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第六五話

できました。

「ふぅ……」


 ため息をつく。

 結局あの場では色々はぐらかされてしまった。

 そのことがわだかまりとなってその後の飯も味気ない物になってしまった。

 時間はもう夕方近くで、分かれた後だ。

 そんななか、月宮の言葉を自分の中で咀嚼する。


「うーん、どう判断すればいいんだ?」


 悩んでいるとスマホに着信がある。

 相手はガーガだ。

 周りにはそれなりに人が居るので迷惑にならないように人気が少ない場所を探して移動する。


「どうしたガーガ?」


「アモリか、どうだった首尾は?」


 どうやら月宮の反応が少しでも早く聞きたかったらしい。

 そのタイミングの良さに思わず苦笑して答える。


「たまに思うんだがガーガはいつもタイミングがばっちりだな」


「そうか? 二人で出かけるならこれくらいの時間でちょうど別れたと思ったからかけただけなんだが」


「いや、おかげで話が早くなるから大丈夫だ」


 というわけでかいつまんで月宮の話をした。

 意識していない訳ではないが、何とも言えない切り返し方をされた。

 その後もうまく話を聞き出せなかった。

 そんな話を聞いてガーガは少しだけ唸る。


「そうか、すまなかったなアモリ、難しい話をさせて」


「いや、いい」


 ガーガからは見えないだろうが首を振って否定する。

 どことなくフワッとしている月宮と少しテンパるところがある陽川では互いにうまく支え合ってつき合うことができそうだからだ。

 余計なお世話と言われそうだが、その程度のおせっかいをしたいと思えるほどには二人を大切に思っている。


「で、陽川の方も月宮と二人きりで出かけるのは腰が引けるって理由で受け入れそうなんだよなぁ」


「そこで二人きりが良いとねじ込めるならこんな苦労はいらないだろうさ」


 と、ガーガがため息交じり話す。

 その感想には俺も同意した。

 だから俺は思いついたことを提案する。


「そういう機会があったとして途中で俺が抜けるのはどうだ?」


「……気を使われているって思ったらさらにこじれそうじゃないか?」


 その言葉に思わず詰まる。

 そうして次に出かけることがなくなれば確かに厳しい気がする。

 なので肩を落としてとりあえずに着地点として話す。


「今はまだ学校外で一緒に出掛けることをおこなった方が良いってことか」


「ガーガはそう思うぞ、それで変に意識する事がなくなれば次にも行き易くなる」


 その言葉に納得する。

 今は二人とも一緒に出掛けることにハードルが存在している。

 だから俺を含めたとしても出かける約束を行って気負いを減らすことが先決。

 そんなことを考えているうちにさらにガーガからの話がされる。


「一緒に出掛けているときに不自然でない程度に席を外すことも必要だと思うがな」


「なるほどな」


 じっくり外堀を埋めていくことに同意する。

 その考えを聞いてある思ったことを話す。


「という事はいかにもな場所を提案しない方が良いかもな、水族館とか遊園地とか」


「ほぅ、なぜだ?」


 俺の考えを聞いて、興味深そうな声でガーガが問いかけてくる。

 だから一回だけうなずいて続きを話す。


「いかにもそういうデートを意識させるようなことすると緊張するだろうし、絶対怪しむ」


 それに、と続きを話す。


「そういうデートにぴったりのスポットにこれから向かうとき、俺が居たなんて思い出をさしこむべきじゃないだろう」


「なるほど、そういう考えは納得できるな」


 そこでちょっとだけガーガが何かを考えるように少しだけ黙り込む。

 そして続きを話す。


「なら映画はどうだ?」


「映画、なぜだ?」


 定番コースの一つだ。

 さっきの考えから行くと除外される場所のはずだ。

 が、ガーガは一つだけ咳払いをして話す。


「まず基本的に映画館は友人同士でも行くし、終わった後どこかで感想を含めた雑談に向いている」


「うん、まぁ、そうだな」


 納得できる理由だ。

 これなら二人も誘うのにそれほど不自然ではない。


「そして暗い場所で見るってことは見ている間は体感としては一人みたいなものだろう」


「うーん、まぁ、そういう見方もできない事はないな」


 会話も禁止のため、見ている間はボッチもカップルも関係がないだろう。

 そしてうまく誘導して二人が並んだ状態で座れば俺は邪魔になりにくいだろう。


「じゃあなんか俺も含めて出かけることになったらそれを意識して提案しておく」


「任せたぞアモリ」


「了解、任された」


 とうなずく。

 そうして思い出すのは朝の会話の件だ。


「それでガーガ、一つ聞きたいことがるんだが」


「何だ? アモリ」


 と聞く体勢になってくれたので遠慮なく話を向ける。


「江種についてだけど、何か新しいことはわかったか?」


「なるほど、今も調べているが芳しい事は特にないな」


 その口調には少しだけだが悔しそうな感情が混じっている。

 が、それに気づかないふりをしてガーガの話に耳を傾ける。


「町中で手当たり次第に声をかけることはなくなって、その代わりにアモリたちが通っている学校の周辺に狙いを絞っているようだ」


「……そういえばあのとき俺は制服だったな」


 その制服から学校まで特定したようだ。


「ただ今のところそれでもいい結果は手に入れてないようだな、ただ明日から学校が始まる」


「ばれるのは不可避か、なるほど分かったよ、ありがとうガーガ」


「ならよかった、気をつけろよアモリ」


 その言葉のあとに軽く別れを告げて通話を終了させた。

明日も頑張ります。

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