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第三話

間に合いました。

 そうして非現実的な現場から離れた。

 ガーガの方との連絡の取り方はスマホのSNSアプリで取ることになった。

 最新版のスマホを羽毛から取り出されたときは流石に目を疑った。

 そのことについて問い詰めてものらりくらりとはぐらかされて明確な答えを得ることはできなかった。

 そのことにどこか釈然としないものを感じながらも、陽川の家に買い出しの食材を届けて夕飯を分けてもらった。

 しかし、そうしていても陽川は帰ってこなかったので不安になり探しに出た。

 そして少し探しているとようやく見つけた。


「はぁ……」


 明確に落ち込んだ陽川が公園のベンチに座っている。

 時間はもうとっくの昔に陽が沈んでおり街灯がついており、さすがにこの時間に出歩くのは物騒だ。


「どうした、陽川?」


「ああ、大谷か」


 今更気づいたの顔を上げて話しかけてくる。

 この時間での呑気な態度に若干呆れながら返事をする。


「ああじゃないぞ、こんな時間に真っ暗じゃねーか」


 それを聞いた陽川は一瞬視線を上げた後、懐からスマホを取り出して確認した後でようやく口を開く。


「ん? ああもうこんな時間じゃないか」


 その動きはほぼ無意識の動作だろう。

 だがおかしい。

 視線を上げた時点で辺りは真っ暗なのがわかるはずだ。

 だがスマホを確認してようやく理解した。

 となるとおそらく陽川には周りは暗く見えていなかった可能性がある。

 最初に知ったのが俺でホッとする。

 ガーガの話だと知ることに危険があるのならば、知られることにも危険があると考えるのが妥当だろう。

 

「おいおいわざわざ時間を確認しないとわからないくらい集中していたのか?」


 だから何でもないふりをしながら伝える。

 俺が陽川の事情を知っているところまでは気づくことがないように祈るような気持ちだ。

 すると薄く笑みを浮かべながら返答してくる。


「まぁ、ちょっと考えることがあってな」


「何を考えていたのかは分からないが、陽川の姉さんが探してたぞ」


 その言葉を聞いて陽川かはバツが悪そうな表情をする。


「なら急いでなら帰る必要があるな」


「送る、というか半ば探しに来た感じだから送らないと座りが悪い」


 俺のその言葉に苦笑を強くして陽川は腰を上げる。


「なら頼もうか」


 しかしちらりと俺の方を見た。

 何となくだが話がしたいらしい。

 道すがら話をするのは何もおかしなことはないので話のきっかけを投げかけることにした。


「なにかあったのか?」


「む……何もなかったさ」


 その言葉で理解した。

 また会話すらうまく続けることもできなかったらしい。

 意識する前の方がまだいい雰囲気をつけれていただろう。

 しかも陽川は月宮への想いがばれていないと思っている節がある。

 だから妙な気の回しかたをされたと感じたら


「はぁ……」


 ため息をついてどうしようかと思案しているとある物が目についた。


 パステルイエローのニワトリのマスコットキーホルダーが学生鞄につけられている。

 校則で許されるギリギリのサイズだ。

 これくらいなら女子もちょくちょくつけている奴が居る。

 しかし陽川が付けているとなるとかなりの事件だ。

 俺のその視線に気づいたのか慌てて体の後ろに鞄ごと隠し、視線を逸らす。


「や、やっぱり変だったか? わたしがこういう物をつけているのは」


「いや、意外だっただけだ、良いと思うぞもっとすげー奴が居るだろう」


「ならいい、いやこの歳ですこし子供っぽいかと思ってな……」


 ぽつりというそれは自嘲に近い響が含まれているのがわかる。

 陽川は見た目はどちらかというと大人っぽい部類に入り、学校ではそういう人間だと思われている。

 男子からの人気はあるが、それ以上に女子からの人気が高い類だ。

 しかし、人並み以上までとは言わないまでも年頃程度にはフワフワとしたものが好きな人間だと俺は知っている。

 ガーガとできるだけ一緒にいるためというのもあるだろうが、少し素直になることができたという事かもしれない。

 そんなことを思っていると陽川から遠慮しない意見が飛んできた。


「どうした大谷、馬鹿の顔だぞ」


「お前は本当に遠慮しねーな」


「する意味もないだろう、誤解を恐れるような間柄でもない」


 その意見に苦笑で同意する。

 誤解をするには気安すい関係だ。

 そこであることが思い浮かぶ。


「子供っぽいっていうけどな知ってる男で未だにぬいぐるみを買ってるやつをしてるしそこまで変でもないだろ」


「……例えば誰だ?」


 何となく察したらしいが、すぐに飛びつかない程度には自制できているらしい。

 悪い事というわけではないが、恋の成就を応援するのはなかなか骨になりそうだと内心ため息をつきながら話す。


「月宮だよ、アイツたまーに気に入ったぬいぐるみ買ってるぞ」


「ほぅ……」


 その話を聞いて押し黙る。

 なにか考えが浮かんだようだ。

 割と嫌な予感がする。

 だが余計なおせっかいをかけてへそを曲げられても困る。

 なのでそこから先は任せることにする。

 月宮も陽川がたまーにどこか盛大に勘違いしたことをやりだすのに慣れているはずななので、月宮の健闘を祈ることにした。


「送ってくれてすまなかったな」


「いや、良いって帰る途中だしな」


 陽川の家の前で笑顔で別れて面倒なことは明日に回すことにした。

明日も頑張ります。

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