12話:憂鬱な任務
カランカランと、扉の鐘が軽快に鳴る。
「いらっしゃーい!」
サンドラが嬉しそうにカウンターの上で声を上げた。
アレクもカウンター内での作業を中断し、扉の方へと笑顔を向ける。
「あのお……アレク……さん? は……」
入って来たのは、セレスと同じ鎧を着た青年だった。
「いらっしゃいませ。僕が店主のアレクです」
「そして私が看板のモデルであるサンドラよ!」
サンドラが後ろ脚で器用に立つと、腕を組んで満足そうな表情を浮かべていた。どうやらよほど看板が気に入ったようだ。
「あはは……こんにちはアレクに……サンドラちゃん。僕はヘリオ、見ての通り騎士だよ」
その若き騎士――ヘリオは明るいオレンジ色の髪の下に柔和そうな顔があり、全体的に細くどこか頼りない印象を抱かせた。背中には短槍を背負っており、右手には籠手と一体化した小さな盾を装備している。
アレクはその小盾に刻まれた、吼える青い獅子の紋章を見て、すぐに気付いた。
「もしかしてセレスさんのご紹介ですか?」
「あれ? なんで分かったの?」
「その盾の紋章、【蒼の獅子】の物ですよね」
「ああ……なるほど。流石は、セレスさんが珍しくベタ褒めした人なだけはあるね。まさかこんな若い店主だとは」
「あはは……それで、セレスさんのご紹介ということは、やはりマテリアをお求めですよね?」
「ああ。実は明日から、騎士団のとある任務に向かうんだけど……それがちょっと厄介というか個人的に苦手な任務で」
そう言って言い淀むヘリオに、アレクは椅子を勧めた。
「どういった任務でしょうか」
「ありがとう。王都の北にある廃墓地は知っているかい?」
椅子に座ったヘリオがそう言うと、アレクは少し考えて答えた。既に、大体の話は掴めたが、まずは話を聞くことにした。
「ええ。今は使われていないとか」
「そうそう。それで、最近は聖教会の連中が浄化をサボっていてね。定期的にアンデッドが湧くんだよ。で、放っておくと危険だからと騎士団にアンデッド討伐の任が下ってね。みんな嫌がる任務だから大体僕達みたいな下っ端が行かされるんだ」
「アンデッドは厄介ですね。負のエネルギーが充満している場所ですと、物理的に倒しても復活する上に、毒や呪いなどの状態異常を付与してきます。更にレイスなどの霊体系の魔物がいる可能性を考えれば、魔術師や聖職者がいないと正直戦いたくない相手です」
すらすらと答えるアレクを見て、ヘリオが驚く。たかが商人と侮ってはいけないようだ。
「詳しいね。元冒険者かい? いやその年でそれはありえないか」
「ふふふ……秘密です。つまり、ヘリオさんは対アンデッドを想定したマテリアをお探しということですよね?」
「そうなんだよ! セレスさんに、【耐毒】のマテリアを付けてこいって言われまして。レンタルならば僕の安月給でも払えると」
「そうですね……対アンデッドでしたら、こういったマテリアがオススメですね」
そう言ってアレクが取り出したのは――
・【耐毒】
・【耐呪】
・【聖属性魔術】
・【火属性付与】
の4種類のマテリアだった。
「効果については耐毒、耐呪、聖属性魔術は分かると思います。火属性付与は、武器に火属性を付与することで、斬るだけで相手を燃やす事が出来るんです。言わば、付与魔術【エンチャントフレイム】の永続版ですね」
「……凄い!! これを全部付けたらアンデッドなんて怖くないな!」
喜ぶヘリオだったが、アレクは浮かない顔をしていた。
「セレスさんから聞いているかどうか分かりませんが……結論から言うと……これらをヘリオさんの装備に全て付けるのは――不可能です」
「え?」
「ですが、心配しないでください。丁度、アンデッド討伐にぴったりな新商品があります」
そう言って、アレクは笑みを浮かべると、カウンターの中から――1本の槍を取り出した。
槍の正体とは!?
次話にてお披露目です。
マテリアは実は少しだけ制限があったりします。詳しくは次話にて説明があります。それを解決する為にアレク君はあれこれ試行錯誤していたようですね。
更新はよ、続き気になる、おらもっと書けやごらぁ!
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