第四一話
できました。
今日はちょっと短いです。
不安をなんとか押し殺しながら帰り道を歩く。
通話しながら歩いていると少しは不安を払しょくできている気がする。
「危険そうな人物は今のところ見つかっていない諦めたのか?」
「……どうだろう? あいつはまともじゃなかったぞ」
思い出しながらつぶやく。
パッと見は普通だったが、すぐ化けの皮が剝れた。
しかし奇異の目で見られる危険性は認識しているようではあった。
そもそも根本的な疑問がある。
「大体アイツは誰なんだ?」
「わからん」
それが大きな謎だ。
流れから考えるにほぼ間違いなく木下の関係者だ。
だが、もしそうなら木下を追うのではなく。
わざわざ母親を追いかけてからこっちに来たという事にになる。
どう考えても無駄な手間だ。
「そもそもかつての木下関係者だったとしても、ただの女子中学生だぞ」
「現代日本で短期間に周りの人間が四人も死ぬ人間がよく居るのか? アモリ」
「ぅ……」
言葉に詰まる。
前提条件でまずただの女子ではないのだ。
「フタバのかつての写真等は見つかってないんだ」
「たった数年前の話なのにか? 卒業アルバムにすらのってないのか?」
それこそ卒業アルバム等で残されていなければおかしなものだ。
集合写真や一人一人の写真くらいは必ず取られているはずだ。
だから確認をとる。
「ああ、かつてフタバが通っていた学校のアルバムにフタバの写真は載っていない」
「おいおい、まじか……」
すぐには信じられないセリフが返ってきた。
アルバムにすら残されていないというのはいくら何でも異常だ。
だからある質問を行う。
「実は別の学校だったとかは?」
「名簿には確かに在席していた、ただ現物を確認しに行ったわけではない」
「なるほど、現地で探すしかないか……」
そこでガーガは唸る。
おそらくガーガは猫の手も借りたいような状況なのだと思う。
だが、俺に頼んでもいい物かどうかを悩んでいる様子だ。
だから追加で話す。
「そもそも木下関連話は俺から頼んだようなものだし、俺が手伝ってもいいと思うが」
「……わかった、ただあまり深入りはするなよ、ただでさえ不穏な情報が元々並んでいるんだから」
「肝に銘じておく」
そんな話をしていいるうちに家についた。
だから鍵を取り出す前に再度ガーガに確認をとる。
「なぁつけていた奴とかはいなかったか?」
「ああ、見当たらなかった」
はっきり度断言されたので安心して鍵を開ける。
家の中からは両親の気配を感じる。
ほっと胸をなでおろして鍵を閉めた。
「とりあえずまた明日、おやすみアモリ」
「ああ、おやすみガーガ」
そう伝えて通話を終了し両親への言い訳を考えながらまずは帰宅の挨拶を行った。
=====
「で、ここかぁ」
ポツリと漏らす。
無限遠まで続く平原の中でつぶやく。
頭で理解できるのがここが夢の世界だという事だ。
そしてもうだいぶ見慣れたヒュプノスが居た。
草原にレジャーシートを広げそこに座り込んで何かの文庫本を読んでいる。
俺に気付いたのか表の巣はこちらを見て笑みを浮かべる。
「おやおや、大谷君から来るのは珍しいですね、何かありましたか?」
「は? いや二・三度しかきてないよな?」
聞き返すとヒュプノスは首を横にふる。
そうしている間に開いていた文庫本を閉じている。
「いいえ、覚えていないだけですよ、本来覚えている夢の方がすくないんですよ」
「……俺はなんて言っていた?」
唐突に興味が出て来たので聞いてみる。
するとどこか悪戯っぽい笑みを浮かべている。
「まぁ、大したことじゃないですよ、覚えていない夢の大谷君はそもそも外見が違っていたりするので」
「……例えば?」
その質問にヒュプノスは一呼吸分考えて口を開く。
口元にはやはり悪戯っぽい笑みを浮かべており、俺をからかうつもりのようだ。
「ヤマアラシだったりハリネズミだったりしますね、そういう時の大谷君は大抵素直ですけどね」
こんな感じに。
と一つ手を叩く。
すると一匹の刺々しい外見の小動物――ハリネズミが現れる。
それは地面の上できょろきょろ辺りを見回している。
「こっちにおいで」
しゃがみ込み手を差し出し、ヒュプノスが呼びかける。
すると少しだけ迷った後に嬉しそうに手の平に乗り込んだ。
「こんな感じですね」
「いや、さすがに嘘だろ」
俺の言葉にヒュプノスはクスクスと笑う。
その笑い方からすると上機嫌なようだ。
ヒュプノスの掌の上のハリネズミは丸まりイガグリのような形態になっている。
「そうですか? よく似てると思いますよ」
そうクスクスと笑っている。
それを見ながら俺はヒュプノスに頭を下げる。
頼みたいことがあるからだ。
「ヒュプノス、一つ良いか?」
そんな言葉が無限遠まで続く草原の風に溶けていった。
明日も頑張ります。