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第一七話

間に合いました。

 目が覚めるとそこはどこまでも続く白い世界だった。

 そこに置かれたシンプルなベッドに寝かされていた。


「ここは……」


「アモリようやく目覚めたか」


 ベッドの脇にはガーガが居る。

 そして心配そうな目を俺に向けている。

 周りの異常な状況に気付き聞き返す。


「どうなっているんだ?」


 疑問を返すと渋い声で返される。

 どうやらかなりまずいことになっているようだ。


「世界中の人間が眠り始めた」


「なっ!?」


 唐突な緊急事態に頭の中が真っ白になる。

 が頭の片隅でそれを冷静に受け止めている部分があるのがわかる。

 そしてその部分である疑問に気づく。


「ならここは何なんだ?」


「夢の根……とでもいう場所だろうな」


 ガーガ自身も確信がないのか非常に頼りない返答だ。

 しかし、どこまでも続くこの風景を見ると不安になるの分かる。

 ただこの状況でもガーガはまだあきらめた様子はない。


「ユミは幸いもっと上にいる」


「上?」


 聞きなれない表現なので聞き返す。

 しかしガーガもまた曖昧に首を振る。


「そうとしか言えない、目が覚める方向に近づくほど上に向かう、残念なことにここは帰れるかどうかの瀬戸際だ」


「そんなにまずいのか?」


 重々しくうなずく。

 話を聞いているとここより下は脳死と言った方が近い状態らしい。


「戻る方法はあるのか?」


「いっただろう? 瀬戸際だと――帰れる」


 その力強い言葉に胸をなでおろす。

 そうと決まれば話は早い。

 ベッドから降りようとして、ガーガの鋭い言葉で止められる。


「待て!! ここより下は帰れないと言っただろう!!


 その言葉におろそうとした足を止める。

 そしてまじまじとガーガを見て聞き返す。

 まるでベッドの上が唯一の安全地帯と言っているようだ。


「降りたらまずいのか?」


「ああ、降りようと思うのは厳禁だ」


 そこでガーガは一度言葉を切って噛んで含めるように俺に向かって話しかけてくる。


「アモリは何かにずっと下に向けて引っ張られている」


「それは……上に向かうことはできるのか?」


 ベッドの上にガーガは降りてくる。

 そして俺の方を見上げて力強く頷く。


「こうやって話せているという事自体が上に向かっている証拠だ」


「ならいいが」


 ガーガの言葉に一応うなずいておく。

 心なしか頭にかかっていた靄のような物も払われていく気がするので目覚めに向かっているのも確かだろう。

 そうして落ち着いて自分の格好を見ると学校の制服姿だ。

 なんだかんだで一番長くきている服だからだろう。


「あとどれくらいで起きれるんだ?」


「話はそんなに単純ではない」


 その言葉を疑問に思いガーガを見る。

 そこには四つの円が並べられている。

 俺から見て右から白青赤黒だ。


「それは?」


「説明のために便宜上四つの階層に分けている」


 説明に耳を傾ける。

 その様子に気づいたのかまず一番左の黒い円を示す。


「ここが一番底の階層、いまガーガたちが居るところだ」


「なるほど、という事はこの白いものは現実世界か」


「そういう事になる、そこまで帰れれば、だ」


「やっぱり障害があるのか?」


 ガーガは俺の言葉にはっきり頷いた。

 まず示したのは赤い円だ。


「ここに敵の本体がいる、そして青いところでユミが浮かんでくる子機を倒している」


「陽川と合流するには敵の中心部を越えないといけないのか」


 俺のその言葉にガーガは重々しくうなずいた。

 かなり危険な旅路に気を引き締めるが疑問が思い浮かぶ。


「陽川がこっちの赤いところまで来ることはできないのか?」


 その疑問にはガーガは悲しそうに首を横に振って否定する。


「どれだけ深く眠っているかでどこまで行けるかが変わる、残念だがユミはかろうじて眠っている程度だからここから下へはいけない」


 と言って青い円を示している。

 続いてガーガは俺を示す。


「だからアモリが必要になる」


「おれが? どうして」


 ガーガはうなずいて黒い円を示す。


「アモリ、お前は下手をするとこの黒まで落ちてゆく、だからその下に沈む力でユミをこの赤い場所まで連れていく」


「俺は重りというわけか」


「ああ」


 力ずよくうなずいて円を片付ける。

 あとには白いベッドの上で座っている俺と俺を見上げるガーガだ。


「わかった、やろう」


 ガーガはそこで俺に頭を下げる。


「すまんなそこまで危険にさらす必要はないのに」


「いや、いい、なぜかは知らないが俺なら陽川を大元につれていけるんだろ?」


「ああ」


 そう答えた後で、上を見上げた。


「まぁまずはあそこを超えないといけないが」


「上の階層か……」


 光がさしているわけでもないのになぜかまぶしいと感じる。

 続いて特に音も聞こえないのに騒がしい気もする。

 まるでそこを知っているかのようだ。


「あるコミュニティに属する全員が見る夢、とでもいえる場所だな」


「あそこを通りぬけて俺は落ちてしまったってことか……」


 空気が震えているのがわかる。

 まるでシャボン玉を内側から見ているようにわずかに虹色に輝きながら波うっている。

 予感だがアレを越えたら景色ががらりと変わるだろう。

 そんな予感がある。


「準備はいいか?」


 ガーガが問いかけてくる。

 それに対して俺は頷いて答える。


「ああ」


「よし、突入!!」


 ガーガはそう宣言し、俺たちは上の階層にアクセスした。

明日も頑張ります。

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