第六八話
できました。
倒れた視界に見えるのはいびつな人間だ。
喉仏は目立ち、全体的にがっちりとした印象がある明らかに男の体だ。
そしてその体はすっ裸だ。
体中にはメスを入れた跡が残っており、まだふさがっていない傷も多くある。
それだけでも異常な姿だが、それ以上におかしな点がある。
「何だよそれ!!」
顔と胸だ。
顔は以前に見たような垂れ目気味のどう見ても女性の顔だ。
そして胸が女性のそれだ。
そのどちらも美容整形のような物ではなく溶接という印象を受ける程度に雑な処理だ。
そのいびつな外見に思わず出たのがさっきの変態という言葉だ。
細部がはっきりと見えない薄暗いことに感謝する。
「このっ!!」
激昂して蹴られる。
その際も表情は大きく変わることなく異常さを際立つ。
受け身も取れず転がりその際何度も折れた腕が動き、目の前が真っ白になるほどの激痛を受ける。
転がるがすぐ背後に壁を感じる。
それほど距離を飛ばされたわけではないのにだ。
「ひ……がぁ……」
一か八かでやらかしたことのためある程度覚悟はしていた。
が、まさかあれほど異常な奴だったとは思わなかった。
その目は血走っており命の危険を感じる。
「まて、話を聞きたい、なんでそうなったんだ!?」
ダメもとで話しかける。
するとさび付いた人形のような動きでぎこちなく動き始める。
その動きには荒々しさはなく上機嫌にすら見える。
「そう、聞きたいのね」
もう慣れたが変わらず男の声で話されていると何とも言えない気色悪さを感じる。
いわゆるオカマと言われるような言葉遣いではなく。
自己が決定的に壊れているような印象を受けるからだ。
「アレは数年前の事だったわ」
と虚空を見つめてどこか熱に浮かされたように話始めた。
同時にここがどこかの考察をまとめる。
防音が効いてるか、人里離れた場所の可能性がある。
さっき蹴り倒されたときに気付いたがここはそれほど広くない。
無意識でそれなりの広さだと思っていたから焦点が合わなかった。
が、そうとわかれば段々見えてきた。
「学校で木下ふたばを見つけたの」
熱に浮かされたように話すその内容は出会いからのようだ。
それを聞いている部分はとは別の頭の部分でここの正体を見抜く。
おそらく大型トラックの荷台だ。
内装を適当に変更されているからすぐに気付かなかった。
連れ込んで運び込んだあとに人がほぼいない駐車スペースに止めている。
水とバケツはおそらく掃除用具を流用したのだろう。
「わたしはそれまでは取るに足らない存在で、醜い体が嫌いだっただからあれは運命ね」
テンションがヒートアップしている。
早口でまくし立てるそれは段々と支離滅裂になる。
おそらくここから飛び出さえすればなんとかなる。
最悪クラクションを連続してならせば不思議に思った人間がやってくるだろう。
「だから私はならなくちゃならないのわたしがりそうとする姿にならないと、そしてそれなら中味もまた彼女にチアづかないといけない」
逃げ道はほぼない様に思える。
が江種が外に物を取りに行ったという事は出ることは可能だ。
そしてそう遠くない場所に人が手入れを行うような建物があるのは確かだ。
「だから聞いたのおかあさんに根掘り葉掘り、なかなかはかないから手荒なことしたけどしょうがないですよね、だって運命ですからね」
そして俺の顔をつかんで無理やり見せる。
その際に体が無理に動かされたので折れた場所から焼けるような痛みが送られる。
「色々つかづけてるんですよ、だから見て!!」
だが何度見たところで歪で不格好な姿にしか見えない。
だからうなずくこともなく曖昧に見る。
だが俺の事なんてもうあまり気に指定尚可それで満足して、離した。
先ほどまでの話を聞いて思ったことを質問する。
「どうやって木下の母親の方が殺されたって知ったんだ?」
ハイテンションでペラペラしゃべっていたので口を滑らせることを期待して問いかけた。
するとどこか非人間的な笑みを浮かべてはなす。
「それは私が殺したからですね」
「……どうやって探し出したんだよ」
そんな会話を続けていると、かすかだが硬い物がカツンと叩いた音がする。
気分よく話している江種は幸いなことに気付いていない。
俺は直感で理解する。
ついにガーガがやってきたのだ。
そのことに頼もしさを感じながら狂人にあたりさわりのない範囲でうなずきながらじっと助けを待つことにした。
明日も頑張ります。