第八〇話
できました。
「つまり本来は手出ししちゃいけないのに助けてくれたわけか……」
俺のそんな言葉にリオンは気恥ずかしそうにしている。
それに反してセレネは無駄に得意げだ。
「そんなわけで貢物をしてもいいのよ!!」
「わかった、何が良い? あまり高い物は困るが」
俺のそんな言葉にセレネは首をかしげる。
それに従ってボブカットの金髪がこぼれる。
どうやらあっさり受け入れられるとは思っていなかったようだ。
その反応に憮然として答える。
「俺はそこまで礼しらずじゃないぞ」
その言葉を聞いてセレネは顔を輝かせて即答する。
「じゃあ、プリン!!」
と想像よりずっと安い物で助かった。
続いてリオンに視線を向けると首を横に振る。
相変わらず謙虚だ。
そこにセレネが割り込んでくる。
「前言ってなかった? 肉が食べたいって」
途端に値段が跳ね上がった。
そこで財布の中を思い出す。
なんだかんだで出費が多く奢れるかどうかは謎だ。
なので高校生でも可能な短期バイトを入れることを決めて答える。
「しばらく待ってくれ、何とかするから」
俺を見て慌てて手を振り断ろうとする。
が、俺から頭を下げる。
「助けてくれたんだからこれくらいは奢らせてくれ」
さすがに折れたのか恥ずかしそうに頭を下げる。
それにしても意外な感じだ。
ライオンモチーフとはいえ肉を望むのは俺たちのような男みたいな印象を受けたからだ。
「で、一口に肉と言っても色々あると思うんだが、何が良いんだ?」
「焼き肉が良いって言ってたよね、たしか?」
問いかけると間髪置かずセレネが返事した。
だいぶ前から気付いていたが、寡黙な魔法少女と姦しい相棒というある意味バランスの取れたコンビのようだ。
「それにしてもますます男子っぽいな」
とぼそりと口に出してしまった。
するとリオンは少し恥ずかしそうにうつむいた。
なんだかんだでばらされて恥ずかしいようだ。
「……一応聞くがどの程度のクラスが良いんだ?」
焼肉屋は本当にピンからキリまである。
高い方だと全く手が届かない。
そんなことを思っているとどこか恥ずかしそうにしている。
疑問に思っているとセレネがからかうような笑みを浮かべてリオンの頭に乗る。
そうしながら話す。
「リオンは別にこだわりないもんね」
その言葉にしおらしくうつむいた。
かわいそうだがおかげで助かった。
そこまでこだわりがないのならおそらくは大丈夫だ。
「さて、たかりはこれくらいにしておきますか」
「たかりって実感あったのか」
呆れつつ話しかけると、セレネは悪戯が見つかった子供のようにチロリと舌をだした。
サイズ感を抜いても人形のように整った容貌によく似合っている。
そのあとリオンごと空に浮かび始める。
「両親はちゃんと治療しておいたから深く感謝しておくように」
「へーへー、分かりましたよ」
口ではそういうが、いくら頭を下げてもッ足りないくらい感謝している。
それを見て分かったのかどうかはわからないが、二人ともどこか苦笑に近い表情を浮かべて空に消えていった。
「ところで……」
改めて周りを見ると爆発でも起きたかのようにめちゃくちゃになっている。
その中で不自然なほど無傷の俺と両親の三人がいる。
すこし頭痛を感じながらぼやく。
「この惨状どうやって説明しようか」
途方に暮れるがそれでもまず救急に連絡をすることにした。
セレネは治療は終わったと言っていたが、本当かどうかは確認しないといけない。
それらの目先の事を考えながら人が来るのを待つことにした。
しばらくすると見覚えのある存在が上から降りてきた。
ガーガだ。
「その……」
ガーガは何とも居心地が悪そうに話しかけてきた。
それに対して俺は答えた。
「いい、ある程度は事情は察する事ができる」
「そう……か」
とそこでガーガは一つだけ頭を下げて、上げた顔はいつものような表情に戻っている。
「セレネから聞いた、人は相手にできないんだな」
「そ……れは」
とどこか言いにくそうだ。
が、うなずいて肯定した。
そこで一つだけため息をついて話をする。
「結局助かったからいいものの、どうするつもりだったんだ?」
「……」
無言が返ってきた。
だが何となく察する事が出来た。
「まさかあそこまで殺意が増していたなんて思わなっかった」
その言葉に肩を落とす。
が、すぐに顔を上げる。
「じゃあ次は頼むぞ」
「わかった」
と右うなずいて、俺に向き直る。
ようやく直で話し合える状況が出来上がり、ガーガの話に耳を傾ける。
明日も頑張ります。