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第四〇話

できました。

 さて『カミヤドリ』を構成する重要な要素の一つについて考察を深めようと思う。『カミヤドリ』と私が呼称するソレは場所ではあるが例えば災害や人の活動によって場所や環境自体もたやすく変化する。だが人は変わらず土着の神に信仰を捧げることもよくある話である。治水工事により河辺から話されたの水神をまつる祠、廃棄された道につくられいまだに手入れされている道祖神など枚挙にいとまがないだろう。もう役割を果たすことない神にも変わらぬ信仰が向けられている。おそらく『カミヤドリ』は神が生まれ成長するためには大きな役割を持つだろう。だがそれを覚えている人間が一定以上いるならば『カミヤドリ』の有無など関係なく神は生きながらえていくだろう。乾いた熱風の吹きすさぶ地域で生まれた神が湿潤な地域から身を切るような寒い地域に広まったように。


     ――原戸 寺目『隠された信仰とその軌跡――カミヤドリを追って』


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 ファミレスから出たらまっすぐ帰らないよう少し外した方向に向かう。

 片手でガーガに電話を掛けながらつけられていないか気を付ける。


「たのむ、早く出てくれ」


 祈るような気持ちで耳にスマホを当てる。

 一応のため歩く道は人通りが多めの道を選んで歩く。

 と言っても本気の相手と比べたら気休めにもならないだろう。


「どうしたアモリ」


 第一声で聞きなれた低い声が聞こえる。

 それで少し安心するが、まだ事態は始まってもいない。

 だからかいつまんで説明する。


「木下を探っている相手と出会った」


「それは、本当か?」


「ああ、江種って名乗ってた名刺ももらったけどどこまで本当か……」


 八割でたらめだと思うが一応スマホで撮る。

 ついでも今俺がいる場所の情報も併せて送ることにする。

 周りは駅前の少し開けた場所だ。

 ここなら大丈夫だと判断して、背後から襲われないように壁を背にできる場所を陣取る。


「OKもらった……ものとしては本当に普通の名刺だな」


「ああ、いくらでも偽造できそうな」


「メールアドレスが書いてあるな……ドメインからすると海外だな」


 魔法的な存在であるガーガから現代的な単語が出てくると少し頭が混乱する。

 イメージ的には魔法的な手段で調べている気がしていた。

 が連絡手段にSNSを使ったりすることから考えると結構ハイテクなのかもしれない。


「その気になっていたんだけど、調べるのって魔法的なことをやってるんじゃないのか?」


「サイコメトリー的な事もしたりまぁ色々だが、使えそうなものは全部利用する、手が足りないからな」


「なるほど」


 合理的と言えば合理的な理由だ。

 俺はこうやって面倒ごとを持ち込む側だから情報収集などはガーガ一人でやっているのだ。

 だから労力を節約できる技術は学んで活用する。

 見た目よりずっとテクノロジーに慣れ親しんでいるようだ。


「アモリ、エグサイオリで調べているがおそらくそいつはクロだ」


「もうか、速いな」


 この短時間でそこまで断言できるほど調べた能力に舌を巻く。

 現代テクノロジーによるアプローチと魔法的な技術によるアプローチ、その両方から調べることができるとしても驚くほど速い。


「ガーガはたった一人でユミのサポートすることを求められて送られたからな、これくらいはな」


「という事は組織に属しているのか?」


 これは説明が無理な情報かと思っていたら、ガーガは曖昧に笑った。


「さぁな、なんにせよフタバを追いかけるであろう記者にはいない」


 そこでガーガは一旦言葉を切る。

 こっちに来るついでになぜその結論至ったかの考えを説明するようだ。


「まずフタバの母親が拷問の末殺されたというのは内容がショッキングなのであまり出回っていない、つまりこの時点で若いエグサイオリがフタバに固執して調査に乗り出している時点で怪しい」


「なるほど、確かにそんな大事件が全国規模のニュースになっていないのは情報が出回るのを制限している組織があるのか」


 そうだ。

 とガーガは同意して、続きを話す。

 微かに風を切る音がするので全速力でこっちに向かっているらしい。


「続きを話すが、そもそもフタバの母親は縁を切って失踪しているから実子が居ることすら警察にほぼ気付かれていない」


「は? なんで?」


「再婚したという事自体がほぼ知られていないからだ、籍を入れた後で引っ越していったんだ、つい先日引っ越してきた夫婦に捨てた子供がいるなんてすぐ気づく人間はほぼいない」


 その説明を聞くと何となく納得できないこともない。

 警察が過ぎ気付かないほど厳重に親子の関係を絶って失踪したのだ。

 どんな感情ならそんな行動に移るのかは分からない。

 ただわかるのは、江種の異常性だけだ。


「ほぼ誰もつかんでいない情報を不自然に持っている若い記者、確かに怪しすぎるな」


「そうなる、だから逃げるって判断は正しいとガーガは思う」


「そういってもらえると助かる」


 その情報を踏まえて考えると、江種の背景は想像がつく。


「アモリ、そのエグサイオリだがほぼ間違いなく拷問を行い殺人犯だ」


 他者から言われて改めて背筋が凍る。

 しかも逆上させてしまったような形だ。


「……だから江種は手袋していたりしたのか、指紋等を残さないように」


 ファッションの一部かと思ったが、そんな理由があったらしい。

 このところ立て続けに危険な存在から狙われることが多くなった。

 だが、いつまでたってもこの恐怖は慣れないし、慣れてはいけないと思う。


「あと少しで着く!! それまで待っていろ」


「言われなくても待つさ」


 そう答えて空を仰ぐ。

 まだ人通りはあるし、街灯からの明かりもある。

 ひとまずここは安全そうなのでぼんやりと思っていた疑問をガーガにぶつける。


「そういえば母親の方はよく出ていたけど、再婚相手については何かわかっているのか?」


「言いにくいが警察は死亡したと考えている」


 微妙な言い回しなので聞き返す。

 そしてさっきの内容次第では恐ろしい話になりかねない。


「死亡したと()()()()()ってどういうことだ?」


「そのままの意味だ、大量の出血痕と現場に残された指紋が一致する両腕が転がっていた」


「つまり胴体や頭は見つかってないってことか?」


 大量の出血とバラバラ死体のように腕だけが転がっていたらそれは死亡していると考えるのはおかしくないだろう。

 だがもっと致命的な部位が見つかっていないというのは嫌な予感がする。


「よし、姿を確認できる場所についた、帰路についてくれ」


「わかったガーガ」


 頷いて、通話を続けたまま立ち上がり帰り道を急いだ。

明日も頑張ります。

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