第六二話
できました。
ヤバいやつへの警戒はガーガに任せることにして月宮に連絡を取る。
スマホを手に取り緑のアイコンのSNSアプリを起動して月宮のアイコンをタップする。
メッセージウインドウが開いたら言葉を打ち込む。
「おーい、今日暇か? 暇ならちょっと遊びに行かねーか? と」
日曜の朝ゆえの変なテンションで送る。
さほど間を置かずに返信がくる。
内容は了承と何をするのか聞いてくることだった。
返事もまた特に何も考えず返す。
「まずは集まってから考えないか? と」
それにたいして、サムズアップのスタンプが送られてきたので集合場所だけ決めた。
「さて、やるか」
と今度こそ本格的に起きてリビングに向かった。
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リビングに向かうと、父さんがキッチンに立っているようだ。
動きは若干たどたどしく、少し離れて見ている母さんはどこかハラハラしながら見ている様子だ。
手元にはメモがあり何かを記している。
「おはようって何してるんだ?」
「ああ、亜守おはよう、母さんこれから少し忙しくなるかもしれないって話をしたら父さんが家事の分担増やそうって言ってくれて」
よく見るとカメラも回されている。
つまり一朝一夕にはできないからまだ余裕があるときに映像も撮って改善点を洗い出していくらしい。
「こうしてみていると父さんの背の高さにあってないから何か考えた方が良いわねぇ」
言われてみれば確かに常に若干身をかがめるような姿勢で料理を行っている。
言われてみれば料理をほとんどしないからというのもあるが不自然な体勢で常に居続ける方もこたえているようだ。
「ここは母さんの意見を全部通してもらったからというのもあるわね」
と少し悩まし気だ。
母さんも父さんもごくごく一般的な身長だ。
視線の高さも若干だが違う。
たまに額を角にぶつけかけたりしている。
「父さんも使えるようにすれば亜守もつかいやすくなるわね」
「わかった、俺も少しずつやるよ」
ここのところ迷惑や心配をかけ続けているのでこれくらいはしないといけない。
すると何とかできたそうで父さんが人数分のメニューを手に持ってきた。
「起きたか、亜守、休日なのに今日ははやいんだな」
「まぁ、たまには」
と言ったが、本当は起こされないと起きることがない体になっている。
いまはまだガーガが起こしに来るが、今からでもガーガが居なくなった時のこと考えないといけない。
と思っている間に焼き魚とみそ汁が並べられる。
父さんが冷蔵庫から作り置きの漬物を取り出している間に俺は白米を盛りに向かった。
「母さん、魚焼いたこの網の部分だけどどうすればいい?」
「触れるくらいまで冷めたら外して流しに持って行って」
「わかった」
軽く手をかざしただけでまだまだ熱を持っていることが分かったので後回しにする。
人数分の白米をよそって持っていく。
配膳して、三人で食卓を囲んで食事の挨拶をする。
「いただきまーす」
早速焼き魚、腹開きにされたアジだ。
長めに焼かれたせいか皮が若干炭化したそれに箸を入れる。
食べると焼きたて特有の旨味を感じる。
白米とよく合う。
よく噛み、油揚げと豆腐が具のみそ汁で飲み込む。
程よい塩気を持ったみそ汁はそれ単体でも十分おかずの役割を果たす。
しばらく無心で食べて、白米を食べきり茶碗を手にたちがる。
「おかわり行くけど、要る?」
「いや、いい」
「母さんも充分ね」
「わかった」
なので俺だけの分をよそって食卓に戻った。
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食事後、洗い物まで済ませた後、録画したデータを父さんと母さんで一緒に見ながら何事か話し合っている。
内容的には意見のすり合わせが近い。
母さんから見た改善してほしい点、父さんが実際に行った時不便だと感じた点。
それらを互いに出しながら次にどうするかを決めている。
俺も近いうちにこれやるんだろうな。
とぼんやりと思いながら食後の麦茶を飲んでいる。
「とりあえず物のレイアウトは変えない方が良いだろうな」
「そうね、長年使ってきたベストの配置だもの」
父さんの提案に、母さんは深くうなずいた。
結局父さんや俺が使いやすくするために母さんが慣れた配置から変えるのでは本末転倒という事だろう。
特に辛く感じたのが同じ体勢をしないといけない洗い物時らしい。
なので父さんは食器洗い機を導入したいらしい。
母さんは寝耳に水だったようで、少し考えている。
そこが俺の言葉を差し込める時だと考えて二人に声をかける。
「今日この後月宮と遊びに出かけるから、昼飯はいらない」
「わかった、楽しんできてね」
「わかった」
頷いてスマホを見るとそろそろでかける準備をした方が良い時間だ。
麦茶wを飲み干したコップをながしに出して、手早く洗って部屋に戻った。
明日も頑張ります。