第五七話
できました。
ふとした弾みに死にかけたりしたがおおむね平和に街に戻ってこれた。
解散場所はヒュプノスに拾ってもらった駅前だ。
「では、今日はこれで」
「ああ、またいつか」
その返答にヒュプノスは驚いた表情になるがその後小さく笑みを浮かべる。
そうして軽く手を振り帰っていった。
やることもないので家に帰へ途中、人通りが少ない場所に来た。
すると低く落ち着いた声が聞こえる。
「アモリ、少しいいか?」
聞こえてきたのはガーガの声だ。
声がした方を見るとちょうど空から降りてきたところだ。
俺の目の前に降りたち、じっと俺を見ている。
「ガーガか? どうした?」
「今日フタバが暮らしていた街に向かっていたようだな」
その質問に素直にうなずく。
あの壺を遠距離の狙撃で破壊したのは陽川だ。
という事は当然ガーガも関わっていたはずだ。
なら当然あの存在に追いかけられていた人間を探すのは当たり前だ。
「ああ、大変だった、アレを吹き飛ばしたのは陽川だろ?」
「そうだったか、他人の空似だと思っていたがまさか本人だったとはな」
しみじみとガーガがそう漏らす。
そうしてその後で言葉が続く。
「その街で何があったんだ?」
「それは……できるだけ短く話すと、木下の父親が襲ってくるアイツらだった」
ディフォルメされたどこか気の抜けたガーガの表情が少しだけ引き締まる。
どうやらかなり深刻な情報らしい。
「それは確かか? 間違いなく木下の父親が変わったのか?」
「ああ」
あの流れから考えるとほぼ間違いない。
だから強く頷いた。
するとガーガが軽く首を振り再度聞いてきた。
「いや、正確には生きている父親を名乗る人物が街の上空に浮かんでいた壺に変わったのか? という意味だ」
そこまで言われると首を横に振る。
「そういう意味でなら違う、父親は死んでいたしそれまでの流れから父親がなったと考えた」
「なるほど、わざわざすまんな」
そう答えた後で少し考えこんでいる様子だ。
そのあとガーガは軽く頭を下げてくる。
「放置していてすまなかった」
「いや、いい、俺に話せないこともたくさんあるんだろう?」
ガーガは申し訳なさそうに返事をした。
その毛並みは少しでしぼんでいるようにも見える。
「そういってもらえると助かる、早速向こうでわかったことなどを話してほしい」
「わかった」
頷いてたち話もなんなので近くの座れる場所に移動することにした。
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近くの公園に移動し、ベンチに腰掛ける。
「さてどこから話そうか……」
少し悩む。
がまず大きな収穫を見せることにする。
「木下のかつての顔写真が手に入った」
「なに!? それは本当か!?」
驚愕の声が来る。
ガーガが食い気味に来た。
その勢いに押されてちょっと身を引くが気にせずコピーした写真を渡す。
「これが……」
じっくりとその写真を見て、ガーガがまず漏らした感想は。
「言ったらなんだが全然面影がないな」
「ああ」
俺もの言葉に同意する。
高校に入って垢ぬけるという話はたまに聞くがその逆というのは中々きかない。
そしてガーガはゆっくりと話す。
「アモリの話じゃなかったら髪色まで違っているから法螺だと思うぞ」
「俺も最初は驚いたよ、ここまで違うんだって」
ガーガはじっと見ながら話す。
「しかしよく見ると一致している部分が多いな、本当に同一人物みたいだな」
返してこようとするので首を振り断った。
「俺が持っていたもあまり意味がない、ガーガが持っているべきだろう、それにコピーはスマホで撮った」
「なるほど、ならありがたくもらっておく」
そういって羽毛に差し込むと魔法のように消えた。
実際魔法をつかっている可能性が高いが無視をしておく。
「そして写真がほとんど残っていない理由もわかった」
「確かに不自然に写真が残っていなかったな、そしてそんな状態なのにあの写真が残っていたというのも疑問だ」
その二つの疑問に対して小さく頷きながら話す。
「木下は両親から虐待を受けていた」
その言葉を聞いたガーガの表情が引き締まり、眉に当たる部分が上がる。
数拍おいてガーガは問いかけてくる。
「アモリ、詳しく頼めるか?」
「ああ」
俺は恭しく頷いた後で口を開いた。
明日も頑張ります。