22話:不穏な追跡者
「じゃ、張り切っていこうか」
「了解です」
「レッツゴー!」
採掘士ギルドでもらった採掘許可証を首に掛けたアレクが水晶林の中を進んでいく。
その両手には、細長い短剣が握られていた。
「マスター、それは?」
「これにはね、【魔力感知】のマテリアを埋め込んでいるのさ。僕もある程度、魔力……つまりマナの流れは見えるけど、流石に地面の下まで分からないからね。このマテリアを埋め込むことで、一定量の魔力を感知すると、刃が震えて知らせてくれんだよ。2本使えば、結構な範囲をカバー出来る。採掘士の間では主流なやり方だそうだ。まあ彼らはマテリアではなく魔術を使うようだけど」
「理解。つまり反応がある付近はマナ溜まりが地表近くまである――よってミスリル化したクリスタルがある可能性が高い」
「その通り!」
「宝石とかクリスタル探しならあたしも手伝えるよ!」
サンドラが、えっへんとアレクの肩の上で胸を張った。
「頼りにしてるよサンドラ」
サンドラは宝石獣と呼ばれる種族であり、特に宝石や鉱石類を探す事に関しては特殊な力を持っていた。
「むむむ~、カーバンクルサーチ!」
サンドラの額の宝石から、不可視の波長が放たれた。その波によって、周りの水晶がまばゆい光を放つ。このように反応する物があれば、それは宝石や鉱石類の可能性である事が高いのだが――
「んー、反応がありすぎて役に経たないかも」
「魔力探知によると――東の方に少し流れがありそうだ。そっちに行ってみよう。ベル、周囲の警戒よろしくね」
「了解」
そのままアレク達は水晶の木々の間を抜けていく。生えている草まで水晶化しており、アレクはパキパキと靴の裏で砕ける音と感触が心地良かった。時々、落ちている綺麗そうな水晶を拾ってはポーチへと入れていく。何かの研究に使えるかもしれない。
踏んでも、1日も経てば土の中の魔力によってまた育つので、遠慮無く踏みしめて、進んでいく。
☆☆☆
そんなアレク達の歩いた跡を、追う者がいた。
「……やめようぜ……あのメイド、ヤバいって」
「うるせえ! あんなガキにやられっぱなしでいいのか!?」
それは通りでアレク達にやられたあの2人組の男だった。武装を新たに、それぞれが安物の鉄製の鎧と剣を装備していた。
「良くねえけどよ……あれ、絶対暗殺者かなんかだって」
「……ふん、暗殺者だか何だか知らねえが――アレには勝てねえよ」
「アレって……こないだ見付けたアレか? おい、流石にマズイんじゃ」
「うるせえ! 先回りするぞ! あいつらどうせ魔力探知を使っているだろうから丁度良い……きっと騙されるさ」
この林の事を熟知している男達が足早に進んでいった。
その先は窪地で、先日、男達が見付けたばかりのクリスタルの鉱床になっている。
そこには手付かずのクリスタルが乱立しており、採掘士でなくても思わず歓喜の声を上げるほどの宝の山だ。
だからこそ――男達は知っている。なぜこんな林の入口近くにある鉱床が手付かずのまま残っているのかを。
特に、その中心地にある巨大なクリスタルは不思議な輝きを放っており、間違いなくミスリル化したクリスタルである事が分かる。
「どうするんだよ」
「刺激する。アレはそう簡単には起きないからな。ちょっと刺激すれば、周囲を警戒する為に魔力を放つ。するとどうなると思う?」
「魔力を探知しているガキ共が――反応するってことか!」
「素人っぽかったからな。くくく……ここを目の前にしたら我先にと掘り出すさ。あとはアレが勝手に始末してくれるのを見てれば良い」
「うっし! やるか!」
男達が慎重に、そのクリスタルが乱立する窪地へと入っていく。
それが――命取りとなる事も知らずに。
1級フラグ建築士の男達の明日はどっちだ!?
次話で、男達の罠である例のアレが登場します。アレって一体なんなんだ……。
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