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第二四話

できました。

 帰宅したまず両親にえらく心配された。

 連絡後すぐに一度学校に来たそうだが、養護教諭のヒュプノス――人間としての氏名は真倉 音夢(まくら ねむ)に様子を見るよう伝えられて一度自宅で待っていたそうだ。

 一応近日中に病院で精密検査を受けさせたいようだ。

 俺としても何をやられたのか疑問なのでその提案に乗っておくことにした。


「ふぅ……」


 一息つく。

 木下や、陽川そして月宮を中心とするクラスメイトから心配のメッセージと宿題などの連絡を入れてくれた。

 中には明らかにふざけて「秘蔵写真」とか送ってくる奴が居たので心霊写真もどきを送り返す。

 そのあと、教師陣に心配をかけさせたので宿題くらいはちゃんと行おうと取り掛かる。

 八割方できたところで窓をコツコツと叩く音が聞こえる。


「ガーガか?」


「ああ、開けてくれ」


 当たり前のように空を飛んで床に直置きされたクッションに陣取る。

 どうやらそこが気に入ったらしく完全に着地したようだ。

 俺はその様子を視界の端に捉えながら宿題である英語の和訳を続けていく。


「今日はすまなかったな」


「……いや、気にしないでほしいってのは言っても無駄だろうなぁ」


 とりあえず宿題は切り上げてガーガに向き合う。

 そうするとガーガの毛並み――羽の具合がよくない。

 気にしているのだろう。

 だから一つの質問を投げることにする。


「あと何体くらいなんだ? 言えないならいいが」


「……分からん、あと八体は居ると思うが……」


「そんなにか」


 と言った後で首を振り否定する。

 でも日曜朝の番組では毎週新型が出てくるので十分少ないことに気付く。

 まぁ毎週どころか二日連続で襲ってきたのでおきて破りではあるのだが。


「そいつらは全員、ヤバいのか」


「……ああ、昨日に来たあの山羊も成長しきってないだけでかなりヤバい」


 ポツポツと語り始める。

 おそらく危険性を伝えることでこれ以上くびをつっこむことを牽制するためだろう。


「でかいやつは強い、その原理にのっとって体をドンドン巨大化させる、気づこうにもアレは周りに妙な世界を張っていただろう?」


「最初にガーガに会う前に陽川が張っていたあれか?」


 そこでガーガは腕を組み考え込む。

 言っていい事かどうかを考えている様子だ。

 たっぷり時間をかけて考えた後で付け加える。


「そんなものだ」


 という事は厳密には違う物のようだ。

 だが、近いものであることは確かなようだ。


「外からは気づかれない世界で大暴れをしながら巨大化し続けるかなり危険な代物だった」


「昼――というか夢の中の様子だと陽川ならなんとかできそうな気がするけどな」


 山を二発で消し飛ばした攻撃。

 そう考えると多少大きくなっても余裕で倒せる気がする。

 それに対してガーガはゆっくりと首を振る。


「無制限に巨大化されたら手に負えなくなる可能性がある、普通はそれまでに気づくが吹き飛ばす体積より巨大化速度が早かったらかなり面倒になる」


「まじか」


 おそらくガーガが想定していたのはあのヒュプノスが囮に使った羊より何倍も巨大なそれこそエベレストとかを措定している気がする。

 確かにそこまで巨大になると陽川の攻撃でも厳しい気がする。


「周囲の被害を考えないならなんとかできるはずなんだが、さすがにな」


「マジか」


 さらりと言われたが、ガーガ想定する最大限巨大な相手でも地形や人的被害を無視すれば撃破できる。

 それはつまり――


「もしかして陽川ってめちゃくちゃ強いのか? 俺が思っていた以上に」


「そういっているだろう、協力者を探すなら一番有望な人間から声をかけるに決まっているだろう」


「それはそうだけどな」


 相手もヤバいが、それ以上に陽川のパワーがヤバい。

 今日もそうだったが、相手を射程に捉えたら勝ち。

 そんなレベルのワンサイドゲームだった。

 問題があって試合に勝って勝負に負けたようなものだったが。

 本体であるヒュプノスがこっちの世界に連れ出してしまったようなものなので注意を払う必要がある。


「さすがにしばらくは来ないと思うがな」


「連携とかはとっていないのか?」


「……場合によるとしか言えない」


 そうガーガがつぶやいた。

 曖昧な言い方だが、逆に言えば全部をまとめている存在はまずいない。

 そして前に聞いた通り知能がある存在はそれぞれの目的次第では手を組むことがあるという事だろう。

 そしてはたから見ると立て続けに二人が襲い掛かったが陽川に対してダメージを与えることなくあっけなく撃破されたという事だ。

 そう考えるとここでもう一度襲い掛かるのはリスクが高いだろう。

 もしかしたらとここで動くのはよっぽどのギャンブラーだ、それもいつか大損抱えて負けるタイプの。

 さらに知能がない暴れまわるタイプだったとしても確率は高くない。


「とりあえず明日はまともな日になりそうだな」


「ああ、そうだ今のうちにちゃんと起きる準備をしておけ」


「確か外的刺激を受けないと起きないんだっけか?」


 俺の言葉にガーガはうなずく。

 いきなり外的刺激と言われてもアラームをセットしておくしかできない。

 だから悩んでいると――


「あれなら落ち着くまでガーガが朝一番のボディープレス仕掛けに来るぞ」


「……それしかないか」


 諦めてガーガに頼むことにした。

 そうして明日の事をお願いしたら、宿題を終わらせて予習はそこそこに寝床に入ることにした。

明日も頑張ります。

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