18話:赤き乱入者
ジャンル別1位、総合2位になりました!
応援感謝です!
「――掃除完了。次の命令を」
「えっと……ちょっと休憩しよっかベル」
アレクが苦笑しながらそう言うと、メイド服を着た少女が箒を仕舞い、お湯を沸かし始めた。
「マスターの好みは、紅茶を少し温めでミルクたっぷり。修正があればどうぞ」
「あたしはミルクだけね~」
「それでいいよ。ありがとうベル」
「かしこまりました」
アレクは、起動させてしまった少女型の人形の扱いに困った結果――未知のマテリアの研究の為と言って、そのまま小間使いとして家に置く事にしたのだった。
そして、背中に書かれていた――【アリス式魔導自律人形ベルヌーイ7656τ型】という刻印を見て、彼女をベルと名付けた。
ちなみにメイド服はなぜかこの店の二階にある住居のタンスに入っていた。
おそらくは、レガードが住んでいた時のメイドが使っていたものだと思われるが……。
「マテリアの作成と研究に没頭出来るから便利だけど……」
ベルは極めて優秀だった。言えばなんでもやってくれるし、全ての作業が恐ろしく速く、そして精密だった。何より人形とは思えないほどその動きは滑らかで、淀みがない。
その技術力に、アレクは舌を巻くしかなかった。
「持ち主が怒鳴り込んできても、あたし知らないからね」
「だよねえ……」
「現在、当機の所有権はマスターにあります。仮に前マスターが来たところで、当機のプライオリティはマスターがトップなのでご安心を」
そう言ってベルが紅茶の入ったカップをアレクに差し出し、サンドラ用の水飲み用の器に温めたミルクをたっぷりと注いだ。
「ははは……返せと言われたらどうしようか」
「即座に排除します」
「荒事はやめてね……」
「――努力はします」
なんて会話していると――店の扉が開いた。
「――邪魔するぜ」
そう言って入って来たのは、黒いロングコートを着た、まるで炎のような色の赤髪をなびかせる美女だった。
背が高くすらりとした体型のわりに、出るところが出ている女性らしいスタイル。アレクは大胆にはだけられた胸元から思わず、目を逸らしてしまう。
つり目がちの大きな瞳は髪色と同じく赤く、顔には邪悪そうな笑みを浮かべていた。
アレクはなんとなく、セレスさんと真逆の人だ、という印象を抱いた。
「いらっしゃいませ。どういったご用件でしょうか?」
ベルが、接客モードでその赤毛の美女へと声を掛ける。
「くはは……おいおいおい……マジかよ。マジですか。傑作かよ」
すると、その赤毛の美女が笑いだした。
「……? 言っている事が理解しかねますが」
「くくく……まさかまさか、起動のみならず、初期化までされちまってるとはな。あのお前がメイド服を着て接客なんて――何の冗談だ、〝ドレッドノート〟」
その瞬間――赤毛の美女から膨大な殺意が放たれ、店の中に溢れる。
「っ!! マスター、逃げてください」
ベルが飛び退くと臨戦態勢に入り、赤毛の美女へと構えた。静かに、【エレメンタルマナドライブ】を完全起動させ、炎属性のマナを右手に集中させる。
「めちゃくちゃマナの流れがスムーズだな。――性能が10……いや20%は向上している。おい、そっちのガキ。お前がチューンしたのか?」
そう言って、赤毛の美女がアレクへと視線を向けた。その凶悪な視線を受けて、アレクが口を開いた。
「……それが何を示すかは分かりませんが、ベルのマテリアを修復し、彼女を起動させたのは僕です」
「マテリア……? ああ、魔力珠をそう呼称しているのか……なるほどなるほど……ん? お前まさか……魔力珠を売っているのか?」
赤毛の美女がショーケースに並ぶマテリアを見て、目を見開いた。すっかり殺気は無くなってしまっているが、ベルはいつでも動けるようにと構えている。
「へ? あ、はい」
「……ははは。嘘だろお前。【A・A】を作れるのか」
「えんしゃん……なに?」
サンドラがそう答えると、赤毛の美女がカウンターへと駆け寄った。そのあまりの速さに、ベルでさえも反応できなかった。
「――幻獣だ。幻獣がいるぞ。おいおい、なんで幻獣がこんな街外れのチンケな店の中にいるんだよ」
「な、ななな何よ!」
びっくりしたサンドラがアレクの肩の上へと避難する。
「マジかよ……ここは神話の世界か? 幻獣を連れたアーティファクトメイカーが魔力珠を売っているなんて……」
アレク達をジッと見つめる赤毛の美女に、2人はどうしたらいいか分からなかった。
「あの……貴方……なんですか」
思わずそう言ってしまったアレクに、赤毛の美女がニコリと笑った。犬歯が見え、それは笑顔というより、獲物を前にした獰猛な肉食獣を思わせた。
「いやあ……すまんすまん。久しぶりに取り乱したよ。というわけでオッス、あたしはディアナ、しがない冒険者だよ。よろしく、あー、お前名前なんだっけ……まいっか、よろしくな!」
そう言って赤毛の美女――ディアナがアレクの手を無理矢理握って、上下にブンブンと振った。
「えっと……僕がアレクです。こっちがサンドラです」
「そうかそうか。アレクにサンドラか。よろしくな! ちと、色々話を聞かせてくれや。あー、その代わりにドレッドノートはお前にやるからさ」
その言葉に、アレクは確信したのだった。
「貴方がベルの……持ち主だったんですね」
この新キャラについても作者の趣味です!! 赤毛の強いお姉さんは正義。
彼女については次話にて。
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