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Electro Signal  作者: 笹霧 陽介
第一章 貧民街統一
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5

 あれから二週間経った。

 三日経ったあたりから俺達ストレイキャッツの本拠地神奈川区画にも噂は広がり、何度かグループに対して戦いを挑まれた。

 小さな抗争は基本的に元レッドナイツのメンバーに頼んでいるが、俺達に直接挑んでくる者も少なくはない。

 大抵は異能力高火力隊に任せておけば解決し、ストレイキャッツの傘下に入るか、グループを解散するかになる。

 数グループを飲み込んだ俺達はかなりの大きさになっていた。


「何だか不思議な気分ですね。つい二週間前までは十二人で、それぞれの隊の構成人数も四人程度だったのに今では高火隊も三十人を越える人数に……」


 井川(いがわ)の言う通り確かに増えてきてはいるが、俺が思っていたよりもシグナルエラーとは貴重な存在なのかもしれない。

 六千人近くいる中で能力者はたったの三十人程度。

 五千人以上は何の能力もない、または潜在的な能力に気付いていない普通の人間なのだ。

 能力が使えなければ無いのと同じだ。

 異能力者を集めるのはまた別の機会としても、今の俺達には圧倒的に武器が足りていない。

 いずれ都心に喧嘩を売ろうとしているのだから、軍に対抗出来るだけの力が必要だ。

 そのためには必ず必要なものがある。


「……お金が足りてないんじゃない?」


 心を見透かされたようで嫌だが、満月の言う通りだ。

 資金不足はグループ運営にとって大きな問題となる。


「よし、金を稼ぐか」


 神奈川区画四十八区ストレイキャッツ本部。

 構成人員が増えたという事で、こうして一週間に一度の幹部会を開くことにしている。

 リーダーの俺、副リーダーの満月(みつき)、井川、それに新しく加わった赤坂(あかさか)の三人、異能力高火力隊からは隊長の(ひいらぎ)、副隊長として元レッドナイツの中平(なかひら) 楊泉(ようせん)が参加。

 隠密機動隊からは隊長の木枯(こがらし)と、新たに加わった少数派グループ「花鳥風月」の元リーダー嵐田(あらしだ) 紅葉(もみじ)が。

 通常兵器隊からは三人……満月が兼ねているので正確には二人になるのかもしれないが、隊長の刈谷、副隊長の満月、同じく副隊長の元レッドナイツ幹部桜木(さくらぎ) (りょう)が集まっている。

 幹部会は基本的にこの十人で行い、決まった内容を各隊メンバーに報告する仕組みをつくった。

 通常兵器隊は人数が多いため、百人を一班として五十班まで分けてそれぞれの班長に決定事項の通達を任せてある。

 そんな幹部会では今、グループ基礎運営費をどうやって得るかについて討論されている。

 様々な意見が出ているが、これといった意見は未だ出ていない。


「銀行を襲うぞ」


「「「へ……?」」」


 幹部会に集まっていた、新メンバー三人の声が打ち合わせ済みかのように見事に被った。

 幹部会のストレイキャッツにとっての新メンバーは四人だが、赤坂は流石と言うべきか目を(つむ)り腕を組んだまま微動だにしていない。

 元からいたメンバーにとって俺の突拍子もない発想には良くも悪くも慣れているのだろう。


「銀行なんて都心部にしか」


 言いかけた桜木がそこで何かに気付いたように自ら言葉を切り、数秒前よりも大きく目を見開いた。


「そんなの無理ですよ!」


 俺の立案する計画を聞かされたことがある奴が必ず通る道だ。

 別に俺は皆を驚かせようとは全くもって思ってもいないのだが、絶対に驚かれ、場合によっては頭がおかしいのではと哀れみの視線を送られる時さえある。

 まぁ俺はそこまで気にしてはいないが、その時々で最適だと思う案を出しているだけなのだ。


「とりあえず……最後まで話を聞いてから考えようじゃないか」


 赤坂が歳のせいなのかよく分からないが重そうな腰をゆっくりと段階的に上げながら、それこそ重たそうな口を開いた。

 元とはいえども十年間もリーダーを務めてだけあって、威厳のようなオーラのような、とにかく俺には足りていないものが彼にはある気がする。

 彼が口を開くだけで凍ってしまったかのような、とても張り詰めた空気感へと変わる。


「そうだな、作戦は大きく分ければ三段階。簡単に言えば襲う、取る、逃げる、だな」


「雑ですね……」


 分かりやすいように言うつもりが、あまりにも大雑把すぎてかえって伝わらなかったか。


「この作戦の鍵を握るのは通常兵器隊で……」


 俺は幹部会にて作戦の詳細を事細かに伝えた。


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