27話:なんだかデジャブ
王都――街外れの路地。
「ふー、思ったより早く帰ってきたわね」
「1週間は掛かると思っていたからね」
アレク達が王都に帰還し、魔石屋アレキサンドライトのある路地を進んでいく。
「マスター、明日には店を再開しますか?」
「いや、持って帰ってきた分のミスリルでマテリアの生成をやってしまうよ。在庫を復活させないとね」
なんて話していると店の看板が見えてきたのだが……
店の前に何者かが――倒れていた。
「……なんかデジャブが」
「前もこんな事があったような」
「記憶データに該当なし、初期化前の出来事と判断します」
ベルがそんな事を言うので、アレクは肩に乗ったサンドラと顔を見合わせて小さく笑った。
「ディアナさんの人形だったりして」
「またー?」
なんて言っていると、その倒れている人影がはっきりと見えてきた。
「……えっと。本当に少女が倒れているよ!」
「同型機ではありませんね」
サンドラとベルの言葉を聞きつつ、倒れている少女へとアレクが駆け寄る。
「大丈夫ですか!?」
「うー」
倒れていたのは緑色の、少し癖のある髪の毛の少女だった。だが、アレクの目を惹いたのは、その比較的短い髪の毛の間から覗く――2つの尖った耳だった。
「え、エルフ!?」
サンドラがアレクの脳内に浮かんだ言葉を代わりに叫んだ。
「なんでこんな街中に……」
「エルフ――近年まで亜人種に分類されていたが、12年前に正式に人類として認められ、市民権及び自治権を得たとされる種族。主に大陸南部のリングアロー大森林を中心した森林地帯に住んでおり、排他的かつ攻撃的な種族の為か他種族との交流を避け、森の中で〝里〟と呼ばれるコミュニティを形成し、独自の文化、魔術および技術体系を今もなお継承している。草食かつ平和的で争いと肉食を好まないと誤解されているが、本来は狩猟民族であり、肉食である。血の気が多く荒々しい性格の戦士達が、対立種族であり、今もなお亜人種として分類される獣人族と血で血を洗う争いを繰り広げている。美男美女が多いが性格には難あり」
ベルがペラペラと説明をするのを聞き流しながら、アレクは少女の息を確かめた。というか最後辺りはなんか私感が凄く交じっている説明な気がしたアレクだった。
そのエルフの少女はベルの時と違って、息をしており、なぜかうーうー唸っていた。話し掛けても返事がないので、寝言なのか、もしくは喉か舌に障害があるかのどちらかだろう。
少女は見た事もない生地で出来た、やたらと露出の多い独特の衣装を着ているが、幼い顔付きに相応しく起伏の乏しい体型のせいかアレクは何の感情も抱かず、その少女を見つめていた。
鑑定眼を使わなくても、かなり上等な衣服だという事が分かる。となると、ただのエルフではない。
「ハイエルフかもしれない」
「ハイエルフ――エルフの王族の総称で通常のエルフと生物学的違いはな」
「ベル、運ぶの手伝って。店の前に放って置く訳にもいかないし」
「……了解です」
アレクは少しだけ不服そうなベルと共に少女を担ぎ上げると、店内へと運び込んだ。
「ふう……どうしたもんか」
アレクが回復魔術のマテリアを使おうかどうか迷っていると――エルフの少女の目がパチリと開いた。
「――アレクとかいう奴は何処!?」
第一声がそれであり、アレクは嫌な予感しかしなかった。
更に畳みかけるように少女が口を開こうとした瞬間。
ぐぅぅぅ……という盛大な、腹の鳴る音がエルフの少女から発せられた。
「腹が――減った」
そう言って、少女は再び気絶したのであった。
「帰ってきて早々厄介ごとだよ……」
アレクのぼやきに、サンドラもベルも頷く他なかった。
エルフっ子(腹ぺこ属性)の登場。どうやらアレクを尋ねて来たようですが……。
ちなみにベルの中にあるデータバンクは誰が入れたか分からない偏った知識が沢山詰まっています。あの説明をする時だけ、ポケ〇モン図鑑みたいな音声になるという裏設定を今思い付きました。
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