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Electro Signal  作者: 笹霧 陽介
第一章 貧民街統一
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「雷光砲!」


 俺がヘリを撃墜したのとほぼ同時のタイミングで、天宮(あまみや)の声が聞こえる。

 奴もただやられるつもりはないらしい。

 奴の使える技の中でも恐らく上位の技だろう。


 直線上に放たれた閃光。

 爆音と暴風に吹き飛ばされそうになる。

 直撃した攻撃ヘリ二機が、機体の半分を消し飛ばされ爆散する。


 天宮は敵だが、ここは助かったとしか言いようがない。


「天宮ひとまず仕切り直しにしようじゃないか。それともこのまま決着をつけるか?」


「黙れ赤坂(あかさか)! この程度の力の消費で貴様になど負けるものか」


 赤坂達が何故「レッドナイツ」と呼ばれていたか。

 赤坂の名前から取ったであろう「レッド」と、彼の異能力「騎士団(ナイツ)」。

 赤坂の能力は召喚系のもの。


 召喚系の能力には代償がいるものといらないものがあるが、彼の能力は前者。

 彼の能力の代償になるのは価値のあるもので、簡単なものでいえばコイン。

 値段が大きい程、強い兵士を生成することが出来るらしい。

 もちろん高いコインは生活に必要だ。

 よって彼は能力をギリギリまで使わない。


 俺も彼の能力をこの目で見たことは無い。


召喚サモン死の騎士団(デッドリィナイツ)!」


 赤坂の手から大量のコインが抜け落ちてくる。

 ジャラジャラと音を立て地面に落ちたコインは、飲み込まれるようにして地中へと埋まってゆく。

 皆の注目が集まる中、地面から次々と柱状に土が盛り上がる。

 土が弾けると、中から出てきたのは多数の兵士。

 武装した馬に乗っている者、馬に乗っていない者、装備が薄い者、コインの値段の差はそこに現れているらしい。

 土に作られた軍勢の後ろで、赤坂が玉座のような椅子に座っている。

 赤坂の前には戦場を忠実に再現した盤がある。


 赤坂は足を組み、片手で頭を支えるような格好で一息つく。

 右手を盤上の駒へと持っていき、駒を前へ進める。

 赤坂が駒を動かすと同時に、騎士団が動き出す。

 これが赤坂の能力の一つ「戦場支配(ウォーコントロール)」全てをゲームかのように盤上に置き換え、完全に自らの支配下に置いてしまう。


 赤坂達「赤の騎士団レッドナイツ」と呼ばれ、恐れられていたのは彼の能力による所が大きかった。

 もちろん幹部クラスになれば手強い奴らも多いが、赤坂の能力で生み出された兵士たちは強過ぎるのだ。


「それがどうした。こんな土の塊など蹴散らしてくれるわ!」


 天宮は体に雷を纏い、騎士団の中を一直線に赤坂の元へと向かう。

 生まれる時こそ土塊だが、兵士の姿になってしまえば生きている人間と大差ない。

 装備の強度も、質量も、その全てが現実のものを再現される。

 よって天宮の渾身の突進も虚しく、天宮はナイト達に囲まれる。

 ヘリを撃墜した時に、力のほとんどを使ってしまっていたのだろう。

 万全な状態であればこうもあっさり止められたはずがない。


「くそ……お前ら次はないと思え!」


 さすがは戦闘集団蓬莱のリーダー。

 深手を負ったにも関わらず、彼は残ったメンバーを連れて帰って行った。

 昔からどこか歪だった彼のグループは、今回の負けでほぼ全壊したと言っていいほどに廃れた。


 解散に近い状態になった蓬莱のメンバーのうち、五割がストレイキャッツへの参加を表明。

 蓬莱(ほうらい)はリーダー天宮と共に姿を消した。

 こうして俺達は多数の犠牲を出しながらも、貧民街で一番のグループとなった。

 未だ反抗する少数グループもあるがその数は徐々に減っている。

 文字通り俺達は貧民街を統一したと言っていいだろう。

 だが、その代償は大き過ぎた。

 俺達は東京地区の邪魔者、その証拠が攻撃ヘリによる排除行動。


満月(みつき)……」


 蓬莱(ほうらい)との戦闘後すぐに貧民街の、師匠と繋がりのある医者へと駆け込んだ。

 髭が口を覆い、眼鏡でよく表情が捉えられない不気味な男だったが、その腕は本物だった。


 結果から言えば最悪の結果だけは避けることができた。

 満月に当たった銃弾は、運良く急所を逃れていたらしい。

 当分の間目を覚ますことは無いが、高度な治療を受け続ければ死ぬ心配も無い、と医者の男は言っていた。

 そして、ここにある機械では、治療に限界があるとも。

 満月にはもう時間が残されていない。


「安心して眠っていてくれ。俺が日本を変えてくるよ。次に目を覚ました時に俺の理想郷を見せてやるよ」


 俺にはその時、満月が笑った気がした。

 もちろん俺の思い過ごしなのだろうが、それでも俺はこの計画をやり遂げようと心に強く誓った。

 どんな壁が立ち塞がろうとも、どんな手段を使っても、俺はもう振り返らない。


「さて、権力奪還計画を始めようか……!」


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