17話:魔導人形はマテリアの夢を見るのか
アレクがそれに気付いたのは、朝、店の前を掃除しようと外へと出た時だった。
「っ!! 大変だ!!」
店の扉の前に――銀髪の少女が倒れていた。
「大丈夫ですか!?」
「ふああ……どうしたのアレク……朝っぱらから騒がしい……」
少女の側にしゃがむアレクにそう声を掛けながら、サンドラがとてとてと歩いてくる。
「……行き倒れ?」
少女を寝ぼけ眼でサンドラが不思議そうに見つめた。
「分からないけど……息をしていないんだ!」
「死んでるの!?」
「とにかく中に運ぼう!」
アレクが少女を抱えて、店の中へと運び込む。しかし、やはり息をしている様子はなく、鼓動も感じられない。
「ねえ……やっぱり……死んでいるんじゃない?」
「……衛兵を呼んでくる」
そう言って、駆け出そうとするアレクはそこでようやく気付いた。
「あ……れ……?」
少女の、目を背けたくなるほど破壊された両足から――バネや歯車が覗いている。
「なに……これ」
サンドラもそれに気付き、近付いてクンクンと匂いを嗅いだ。
「……油と鉄の匂い……アレク……これ……人間じゃない」
「ああ……これは……人形だ」
アレクはそう気付いた瞬間に、鑑定眼を使った。
「――魔導人形……のようだけど……」
「魔導人形? なにそれ」
サンドラの言葉にアレクは首を横に振った。鑑定眼は万能ではない。自分の知らない物については名称は分かるものの、それが何を意味するかまでは読めない。
ゆえに、アレクは知識を増やすべく、色々な職業の人の話を聞いたり、書物を読んだりしているのだが――年のわりに豊富なアレクの知識の中には、魔導人形なる単語はなかった。
「でもそれよりも……もっと驚くことがあるよサンドラ」
「驚くこと?」
「この子には――マテリアが埋め込まれている」
「えええええ!?」
☆☆☆
アレクは慎重に少女を店舗の奥にある作業台に乗せた。
見た目だけで言えば、完璧に人間だ。着ている服も、どこかの貴族令嬢を思わせるようなワンピースドレスであり、かなりの上等品だが、あちこちが焦げたり、擦り切れたりしていた。
アレクはその少女の身体に触れないように手を翳すと、魔力を込めていく。
すると、少女の身体の上に――マテリアが浮かび上がってくる。
「ほんとだ……これ、マテリアだよ」
サンドラが驚きの声を上げる。
「うん、まさか僕以外にも作れる人がいるなんて。でもこれ――」
少女の両手両足にそれぞれ1個ずつマテリアが埋め込まれていた。だが、何より――その少女の薄い胸の上に、アレクがこれまで作った事も見た事もないほど、大きなマテリアが2つ浮かんでいた。
「凄い……こんな大きなマテリア……初めて見た」
「ありえないわ。だってこんな大きさの魔石は……存在しないはずよ!」
「うん。鑑定眼を使ってみよう」
そう言ってアレクはそれぞれのマテリアに鑑定眼を使っていく。
「――凄いや。見た事も聞いたこともないマテリアばかりだ」
「なになに!?」
「まず、右手のマテリア。【マナブレイド】って名前だけど……なんだろうねこれ。左手は、【マナバレット】だし。マナって事は魔力に関係する何かだろうけど。で、両足には、【駆動強化】。多分、筋力強化に近い物だと思うけど……それより、この胸の2つのマテリア……1つは【エレメンタルマナドライブ】。それが何かさっぱり分からないし、もう一個にいたっては【魔導型自律知能コアA・L・I・C・E】……だってさ」
「……良く分からない事が良く分かったわ」
「同感だよ。でも、このマテリア……凄く古い。修復を何度かした形跡があるけど、傷だらけな上に、ヒビが入っている」
「どうするのアレク」
「……修復してみよう。もしこの人形がマテリアを動力としている、と仮定するならば……修復して魔力を注げば……また動くはず」
アレクは、そう言いながらも半ば自分の仮説が正しい事を確信していた。
「いきなり襲ってこない……?」
「分からない……」
だが、アレクは自分がこのままこのマテリアに触れずにいることが、出来るとは思えなかった。初めて出会った、自分と母親以外の者が作ったマテリア。
動いているところが見たい。どういう効果なのかを見たい。
その知的好奇心に、アレクは抗えなかった。
アレクは慎重に、胸の上の2つのマテリアへと魔力を込め、修復していく。それは徐々に輝きを取り戻していき――
「……ふう」
アレクが息を吐くと同時に、少女の中へと修復されたマテリアが沈んでいく。
同時に、何か細かい機構が動き始める音が鳴り始め、魔力の流れが少女の身体を巡っていく。
「見て! アレク!」
サンドラが指差す先。破壊されていた少女の両足が――ひとりでに修復されていく。
「凄いな……どういう理屈だろ」
「っ!! アレク!」
サンドラの声と共に――少女が目を開いた。そのガラス玉のような瞳に赤い光が灯る。
そして少女はバネ仕掛けのように上半身を持ち上げると、アレクの方をジッと見つめた。
「えっと……おはよう?」
そんなアレクの挨拶に、少女は無表情でこう答えたのだった。
「――初期化及び再起動完了。マナドライブ起動のマナパターンと一致を確認、登録完了。ご命令を――マスター」
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