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第八四話

できました。

「何故この街に集まってくるのかですが、運がなかったとしか言えないですねぇ」


 とあっさり言われる。

 表情におかしな点はなくおそらく本当なのだろう。


「何かがあるとかじゃなくてか……」


「ええ、ただふとした弾みにここが私たちの世界に近づいてしまった、ただそれだけです」


 ゆっくりと言葉を口にしていく。

 それは抑揚も抑えられ淡々とされていく。


「向こうとこちらはとてつもなく遠い、ですけどごくまれにほぼ重なるほど近くなる時がある」


 ふとヒュプノスが空を見上げる。

 それに従って俺もまら空を見るとおかしなものが見えた。

 逆さの海だ。

 穏やかに波がどこかに向かって広がり、水面からナニカがとびだし海面を泳ぐ。


「あれは?」


「秘密です」


 どこか悪戯っぽい笑みを浮かべている。

 明言されなかったが、ヒュプノスたちの世界とはまた別の世界だと思う。

 何となくというレベルの話でしかないが、その考えがするりと入ってきた。


「……どうすれば収まる?」


「神だとしてもその境界を渡るのはものすごく苦労します、長い手順が必要なのです」


 そうして思うのは今までの襲ってきた存在だ。


「本当か? 割と衝動的に行動している奴らばかりだったが……」


「そうとられるのは仕方ないですけどね」


 と苦笑した。


「特に最初の大きな山羊――アレスは来た瞬間に手持ちのリソースをすべて使用してやらかしたようで、あの思い切りはすごいですよねぇ」


「呑気に言っているけど、陽川が来なかったらというのは考えたくないな」


 ぼそりと漏らす。

 それに対してヒュプノスはうなずいた。


「あとはウーラヌスですね、彼は力任せにそれらの手順を無視してきました、アレスはまだ安定していましたが、ウーラヌスはそれこそ無呼吸でマラソンをしているようなものですね、自由に動けますけど一度崩れるともう駄目ですね」


「その言い方だとアレス――巨大な山羊はまた出てくるように聞こえるんだが」


 思わずそんな質問をした。

 するとヒュプノスがゆっくりと話始める。


「勝ち目があるなら再チャレンジはしてくるでしょうけどねぇ」


「ああ、なるほど」


 陽川に簡単に吹き飛ばされたのが気がかりらしい。

 確かに名前と能力からすると戦闘にはかなりの自信があったのだろう。

 だが結果的には暴れはしたけどすぐに撃退されてしまった。

 ならしばらく様子を見るのはわからないでもない。


「それそれで手順は違いますけど、目的はこっちの世界に自らを軟着陸させることだと思ってください、先ずこれrが基本です」


「……ヒュプノスがウチの学校の養護教諭に滑り込んだようにか?」


 俺の言葉にヒュプノスはうなずいた。

 軟着陸とはどういう状況を言うのかは分からないが、その後の事は実際に例が目の前にいるので理解できる。

 つまりこっちの世界で生きてきた状態になるという事だ。


「……うーん、すこーしだけ違うんですよね」


「どういうところだ?」


 聞き返すと人差し指を立てて話してくる。


「こっちの世界の存在になるのは合っていますけど、わたしのように穏健派はほぼいないですねぇ」


「……まさか暴れるのか?」


 俺のその言葉に何とも言えない表情を見せる。

 そのことに疑問を思っていると、ふとどこかを指さした。

 そこには今まで出て来た巨大なアイツラが半透明の存在として見えている。


「おおむねあんな感じですので、もう知っていると思っていたんですよ、」


「……言われてみたら確かに」


 ヒュプノスも含めてデカい存在は大暴れしていた。

 だが疑問がある。


「あのデカいのは確かに大きな被害が出るだろうが、暴れるのが目的なのか?」


「目的のためにあばれるから違いますよぉ」


「目的?」


 聞き返すと曖昧な笑みを浮かべている。


「聞かない方が良いでしょうね、知ると本気で後戻りができない情報なので」


 そこまで言われたのなら、助けられたこともあってさすがに忘れることにした。


「なんにせよ暴れることを阻止する事が、目的を阻止することに関わるのでこの調子でいきたいですねぇ」


 と決意を込めた言葉をいつものようにフワフワとした口調で言った。

 ヒュプノスはじっと俺の方を見てかすかにうなずいた。


「じゃ、次の話に移りましょうかぁ」


「頼む」


 とうなずいて話はもう少し続く。

明日も頑張ります。

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