守るという大事な仕事じゃ。なんせ誰かが住まないと店は腐っていくからの。留守を任す代わりに、店舗も住居も好きに使ってもらって構わない。君にここを譲渡したことも一筆したためておくから、何かあればそれを見せればいい」
そう言って、老人はすらすらと紙に何かを書き始めると、最後に魔力を込めてサインをして、それを丸めた。
「これで良い。何か困ったら、バガンティ商会を頼るといい。レガードの後継ぎだと言ってこの書面を見せれば、無下にせんわい」
そういって老人――レガードがカウンターの内側にある古ぼけた椅子に座り、煙草を吸い始めた。
「商人にとって、自分の店を持つのは夢でな。こんな街外れの路地裏じゃが……儂にとっては可愛い息子のようなものじゃ。君になら、安心して任せられる。マテリアを扱った商売を始めてみるといい。きっと、上手くいく」
「なんでそんなこと分かるのよ」
サンドラが訝しんでそう聞くと、老人が笑った。
「君達の瞳が、それこそ宝石のように綺麗だったからじゃ。それだけで……十分じゃろ」
その言葉と共に紫煙が揺れた。煙草の甘い香りが店の中に漂いはじめる。
なぜかそれが妙に懐かしくて、アレクは少し泣きそうになった。
こうしてアレクは、レガードからこの小さな店舗を引き継いだのだった。
アレクのマテリア屋はここから始まる。
お爺さんは何やら、色々知っているようで……
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