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第八三話

できました。

「お疲れ様でしたぁ」


 夢の中で目が覚める独特の感覚にもずいぶん慣れた。

 が、今日はいつもと様子が違う。

 普段は草原だが、なぜか空とニコニコと笑う上下逆のヒュプノスの顔が見える。


「何やってるんだ?」


「ふふ、膝枕ですよぉ」


 さらっと言われてしまう。

 なのでごく自然に起きようとする。


「あれ?」


 なぜか全く起きない。

 体から根が張ったようにピクリともしない。

 ヒュプノスが何かをしたのかと思い視線を向けるとゆっくり首を横に振られた。


「簡単に言うと死にかけているからですねぇ」


「は?」


 最近驚いてばかりだ。

 などと少しずれたことを思いながら思わず声が出た。

 しかし思わずそんな声が出てしまうのも仕方がないと思う。

 さすがに何かの冗談か比喩だと思いたい。


「肉体的には大きなけがはしていないんですけど、心の方がギリギリで」


「?そうなのか?」


 聞き返した言葉にはっきりとうなずかれた。

 それに従ってフワフワとした髪が揺れる。

 後頭部は温かさと独特の柔らかさを感じる。

 新鮮な森の香りがする。

 夢の中なので眠れないが心地のよい眠気を感じる。


「さすがに単位間で心を酷使しすぎですよぉ、ある日突然プツリと切れてしまうこともあるんですからね」


「仕方がなかった」


 俺の言い訳にもならないような言葉にヒュプノスは小さく笑い、俺の頭をなで始めた。

 気恥ずかしくなるがついつい身を任せてしまう。


「人質になって、怪物に追いかけられて死なないように頑張ったのは確かでしょうけど、無理をするには体も心も弱いんですからね」


「……ああ」


 とうなずく。

 が、ヒュプノスはじっと俺の顔を覗き込みながら話す。

 その表情はどこか呆れているようにも見える。


「そんな生返事をして……なんの力もないのにまた首を突っ込むんでしょう?」


「ああ」


 フワフワした気分のまま、自分でも驚くほど素直にうなずいた。

 ヒュプノスは表情を変えないままさらに問いかけてくる。


「たとえそれが迷惑になりかねない行為だとしてもですかぁ?」


「……」


 即答できずに押し黙る。

 そんな俺にむかってヒュプノスは笑いかける。


「そうやって考えることは大切ですからねぇ」


 顎を引くようにして頷く。

 そんな俺に対して、小さな子供にするように頭を撫でた後でさらに口を開いた。


「さ、これでもう大丈夫ですよぉ」


 試しにさっきのように体を起こしてみる。

 するとなめらかに起きれた。

 何となく全身の疲れすらもなくなった気がする。


「体の調子が良くなった、ありがとう」


「いえいえ、良いですよぉ」


 といったあたりで気づけばいつもの草原にいた。

 テーブルがあり一対の椅子が向かい合って置かれている。


「さて、ではすこーし秘密の話をしましょう」


「秘密の話ってなんだよ」


 緊張感を感じさせないその口調に半ばあきれながら言葉を返す。


「今のこの街の中で動いている集団についてですよぉ」


 と言いながらいくつかの丸をテーブルに直接描く。

 一つはニワトリ、一つはネコ、そしてもう一つはヒツジだ。


「まずはこの三つですね」


「ガーガとセレネは別勢力扱いなのか?」


 聞いた話から判断すると同じところからきていたはずだ。

 そのことを伝えると、ヒュプノスはやはりうなずく。


「では前提条件から考えましょう、そもそも仲間ならなぜそれらしく話が一切入ってなかったんですか?」


「それは――」


 考えてみれば確かに妙だ。

 ガーガは予備の人員がいる様子はなかった。


「つい最近来たばかりか、元々仲間として数えることができない相手だったか……」


 その言葉重々しく聞こえる。

 それに対してヒュプノスは普段どおりの表情だ。


「まぁ、今のところは保留でしょうけどね」


 と言いながらニワトリとネコを一つの円でくくった。


「で、私たちは夢で会えることを利用してこうして会えることを利用して密会をしているわけです」


「密会ってあまり聞こえがいい話じゃないな」


 それに対してどこか悪戯っぽい笑みを浮かべる。


「まぁ、ガーガたちにも気づかれていないでしょうね」


「……どうでもよくはないんだが、目的ってなんなんだ?」


 俺からしたらただちょっかいをかけているだけに思える。

 俺のその疑問に対してはヒュプノスは軽く笑いながら話す。


「それは秘密ですねぇ」


 という一言ではぐらかされる。

 問い詰めても満足な答えが返ってこないだろうという事は想像がつくので肩をすくめて諦める。

 ただヒュプノスは一言だけ付け加える。


「ただ、ガーガたちや世界をどうこうしたいとは私は思ってないですよ」


「本当か?」


 そう聞いてもいつも通りの笑みでうなずくために正直なところ半信半疑だ。

 そんな俺の心情を無視したかどうかはわからないが丸で囲われた外に複数のイラストが浮かぶ。

 ヤギとサソリ、そしてツボだ。

 それらにはバツが付けられる。


「この三つは撃破済みですね」


「この三つて同じ勢力はないよな」


 ヒュプノスは俺の質問にうなずいた。

 なので遠慮なく問いかける。


「なんでこの街に集まっているような形になっているんだ?」


 それこそ世界規模で様々な場所に出ていてもおかしくない。

 しかし立て続けに起きているのは明らかにおかしい。

 まるで誰かが呼び寄せているようだ。


「なるほど、ではそこからお話ししましょうか」


 ヒュプノスは一つうなずいては説明を開始した。

明日も頑張ります。

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