第二話
簡単な説明回です。
俺がいま感じている物は主に二つ地面の冷たさ。
それと眉間に感じるヒリヒリ痛みだ。
「すまんなボーズ、ガーガはうるさいのが嫌いだ」
「うへぇ」
ガーガと名乗ったファンシーなニワトリにのされたからだ。
突っ込んだ時の大声でとっさに俺をしばいたらしい。
とりあえず身を起こし、あぐらを組むように座りなおす。
「代わりにこれをやろう」
といって絆創膏を翼につまんで渡してくる。
ミシン目で一枚ずつ切り離して使えるオーソドックスな形の絆創膏だ。
それが二枚つづりの状態で渡される。
「ただの絆創膏じゃ買収されねーぞ」
「一度痛む場所に貼ってみろそれで理解できる」
半信半疑で張ってみると痛みが引いていく。
それどころかなんだか気分が爽快になってきた。
「なるほど」
「ふふん、わかったか」
慌ててはがして投げ返す。
「パッチ式のドラッグとか渡すなよ!! 肝が冷えた」
「コケェ!!」
怪鳥音と共に蹴りを放ってきた。
二度目は流石に避けれた。
が、空中で鋭角に曲がり眉間に突き刺さった。
「そんな危険な物を渡すわけがないだろう」
「じゃあなんなんだよ」
するとガーガは自慢げに胸の羽毛を膨らませながら続きの言葉を話す。
「魔法少女に付き物のマジックアイテムに決まっているだろう、謝罪に渡す程度には高級品だぞ」
「……へぇ」
半信半疑だが、喋るニワトリという超常存在の言葉なのでとりあえず個包装を剥いていない方はおとなしくしまい込むことにした。
それにしても落ち着いて考えればおかしなことなっている。
そのおかしなモノを具現化したようなニワトリは唐突に説明を始める。
「ボーズは見て知ったと思うが化け物がちょくちょく出てくる、それを倒すのがユミの役目だ」
「元々そういう役目を持っていたのか?」
「違う、今日スカウトした」
その言葉に絶句する。
何かを言おうと口を開いたところをガーガが制止する。
「だましたわけでも脅したわけでもない、そこは信じてほしい」
急に真剣な声で話しかけられた。
色々変なニワトリだが不思議とその言葉は信じてみようと思えた。
「わかったよ」
だがすぐに受け入れるのもしゃくなので渋々と言った振る舞いをすることにした。
それを見たガーガはそれでもその言葉を受け入れてくれたことがうれしいのかしきりにうなずいている。
「相手の名前やらはまぁ……知らない方が良いだろう」
「なんでだ?」
ここまで聞いたのだからどうせなら。
という好奇心に近い感情が湧いてくる。
その気持ちを見抜いたのかガーガはゆっくり首を振る。
「知ること自体がリスクになる、情報とはそういうものだ」
「……意味が分からない」
するとガーガは満足げに小さく笑い。
「それでいい」
とりあえず俺にはあまり詳しい話をするつもりはないという事はわかった。
するとガーガは俺の目をじっと見て申し訳なさそうに話始める。
「ボーズ――いやアモリ面倒なことを頼みたい」
「……陽川についてだな」
するとガーガは器用にも片方の目だけをピクリと動かした。
どうやら内容的に当たりらしい。
「なら話は早い、ユミの恋についてだ、それを成就させてほしい」
「……話が見えないんだが」
ガーガは一呼吸分ほど押し黙る。
おそらく話すべき範囲を考えているのだろう。
そうして、もう一度俺の目を見てきた。
それを見つめ返すと首をすくめて話し始める。
「ユミが外敵と戦うために使っているエネルギーは恋心だ」
ガーガは明確に外敵と言った。
という事はこの世界から自然発生した存在ではないという事だ。
これも結構聞き捨てならないがそれ以上にまずことを聞いた。
「エネルギーとして恋心を使っているっていったか?」
その言葉からわかるのは感情を消費している可能性がある。
どんな事情があるかわからないが知り合い的に考えるとさすがに見過ごせない。
「まてまて誤解するな、思っているような使い方ではない」
慌てて否定し始める。
「材料にして成形しているのだ、回収すれば元通りになるし基本的には破壊不能だ」
基本的にはという言葉に眉がピクリと動いたのがわかる。
それを見てため息交じりにガーガは続きを話す。
「物理的には破壊不能、ただし材料になった感情にひびが入っていたら――いや割れていたらどうなる?」
「最初から壊れていたら壊れてしまうという事か」
その答えにガーガはうなずいた。
いくつか他に聞きたいことはある。
しかし長々と説明を聞くのも問題になりそうだ。
「だから恋を成就――守れってことか」
「ああ、詳細は省くが戦っている外敵はシャレにならない、ユミが戦えなくなったらほぼ詰みだ」
そこでうなずく。
大げさに言っている気がするが、それよりもまずいのは陽川がまず間違いなく重症、もしかすると死ぬかもしれないという事だ。
それは避けたい。
「だから振られないようにしろってことか」
その言葉にガーガは肯定した。
「そういう事だ、そうなったら時間稼ぎも不可能じゃない、だがユミはその状態でも戦いに出るだろう?」
「ああ、なんだかんだで出ていくだろうな」
そして無理をしてつぶれる。
体調悪いのに無理を強行するのはアイツの悪い癖だ。
そんなことを思いながら懐かしんでいると――
「あとユミにはばれるなよ、意固地になるからな」
「もうすでにそういう認識なんだな」
苦笑し、陽川のお守り役がもう一人で来たことを理解して苦笑する。
あまりこの場で話し込んでいてもあれなのでとりあえずこの場では別れることにした。
明日も頑張ります。