20話:魔石を採りにいこう!
王都――魔石屋アレキサンドライト、店内。
「俺は【筋力強化】だ!」
「私は、この【マナ生成】にします。2週間レンタルのがお得なのね。だったらそうしますわ」
「えーっと、回復魔術が使えるようになるマテリアがあるって聞いたんですけど……」
アレクの店は、ディアナとの契約後、徐々に客が増えていき今では連日、冒険者や騎士達が訪れる店になっていた。
アレクはベルとサンドラの協力を得て、何とか店を回していたが――ついに、怖れていた事態に直面する。
閉店後、ベルが掃除をしている間にアレクは帳簿を付けていたが、売り上げはすこぶる順調だった。ほとんどがまだレンタルだが、ディアナとの契約のおかげでまとまったお金も入るようになり、安定しはじめた。
しかし、問題がないわけではなかった。
それは、店内を見れば一目瞭然だった。
「随分と……減ったわねえ」
サンドラが、隙間だらけになったショーケースに顔をくっつけてしみじみそう呟いた。
「んー、ここまで一気にレンタルのお客さんが増えると……在庫がね」
そう。レンタルの気軽さが逆に徒となり、マテリアの在庫が一気に減ったのだ。
勿論、ある程度は想定していて、売れ筋のマテリアについては予備を作っていたのだが……。
「まさかこんなにお客さんが来るとはなあ」
それは嬉しい悲鳴だったが、そろそろ、客が希望するマテリアが在庫切れを起こす可能性が出てきた。
もしそうなると、その客がまた次回来てくれるかどうか分からない。
だが1度レンタルさえしてもらえれば、必ず返却しに店にやってくる。すると、違うマテリアをまた試したくなり、またレンタルする――そういう流れをアレクは作りたかった。だが目当てのマテリアがないと、それも起きなくなる。
それだけは何としても避けたかった。
「魔石がなあ」
そう。マテリアの原料となる魔石が、この王都では中々手に入らないのだ。
「魔石とは、何でしょうかマスター」
ベルがそんな事を聞いてくるので、アレクが説明する。
「魔石ってのは実は凄く範囲の広い言葉でね。要するに魔力を秘めた物質の事なんだよ。一番代表的なのは、やっぱり魔物のコアだろうね。強い魔物を倒すと、まれに体内から見つかる魔力の核。これなんかはマテリアの材料としては最適なんだ」
「理解。でしたら、魔物を狩る冒険者や騎士達であれば、たくさん所有しているのでは?」
「それがね……コアは他に使い道がないんだよ。せいぜい……魔術師用の杖の宝珠に使うぐらいなんだ。だから冒険者も騎士もわざわざそれを拾って持って帰ったりはしないのさ。大した金額で売れる訳でもないしね。それだったら牙とか角とかの方がよっぽど高く売れる」
「では、冒険者にコアの収集を依頼するのは?」
そう。冒険者とは、いわば民間人が気軽に使える武力、といった側面があり、国や街といった公的機関からの任務しか受けない騎士団と違い、気軽に依頼を出せるのだが……。
「依頼料が高いんだよ。特に魔物のコアはそれ自体が中々手に入らないし、危険な魔物を倒す必要があるのでどうしても依頼料が上がってしまう。そうすると、マテリアのレンタル料と値段を上げざるを得ないし、それは出来ればしたくないんだよねえ……」
悩ましいところだ。1番手っ取り早いのは、おそらく複数の冒険者に魔物のコア集めの依頼を出すことだろうが、それで赤字になっては意味がない。アレクは商売の難しさを改めて実感していた。
「魔物のコア以外の原材料の候補は?」
「あとは、鉱石かな。大地に流れるマナストリームの付近で産出される鉱石には時々、魔力が籠もった状態の物が発掘されるんだ。これらを全て【ミスリル】と称しているんだけど、これもマテリアの原材料になる」
「ふああ……。ミスリルはミスリルで買おうと思うとべらぼうに高いのよねえ……なんせ武器や防具の素材として凄く人気だし」
サンドラがあくびをしながら、アレクの説明を補足する。ミスリル自体はおそらくルベウスに言えば仕入れる事は可能だが、やはり原材料費が掛かりすぎる。
「あとは、霊樹になる果実とか……竜の卵とか……ゴーレムの核とか」
「……どれも希少な物ですね」
「そうなんだよ。勇者パーティにいた時は、魔物を常に倒していたから、魔石には困らなかったんだけどね」
今考えると、マテリアを作る事だけを考えれば、あれはあれで悪い環境ではなかったとアレクは思った。
「で、あれば……やはりご自身で採取する他ないのでは? その中であれば【ミスリル】を発掘するのが一番危険性が少なく、かつ場所も特定しやすいかと」
ベルの言う通りだった。ミスリルの取れる地域は限定されている分、周知されている。危険な魔物は当然それ相応に危険な場所にいる事が多い。その他の素材についても、気軽に行ける場所にはない。
「だよねえ。店をしばらく閉めなきゃいけないけど……」
「最近、アレクはずっと店に籠もりっぱなしだから、丁度良い気分転換よ。資金も余裕があるし」
「そうだなあ。護衛もベルがいれば問題なさそうだしね」
本来なら冒険者を雇う必要があるが、ベルがいるなら大丈夫だろう。なんせS級冒険者であるディアナがその強さを保証してくれているのだ。
「よし、じゃあ明日からお店をしばらく閉めて、ミスリルを掘りにいこうか」
こうして翌日――魔石屋アレキサンドライトの扉の前にはこんな張り紙がされていた。
『マテリアの原材料採取の為、1週間ほどお休みします。つきましては現在貸し出し中のマテリアのレンタル期間を、無料で延長をいたします。ご理解ご了承のほど、よろしくお願いします――店主』
というわけで、原材料を探そう編が始まります。アレク達の課題としては今後いかに安定して安く原材料を仕入れるかですね。店舗経営でも重要な部分です。
無事に終わると良いですねえ……。
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